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噺のはなし〜『牛ほめ』編〜

与太郎ジャンルの落語がいくつかあります。その中で私がこぞってやっているのは『牛ほめ』です。この噺はオウム返しの典型的なはなしで、初心者向けの良い噺です。

オウム返しというのは、前半にモノ(この噺では家の褒め方、牛の褒め方)を教わって、後半でそれをやろうとして失敗をするという流れのことを言います。

あらすじ

馬鹿の与太郎はいつも親に叱られてばかりいる。今日は名誉挽回にと、父から「佐平おじさんの家に行って家を褒めてこい」と言われる。「家は総体檜造りでございます」等々、いくつか家の褒め方を教わる。台所に行けば、大黒柱があって目の高さのところに節穴がある。それについては、「心配要りません。秋葉様のお札を貼れば穴が隠れて火の用心になります」と言えば小遣いが貰える。と教わる。ついでに牛の褒め方も教わる。意気揚々と佐平おじさんのところへ出掛ける。そこは馬鹿の与太郎の本領発揮。まるっきり違うことを言って失敗する。挙げ句の果てに、牛のお尻の穴を見て「あの上に秋葉様のお札を貼れば、穴が隠れて屁の用心になります」

15分の話を1分くらいに縮めるとこんな感じのあらすじになります。気になった方はぜひ聴いてみましょう。

子供が好き

この噺は子供が好きです。最後の牛のくだりもそうですが、途中の家の褒め方を失敗するところも結構笑ってくれます。

いつも不思議に思うのは、決して家のほめ方の意味をわかっているわけじゃないと思うんですが、与太郎が間違うとかなり笑います。これはおそらくx「変な間違い方をしている」というそのソースが面白いんでしょうね。

与太郎というキャラクター

与太郎の噺はいくつもありますが、噺家によってどの与太郎噺が合うかというのはそれぞれあるようです。

私の場合はこの「牛ほめ」が性に合っているのでこれをやっています。大事なことはどの噺もそうですが、そのキャラクターに演者が合わせにいって、しっくり来ることです。

与太郎じゃなくても難しいセリフ沢山

家の褒め方や牛の褒め方を教わる与太郎ですが、この褒め方は与太郎じゃなくても難しいです。家は総体檜造り、天井は薩摩うずら木目、左右の壁は砂ずり、など普段は使わない文句がたくさん出てきます。

だけど、その間違え方が秀逸なのが与太郎なんです。むしろこの噺を作った人は、この間違えの文句の方を先に考えたんじゃないかなって思うくらいです。

ちなみに私が好きなセリフは、「畳は備後の五分縁(ごぶべり)で」を「畳は貧乏でボロボロで」ですね。五分縁というのは、縁を普通の半分で仕上げて部屋をスッキリ見せる手法だそうです。この噺のおかげで調べた結果知りました。

まだまだ色々な文句が出てきますので、気になった方はぜひ聴いてみてください。


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