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3つのイベントに関連して(前編)

※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、2022年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。

※2022年度からは「原則として2年前までの文章を転載する」という方針で更新しており『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず30年余り前の文章から選んで時系列に転載を進めてきました。そして現在はだいたい2年前の文章を掲載しています。今月は『ごかいの部屋』第258号の「当方見聞読」欄に書いた文章を前編に、Facebook投稿文を後編に、それぞれ転載します。いずれも2年前のものですが、近日開催されるおとなひきこもりイベントに関連していますので、ぜひご一読のうえ末尾欄外の告知をご覧ください。

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『ひきこもりの真実』と私との縁

 当事者活動仲間として15年以上のつきあいであり、ひきこもり体験や不登校・ひきこもり論に共通点が多いため意気投合している林恭子氏。
 近年マスコミにしばしば登場するなど、ひきこもり分野の当事者経験者では知名度ナンバーワンの彼女が、2021年の12月9日に初の単著を出しました。
 『ひきこもりの真実――就労より自立より大切なこと』(ちくま新書)です。
 
 不登校・ひきこもり界では、当事者経験者が書いた本のことを「当事者本」と呼ぶことがあるのですが、当事者本はたいてい著者個人の体験と意見で(割合はさまざまですが)構成されています。
 それに対して本書は、著者個人の体験と意見に加えて代表理事をつとめる「ひきこもりUX会議」による女子会活動と実態調査についての記述にそれぞれ1章を費やすという、当事者本としては稀有な構成。そのため多くの当事者経験者の声が満載のひきこもり本となっています。
 
 ちなみに、長年の活動と近年の知名度から、彼女に単著がないのを不思議に思っていた方が少なくないでしょう。もちろん私たち仲間は彼女の説得力を昔から認識していましたし、それは講演でもいかんなく発揮されて体験談も意見も聴いた方に強いインパクトを残します。しかし私は、その体験談や意見にここ数年の「ひきこもりUX会議」での活動にもとづく記述が加わったからこそ、このグレードになったのだから最高のタイミングだった、と感じました。
 
 ただそうは言っても、やはり体験記の章は圧巻でした。集大成のつもりで書いたのでしょう。つぶさに綴られた育ちと苦闘の時代から活動の進展にいたる半生は、不登校・ひきこもり理解にとても役立つ内容です。
 また、活動の部分では90年代末からの当事者活動の歴史や、私も絡んだ「ひきこもりUX会議」設立の経緯を知ることができ、史料としての価値も兼ね備えています。
 
 そして、何と言っても全体を通じて共通点の多さにあらためて驚いたというのが、私にとって本書のいちばんの感想になります。
 入学した高校が新設校だったことや住んでいたあるいは縁のある土地が同じであることはもとより、体験も意見も私が書いたり話したりしていることと一致している箇所が随所にあったのです。
 
 「同じことを違う表現で書いている」「表現は違うが同じことを書いている」と感じる箇所の多い本は何冊もありますが、本書には「階段型支援の問題点」「横並びの姿勢」「エネルギーが一滴一滴溜まる(図を含めて)」「このままでは破綻する~」など「同じことを同じ表現で書いている」と感じる箇所がたくさんありました。
 さらに、同じ表現どころか「一字一句同じ」という文言も多数発見しました。「普通に家族の一員として接する」「こんなダメな人間は世界中探してもどこにもいない」「この人は本当にわからないんだ」「野生動物のように」といった言葉のほか、地域の協力者の開拓を主張した段落は段落ごとまったく同じです。
 
 私の文章や発言からふたつを引用していることもきわめて当然だと感じるほど、著者との深い縁を実感させられた一冊でした。

0222.2.28 [No.258]初出:「当方見聞読」欄『『ひきこもりの真実』と私との縁』<メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第258号(2022年2月28日)

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。