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甲府い

あらすじ

『甲府い』という落語があります。甲州の身延の方から出て来た若者、江戸で身を立てようとしていたが、身包み剥がされ文無し。

お腹が空いて、とある豆腐屋の店先のおからを食べる。若い衆に怒られるが、主人がそれを諌めて訳を訊く。名前は善吉で身延山に願掛けをして来たことを知る。主人も身延山信仰ということもあって、これは縁だと置いてやる。

「豆腐ーい 胡麻入りー がんもどき」

というのがこの店の売り声。普通は「豆腐 生揚げ がんもどき」だが、がんもどきに胡麻が沢山入っているからこの売り声。ここの娘のお夏とも縁があり夫婦になる。主人のあとを継いだ善吉夫婦は一生懸命働く。

5年が経ち、身延山に願解き(がんほどき)をするという。喜んで送り出す、元主人夫婦。旅拵えで二人が歩いていると、それを見つけた長屋の連中が、

「おーい、お二人さーん。どこ行くんだーい?」

「甲府ーい」

と善吉が言うと後からお夏が、

「お参りー 願解き」


解説

この噺は、ほっこりするので好きです。悪い人が出てこないからですね。みんな良い人が揃うと、ほっこりするんです。

だけどほっこりし過ぎるので沢山はやりません。

この噺やり過ぎると、世の中全てが良いことだらけに思えちゃうのでw

背景には「身延山信仰」があります。身延山久遠寺を総本山とする日蓮宗ですね。落語家はお寺に行ってお仕事をすることが多いです。で、まずはそこの宗旨を調べておいて、日蓮宗だった場合は選択肢の一つに入れます。

たまたまこのネタは日蓮宗の色合いが出ているので、そういうお寺に行った場合はやろうか考えますね。ただ、日蓮宗って分派が多くて、いわゆる身延信仰の日蓮宗かどうかは最終的に御住職に確認します。

元々、覚えたのもそういう理由があって、福岡で毎年伺わせて頂いてるお寺のお仕事があって、秋のお彼岸法要で落語をやらせてもらっているんです。そこで、毎年行ってるんだからなんか出来ないかと考えたときにこの噺が日蓮宗が背景にあることを思い出して、三回目くらいに行った時にやりました。

御住職が大変喜んでくれて、

「他にもそういう噺があったらやって下さい。」

と言って頂きました。

この噺は大ネタとしてトリでたっぷりやる方もいますが、僕の場合は教わった方のやり方もあってかなり短いです。教えて下さった方だと13分くらいしか無かったw

それが、僕が喋るとまあ20分くらいですね。独演会だと二席目、休憩前とかにサクッとやらせてもらう感じですかね。トリでやっても良いですがなんで時間が短い。のと、僕がどうしても軽い感じでやっちゃうのでトリネタっぽくならないところがありますw

このネタは、僕が覚えた中では一番早く覚えたネタで、たぶん二日くらいだったんじゃ無いですかね。書き起こしてちょっと呼んだだけで覚えました。そういうネタです。

最近やってないので、またやりましょうかね。


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