説得術

社内調整力を強化するための『説得術』 ~他部署との調整、上司との交渉を円滑にするための方法を解説~

1.はじめに

会社では上司への提案に始まり、会議やプレゼンテーション、さらには他部署との調整等の場面で力を発揮するのが説得のスキルです。

ほぼ、すべての仕事の成否を左右し、人事評価にまで影響を及ぼす可能性がありますから、ビジネスパーソンにとって最も重要なスキルと言っても過言ではありません。

そこで今回は、社内調整力を強化するための「説得術」を向上させる秘訣について解説します。

2.そもそもなぜ説得が必要なのか

2.1 仕事のスタートは説得から

説得という言葉を辞書で調べてみると「よく話して、わからせること。説き伏せること。」と書かれています。

どんなに素晴らしい提案やプロジェクトであっても、上司や決裁権者を説得できなければスタートすることができません。

スタートできなければその先はありません。

つまり、説得に失敗することは、新しい行動が何もできなくなることを意味します。だからこそ、仕事のスタートは説得からと言われるわけです。

2.2 できる人は説得上手

仕事のスタートが説得からと言われるように、どんなに素晴らしい提案やプロジェクトであっても、上司や決裁権者を説得できなければスタートすることはできません。

このことを1番よくわかっているのが、「できる人」といわれる有能な社員です。

「できる人」は、自分の仕事がグングンはかどるコツを心得ているものですが、中でも説得上手の受ける恩恵のパワーを十二分に認識し、次の4つのポイントに留意して実際の説得にあたっています。

そして、「説得術」向上の秘訣は、ズバリこの4つのポイントを理解して行動することに他なりません。

<説得上手の4つのポイント>
(1) 戦略
(2) 話し方
(3) 聴き方
(4) 雰囲気(ノンバーバルコミュニケーション)

2.3 交渉術より説得術

交渉術というと従来は勝ち負けのイメージが強く、最近ではWIN-WIN(相互納得)の関係による痛み分けのようなものが主流になってきました。

これに対し、説得術は、勝ち負けや取引ではなく、相手を納得させて味方になってもらうスキルです。

したがって、交渉術よりレベルの高い強力な武器と呼べるのが説得術です。

3.説得術の準備

3.1 説得を戦略的に計画する

ほとんどの人が重要な会議やプレゼンテーションの前には十分な準備をしていると思います。

では、上司や部下、他部署の社員への説得をする時に、十分な準備をして臨んでいますか?このような質問をセミナーですると大抵の方が準備をしていないと答えます。

これでは出たとこ勝負の成り行きに任せた結果になることが予想されます。特に他部署の社員への説得においては、失敗した場合には取り返しのつかない事態に発展する危険性すらあります。

このようなリスクを防ぐためにも、説得を戦略的に計画する事前準備が欠かせません。

ここでの事前準備は、「説得を戦略的に計画する」=「説得の戦略シートを作る」ことになります。

説得の戦略シートを作る(5W1H)

ポイントは、【Who:誰を説得】に対応した適切な5W1Hを綿密に計画することになります。⇒説得の見える化

【Who】   【誰を説得】 
【What】  【何を説得】
【Why】   【なぜ説得】
【When】  【いつ説得】
【Where】 【どこで説得】
【How】   【どのように説得】

【資料】説得の戦略シート(サンプル)

 ■説得の戦略シート

【誰を説得】  直属上司の課長
【何を説得】  後輩社員の役割分担
【なぜ説得】  自分の仕事量が多過ぎるため
【いつ説得】  来週金曜日の16時30分
【どこで説得】 小会議室

【どのように説得】 
・課長とは小会議室で個人面談をする
・現状の仕事量が多過ぎることを資料に基づき説明
・業務量過多でのリスクを口頭説明
・後輩社員が能力的に問題ないことを口頭説明
・質疑応答の準備

【ゴール】 課長の理解を得て仕事量の削減をはかること
(物理的に困難であり、やる気がないと誤解されないように留意)

4.説得術の実践

4.1説得術の話し方(わかりやすく話す)

説得術の話し方で重要なのは、とにかく話しの内容を相手に理解してもらうことです。

例えば、専門家が難しい専門用語を並べて一生懸命に説明しても、素人には何を言っているのかさっぱり理解できません。

同様に、経営幹部が文系出身の場合には技術系社員の説明内容の本質が理解できずに迅速な意思決定に至らないこともあります。

最悪の場合、プライドの高い経営幹部はわかったフリすらします。

また、話しが長くて要領を得ない説明をされると結局何が言いたいのかわからないと感じます。これでは説得をすることなどできません。

そこで重要なのが、わかりやすい話し方のスキルを身につけることです。

特に難しい専門用語等は、そのまま使用せずに素人でも理解できる言葉に翻訳して説明する配慮も必要です。

そして、わかりやすい話し方には留意すべき6つのポイントがあります。

<わかりやすい話し方の6つのポイント>

(1) 大きな声
はっきりと聞こえる大きな声で話します。相手の声が聞こえないとそれだけで話しの内容を理解してもらえません。

(2) 滑舌よく語尾をはっきり
滑舌が悪いと何を言っているのかわかりません。また、語尾をはっきりさせないと自信がない印象に見えます。

(3) 短い言葉で言い切る
短い言葉で言い切ると話しがわかりやすく、自信がある印象に見えます。

(4) PREP法を使う(結論・理由・具体例・結論)
「結論・理由・具体例・結論」の順番で説明します。それぞれの頭文字をとってPREP法と呼ばれています。最初に結論を言いますから何が言いたいのかわかりやすい説明になります。
Point   結論
Reason  理由
Example 具体例
Point   結論

(5) 一理三例
1つの理論を説明するときに3つの具体例をあげて理解しやすくします。

(6) 例え話
難しい話しをわかりやすくするために比喩表現を使った例えで説明します。

4.2説得術の聴き方(傾聴)

傾聴とは、相手の話しを聴くことです。

説得するには、相手の話しを傾聴することが重要です。

なぜなら、人は自分の話しを真剣に聴いてくれる相手に好感をもち、相手の話しも真剣に聴く気持ちになるからです。

一般的に説得では話し方のスキルを中心に考えがちですが、実は、相手の話しを聴くスキルこそが勝負の分かれ目になります。

「話し上手は聴き上手」と言われるように、あの人は話しが上手いと言われる人は例外なく傾聴の達人でもあります。

そして、傾聴には留意すべき7つのポイントがあります。

<傾聴の7つのポイント>

(1)うなずく
相手の話しに「うん。うん。」と、うなずくことです。

(2)あいづち
相手の話しに「へぇーそうなの。なるほど。」と、あいづちを打つことです。

(3)繰り返す
相手の話しに「同じ言葉をオウム返しのように」繰り返すことです。

(4)要約する
相手の話しに「つまり、あなたの言いたいことは●●ですね」と要約することです。

(5)うながす
相手の話しに「それからどうしたの」と、次の話しをうながすことです。

(6)アイコンタクト
相手の目を見て話しを聴くことです。

(7)沈黙
相手が黙っていたら聴く方も沈黙することです。

4.3説得術の雰囲気(ノンバーバルコミュニケーション)

説得術の実践において、話し方(わかりやすく話す)と聴き方(傾聴)について説明してきました。

これらは言葉によるコミュニケーションでありバーバルコミュニケーションと呼びます。

これに対し、「話し方」・「表情」・「動作」といった言葉以外の要素によるコミュニケーションをノンバーバルコミュニケーションと呼びます。

ノンバーバルコミュニケーションは、人間だけではなく、多くの動物も行うコミュニケーション方法であり、情報の発信者の表情や動作が、情報の受け手の感性に大きな影響を与えます。

このノンバーバルコミュニケーションの影響力についてアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンは、人が相手からの情報として読み取る要素を「言語」・「聴覚」・「視覚」の3種類に分類し、その割合を実験した結果を発表しました。

これが有名なメラビアンの法則と呼ばれるものです。

実験結果では、「言語(言葉の意味)」7% 「聴覚(声の大きさや質・話し方)」38% 「視覚(見た目・表情・動作等)」55%という衝撃的なものでした。

つまり、ノンバーバルコミュニケーションの影響力が9割以上だというわけです。

そして、ノンバーバルコミュニケーションには留意すべき4つのポイントがあります。

<ノンバーバルコミュニケーションの4つのポイント>

(1) パーソナル・スペース
相手との角度・距離・視線の高さのことです。

(2) セルフ・プレゼンテーション
髪型・服装・持ち物等の見た目のことです。

(3) ボディー・ランゲージ
表情・態度・身振り手振りのジェスチャーのことです。

(4) パラ・ランゲージ
話すときの声の大きさや高低、調子やスピードです。

4.4心理学の応用

初対面の相手に対する説得術の実践において、留意していただきたい心理学の有名な法則があります。

これは、ポーランド生まれの社会心理学者であるロバート・ザイアンスが提唱した単純接触効果(ザイアンスの法則)で、ポイントは次の3つです。

(1)知らない人に対しては攻撃的な態度をとる。

(2)接触回数が多いほど親しみを感じる。

(3)相手の人間的な側面が見えると感情が深まる。

つまり、知らない人に対しては攻撃的な態度をとることが普通であり、接触回数を多くすることで信頼関係が深まります。

そして、相手の人間的な側面が見えると感情が深まりますから、自己開示が必要なわけです。

5.おわりに

今回は社内調整力を強化するための「説得術」を向上させる秘訣について解説しました。

最後に特に重要な部分をまとめましたので復習を兼ねてご確認いただければ幸いです。

5.1そもそもなぜ説得が必要なのか
(1)上司や決裁権限者のOKが出ないと仕事がスタートできない

5.2説得の戦略シートの作成
(1)誰を説得するかに対応した5W1H⇒説得の見える化

5.3話し方(わかりやすく話す)
(1)難しい内容を簡単に翻訳して伝えること
(2)話しの順番(PREP法=結論・理由・具体例・結論)を考える

5.4聴き方(傾聴)
(1)人は自分の話しを真剣に聴いてくれた相手に好感をもち、相手の話しも真剣に聴く
(2)話し上手は聴き上手

5.5雰囲気(ノンバーバルコミュニケーションとメラビアンの法則)
(1)言葉以外の要素によるコミュニケーションがノンバーバルコミュニケーション
(2)ノンバーバルコミュニケーションの影響力は9割以上

5.6心理学の活用(ザイアンスの法則)
(1)知らない人に対しては攻撃的な態度をとるのが普通
(2)接触回数を多くすることで信頼関係を構築
(3)人間的な側面を見せるために自己開示が必要

◆戦略10のポイント

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