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石の上にも五年

先日、37歳になりました。世間で37歳はどのくらいの立ち位置になるのかわかりませんが、落語家の37歳は「若いねー!」と言われる年代です。

芸事の世界は、10年やってやっとスタートラインぐらいですから、15年選手の僕なんかはまだまだスタートを切ったばかりなのかも知れません。

先月、僕が修行時代に大変お世話になっていた牛乳屋のおじさんが亡くなりました。ねぎしの師匠の家の隣に住んでいて、しょっちゅう出入りしては、雪印パックのカフェオレをご馳走になっていました。鼈甲の縁でレンズの分厚い眼鏡をかけ、いつも優しく語り掛けてくれました。

そんなおじさんに初めて会った時に言われた言葉を今でも覚えています。

「こういう世界はね、石の上にも三年じゃないよ。五年だよ。」

入門してから三日目くらいでしたかね。ご挨拶に行った時に最初に言われた一言でした。入門して初日から辛い思いをしていた僕は、三日目にその言葉をもらった時に、正直意味がわからなかったというか受け入れられなかったです。早く、辛さから解放されたい、落語がしたいと思っていた矢先でしたから。三日目の男が何を言ってんだって話ですが。

その時の意味合いとしては「簡単に諦めないで、頑張って続けなさい。」というようなことだったんだと思います。若者への戒めというか、叱咤激励を含めた言葉だったんだと思います。

だけど、今になって思うのはその言葉は今の僕というか、一生効いてくる言葉なんだということ。

落語家って答えのないものをずっと追い求めています。だからゴールがないんですよね。もちろん、自分の芸風を確立するとか、主となる自分を見つけるという目標は、若手全員が持っていると思います。だけど、この落語をやったのでもうその人は完成ってことはありません。

良い落語をやったらまた次の良い落語のために稽古する、創作する。それの繰り返しです。だから、「石の上にも三年じゃなくて五年」というのは、一生頑張れっていうことじゃないかなと、二つ目になってからは思いました。

なので、辛い時はいつもこの言葉を思い出すようにしてます。今やっていることは、目先では結果が出なくてもいつか何かになると思って何事にも挑戦するようにしなくちゃと思う言葉です。

あと一年を切った真打昇進、もがいてもがいて精進したいと思います。

落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。