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【あなたの知らない落語の世界】第6回「はじめての人におすすめの落語は?」
今日は落語をはじめて聞く人におすすめのネタを紹介します。
この質問に対する問いは噺家100人いたら100通りになるくらい考え方が違うと思いますが、私なりにどういうネタが良いかを要素として考えてみました。
①ストーリーがある
ストーリーのある噺がおすすめです。
これを言うと「落語ってそもそもストーリーがあるものでしょ?」という返事が来そうですが、確かに落語にはストーリーがあるんですが、意外とストーリーの側面で見ると薄いものもたくさんあります。
八っつぁんと隠居さんが会話するだけとか、若い者が集まってワイワイやるだけとか、ここで言うストーリーがないは「展開が少ない」「展開が弱い」とこいうことの言い換えかもしれません。
落語は結構こういう噺が多くて、例えば「子褒め」という噺がありますが、この噺は隠居さんに教わった人の褒め方を試して失敗するという展開です。慣れてくるとこういう単純な噺でも会話の面白さで笑えるんですが、はじめての方だともう少し大きな展開があった方が惹きつけられるんではないかと思っているので、そういった噺を勧めています。
②動きがある
大きな展開はなくとも、動きがある(所作が多い)噺は初心者を惹きつけます。
特に何かものを食べる所作は入る噺ははじめての人にはとても評判がいいです。
「食べたくなりました」「食べる練習はするんですか?」
等の感想をもらえる時ははじめての方なんだなと嬉しくなるものです。
食べる噺以外でも所作の多い噺は多いです。ただひたすら会話する噺よりはこういう噺を選んでいます。
③具体例
いよいよ具体例を挙げていきます。あくまで私がおすすめの噺ですので、噺家100人いたら100通りの答えがあると思って下さい。
「あくび指南」
これは私がはじめて落語を面白いと思ったネタです。学生時分にお笑いしか知らなかった私に、落語というものがお笑いに通じていると思わせてくれた大事なネタです。町内の若い男二人があくびを教わりに行くというそのシチュエーションの面白さと、そのあくびというものをストーリー仕立てで教えるおかしさは現代のコントの原型では無いかと思うくらいの衝撃でした。
若い方には特に聴いてもらいたいネタです。
「ちりとてちん」
これは、動きのあるネタの一つで、つまり落語の醍醐味である「食べる」所作がふんだんに織り込まれているところが、聴いている上で飽きさせない作りになっています。
しかも前半と後半で同じものを違う人が食べるんですが、その感想がまるで違っていて、前半が全て伏線になっています。そのおかしさの表現も人によって少しずつ違っていて楽しいです。
そして何より「ちりとてちん」。なんでも知ったかぶりをする男に、腐った豆腐を食べさせる様は落語ならではの表現です。どう面白く不味く食べるかが腕の見せどころですね。
※真似をすると危ないので腐った豆腐は食べないでください
「芝浜」
ストーリーがある。その代表のような噺です。元々は三遊亭圓朝という名人が三題噺(三つのお題を織り込んで噺を作る)として創作したものだと言われています。落語というものがただ笑わせるものでは無いということ、「面白い」という言葉の奥行きを感じさせてくれる噺です。
芝の浜で大金を拾った男が有頂天になるが、翌る日二日酔いの男に妻は「それは夢だ」と言う。そんな嘘が彼を立ち直らせる。そして三年後、すっかり仕事熱心になった男は店を持ち、若い衆も使っている。そこで妻が三年前の嘘を告白…
落語の中で一番有名なオチが最後に聴けます。
おすすめです。
※このネタはあまりに有名過ぎて、演者の中では「やらない」と頑なに決めている人もいます。お客様でも聴き飽きたという雰囲気の方もいます。有名過ぎるが所以ですね。
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