オープンワールドというゲームジャンルを整理してみる

今ではすっかりメジャーとなった「オープンワールド」と呼ばれるゲームジャンル。だが、漠然とオープンワールドとはいうがどういう要素なのか、またどういう体験なのか。ざっくりどんなジャンルかを考えたうえで、良さ悪さ両方の観点からアプローチをかけて整理をしてようと思う。

1.私の考えるオープンワールドとは
結論から入る感じだが、私はオープンワールドというゲームジャンルは「読み込みがない、いわゆるシームレスにマップが続き、見えない壁や柵などで移動が遮られていない」というのを定義としてあげたい。
各々オープンワールドに持つイメージはそれぞれだろうが、その他の要素はあくまで別途のシステムであり、それそのものはオープンワールドではないという考え。漠然と「読み込みなくてエリア移動(暗転)がない」程度にとらえてもらって問題ない。

2.良いところ
a.読み込み時間
マップの読み込みが無いということは、一々建物を出入りしたりしても暗転したりしないということ。エリアが細かく分かれて移動ばっかりだと、昨今の3Dゲームは容量も大きく読み込むものが多く、その都度5秒程度、長いと10秒以上の読み込みが生じる。意味のない待ち時間は退屈なもので、これらを一切感じることなく快適に遊べるというのはゲーム体験の上で非常に優れている点といえる。
たまに民家に入ると読み込みが入って、フィールドに戻るとまた読み込み時間が生じるゲームがあったりするが、これはオープンワールドの良さを完全に殺してるだけの仕様といえる。街の中は民家も込みでシームレスじゃないならそもそもマップを最初から分割して一回一回の読み込み時間を減らすことに注力するべきだからである。

b.リアリティを感じられる
美麗な今の3D技術で作られたそれは、現実を再現したかのようなリアリティを感じられる。それがたとえファンタジー世界であっても、本当に実在する景色を追体験する……といった感動を得られる。
暗転の無いマップを好き放題走り回って探索する……それこそ童心に返った気持ちで遊べるのだ。未知を探検するのは楽しい。

c.壁を作る必要がない、マップを自由に作れる
3Dマップがすべてオープンワールド、なんて思ってる人もいたりするが、個人的には違うと思っている。一般的なRPGとかだとこのままだと落ちてしまう川だったり橋なんかも、見えない壁で落ちないように作られていたりするものだが、オープンワールドではそういった要素はない。とはいえ、落ちても何らかの方法で戻ったりする手段が無ければ詰みなので、ちゃんと迂回できるとか、ワープで戻れるとか、システムなりマップなり丁寧なデザインは必須にはなる。

3.気になるところ&悪いところ
a.マップの広さとイベントの密度
リアル尺度に広大にマップが広がるので、はじめてゲームを起動したり新しいエリアに到着した時は感動する。……が、ゲームとして楽しむことを考えると、ただ自然が綺麗な風景など5分もすれば見慣れて来て飽きてしまう。敵もいない、宝もない、ダンジョンもない、村もない、人もいない……そんな自然だけで何の発見もないのでは今度は歩き回るのが苦痛になってしまう。そんな楽しくない、ただ不毛に目的すらわからず歩いてるようなオープンワールドも一定数存在する。マップが広くても、読み込み時間がなくても、得られる体験がなければ不毛に歩いてるだけである。

b.読み込み時間とファストトラベル
良いところに読み込み時間を上げたが、あれは普通に歩いたり馬で移動している場合の話。探索エリアが広がって来るととても自分の脚で歩くのでは追い付かず、大抵の場合はファストトラベル、いわばワープ機能をつかって各地を転々とするようになる。……のだが。
ファストトラベルを多用するようになると、一度に読み込む情報量が大きく移動のたびに何十秒も読み込み時間がかかったりする。こうなってしまうと完全に本末転倒で、読み込んでる時間が長いだけのゲームになってしまう。
この点をうまく解消できないのであれば、いくつかエリアを分割して少しでも読み込みにかかる時間を減らした方がいいようにさえ思ってしまう。なお移動しても読み込み無しに瞬間移動できるゲームもあるので、そういうゲームに関してはこの問題をクリアしているといえる。

c.レベルスケーリング
プレイヤーの強さと連動して敵が強くなる場合と、プレイヤーに関係なく敵の強さが固定の2パターンあり、オープンワールドでは基本的に前者が求められやすい。
というのも、オープンワールドだから進行は自由に出来ていいし、強くなってから未開のエリアの敵が弱いとがっかりする(探索のしがいがない)といったもの。
進行が自由なのはオープンワールドだからじゃなくてそのゲームの特色でしかなく、オープンワールドだから敵の強さをこちらに合わせろというのはそれこそ暴力的で何も考えてないんじゃないかと思うところ。ちなみにこれ、どちらに設定しても問題が生じたりするので製作陣のバランス設計はすごく難しかったりする。

c1.敵がこちらの強さと連動する場合
昔のRPGでは船など乗り物を手に入れてから上陸すると、終盤のエリアにうっかり踏み入って全滅……なんてことがあったりしたものだがそういった要素がほとんどなくなる。
どこから行っても敵の強さは自分合わせなのでよほど上手に作らない限りはゲームで得られる体験が代わり映えしないままになる。最悪敵の方が強くなったりもするし、そうなってしまうと自由にやっていたがために敵に対応出来ないということも起こりうる。
ただ、最序盤のエリアの探索しに来ても敵は一定の強さがあるので、そういった時に退屈しないというメリットがある。
改善点としては、エリア別に敵の最低レベルを設定する……と言いたいところだが、結局はある程度まで行くと頭打ちになってしまう。かといってレベルは同じだけど序盤の敵は成長率が低い、では結局のところやってることは変わらない(弱い敵は弱いまま)ので、正解はないといえるのだが。
かといってボスを倒したら新しいアイテムやスキルで新エリア開拓だよ!だと進行に制限をかけられているため、自由じゃない!!!と文句を言うユーザーも出てくる。正解はない。
またそもそも敵の強さが固定じゃないため、難易度の設計が難しくなる。ステータスを固定値で設定できなくなるため、開発の想定したバランスというのが実質的に機能しなくなりやすい。正直バランスが大味になってるゲームが大半なので、思考停止では導入してほしくないシステムである。

c2.敵の強さが固定の場合
敵の強さで何となく推奨される攻略順が見えてしまい、「やらされてる」感じが出てしまいやすい。レベル1→レベル5→レベル10みたいな感じで敵が配置されていたら、順当に倒せるところから行くものである。
この折衝案としては同じレベル帯のエリアを複数用意してどこから行ってもいいよ、な感じの進行を複数用意することである程度は解決できる。
ただ、自分が強くなったあと、「弱い敵」が弱いままなので、探索した時に弱い敵に絡まれて不快になりやすい。最低限格下に絡まれない仕様は必要だろう。それもなくレベルが20とか30下の敵とのエンカウントが発生するのはさすがにつまらない。
自分より弱い敵限定でレベルを一定値まで上げるとかは折衝案なきもするが、どのみち探索してる時に敵に絡まれても面倒なだけなので正直無理に引き上げなくてもいい気はする。

4.オープンワールドによくある要素
オープンワールドだから「入れやすい」システムであっても、オープンワールド「の」システムではないものがいっぱいあるよ、ということを言いたい。ここでは良く突っ込まれて、かつあまり面白さになっていない要素を書き出してみた。

a.重量制限orカバンの整理
探索やアクションをしたいのに、アイテム管理という別のゲームをしたくないという話。いわゆるアイテム管理要素。重いと歩けなくなるから取捨選択を迫られたり、そもそもカバンが狭くて持ち帰れなかったりする。あたかもオープンワールドの標準仕様であるかのようによく導入されているが、広大なマップを自由に歩き回れることと重量に制限をかけることには何の関係もない。別に回復アイテムをがぶ飲みしてほしくないのであればそもそもアイテムを個数制度で制限すればいいし、拠点に戻るたびに一定数まで補充できるという形でも問題ない。
このシステム自体がどうこうというより、大体持てる量が極端に狭かったり、筋力の低いキャラクターはアイテムを全然持てなかったりするというバランスの設計の方が大体にして問題ある。
そもそもが読み込みもなしに自由に歩き回って探索のしやすい仕様なのに、荷物が持てない(なんなら移動速度が下がる)というのはそもそもの仕様がかみ合ってないように感じられる。というか身も蓋もない言い方をすればユーザーへの嫌がらせにしかなっていない。
身軽なら移動速度が上がりますよ、といった軽くするメリットもないのでオープンワールドを盛り立てる要素としては正直下策と言っていいと個人的には思う。

b.修理
aと同じ理由で面倒なだけ。せめて使い込むと何らかの利点があればともかく、ゲームによっては壊れてアイテムが消滅するので管理が面倒になるだけ。拠点など一部の施設でしか直せないなど縛りも多く、作業を無理やり中断してくる要素にしかほぼならない。探索させたいのか不便を強いりたいのかどっちなんだい!といった感じ。
オープンワールドじゃなくても基本的にプラスにならない仕様ではあるのだが、なぜかよく突っ込まれる。

c.サバイバル(空腹や体温の管理など)
そもそもオープンワールドゲー=サバイバル(とクラフト)みたいな風潮がそこそこあり、サバイバル要素を盛り込んで来るゲームは少なくない。
が、大抵のゲームの通常難易度で餓死するようなデザインは存在しない。適当に農場植えてるだけで自給は安定するのである。
現実での食事は味を感じられるから楽しみがあるが、ゲームでの食事に味はない。ということでただの数値管理要素でしかない。満腹時にバフ効果があるということもないし、かといって安定するので一々メニューを開かされるだけでしかない要素になり果てる。
さらにいえばサバイバル感を出すために食材が腐ったりするし、腐る都合上食料がアイテム欄で別々になってアイテム管理の問題まで連れてきたりする。逆に、自動で食事してくれるようになってそもそもこの仕様必要だったか?という便利仕様になることもあったりでうまく設計できてるゲームは非常に少ない。
せめて、初めて食べた食品が永続ステータスアップするとか、付加価値があれば楽しめるんだけど。雑に空腹を満たすための食事システムは特に面白さにつながっていない。
結局はマップを自由に歩き回れるからこそ、変な足かせはやる気を削ぐだけでいらないという話。ローグライクみたいに食事の管理がある程度重要度が高いのであればあってもいいとは思うのだが……。

d.どこからすすめてもいい、自由な進行
ここで言う自由な進行というのはストーリーラインやクエストラインの話で、割と自由にマップを歩き回れるという話とはちょっと違う。
よくオープンワールドだから最初からラスボスに挑めてもいい!とか、どこからでもすすめられなきゃおかしいとかいうが、それはゲームバランスとかデザインの話であって、オープンワールドを主語として持って来る話ではないように感じる。だって別に旧来のワールドマップ制度だろうが、フリーシナリオ制度だろうが敵の強さがこちら合わせならどのエリアからでも行けるだけで、敵の強さが太刀打ちできなかったり必要なアイテムが足りないと進めないデザインであれば無理である。レベルを上げればいきなり終盤のエリアから行ける、というのも理論上は可能だが程度の話。
そもそもストーリー進行に合わせていける場所が広がるのがむしろ普通で、最初から全部できてしまうのなら成長の楽しみとか、探索エリアが広がる楽しみとかそういう感動を最初から奪われていることでもある。これはどっちがいい悪いかではなくて、そもそもオープンワールドとは別の別のシステムやデザインの話であるということ。

5.まとめ
本来ゲームのジャンル分けやシステムというのは開発側が必要だから、面白いと思ったから入れるものである。別に流行りだからそれを再現・踏襲するのはいいが、なぜ流行っているのか、そして「この要素とこの要素は本当に相性がいいのか」をきちんと考えるべきだし、それは何も開発者だけでなくてゲームを遊ぶ側も「この仕様は面白くない」のははっきり言うべきだし、反対に「ここは良かった」という要素もまた素直に言ってくべきであると思う。

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