貧乏ゆすり

考えことをしている時はついつい貧乏ゆすりをしてしまう。
メタルバンドのドラムみたいなテンポで。

あの貧乏ゆすりのエネルギーを何かに利用できないかな、といつも思う。
例えば、かかとに判子をつけて、下にポイントカードを置く。
それでリズムに合わせてカードを一枚一枚めくる人がいれば、『ポイントカードの1個目の判子押し』の仕事を手伝うことができたりする。

しかし、それをするには、貧乏ゆすりをする僕と、下でポイントカードをめくる人との間に、お正月にテレビに現れる高速餅つきの人らくらいのコンビネーションが必要だ。

高速餅つきレベルのコンビネーションを会得するには、事前に集まって練習しなければならない。
顔合わせ初日のことを考えたらドキドキする。

「あの、、貧乏ゆすりの中村です」
「はじめまして、、、グリーンマートの河出と申します」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「、、、今日、寒いっすね、、」

気まずい。
こういう時は早く練習に入る方がいい。

「えっと、じゃあ早速やりましょうか、、、まず僕が貧乏ゆすりするんで、僕のかかとの下に、ポイントカードの束を置いてもらって、タイミング合わせてポイントカードを一枚ずつ取っていってもらえたら、、、」
「ポイントカードってどこにあるんですか?」
「え?持ってきてないんですか?」
「え?そんなん書いてましたっけ?」
「、、、じゃあ、今日は、あるテイでやりますか」
「あぁ、はい。」

ってなる可能性もある。
気まずい。
"書いてなくてもポイントカード持ってこいや。わかるやろ。"
という気持ちが貧乏ゆすりに出そう。
イライラして、貧乏ゆすりがいつもより高速になる。
それに相手が年上だとさらに気を使うし、なんとか気まずさも乗り越えて練習したとしても、全然息が合わないこともある。
そればっかりは相性だ。
うーん、、、

貧乏ゆすり×ポイントカードの判子押し

は、やっぱり厳しいか。

じゃあ、貧乏ゆすりしてる時に、かかとに包丁をつけて、キャベツをそこに置いたら、貧乏ゆすりしてるだけで千切りが出来るのでは。

貧乏ゆすり×キャベツ

だ。
これはポイントカードの時のようにタイミングを合わせる必要もない。
強いて言えば、キャベツを少しずつ動かすだけだ。誰でも出来る。

でも、一応最初はキャベツ係の人に挨拶をしなければならないから顔合わせはある。

「どうも、貧乏ゆすりの中村です」
「あ、どうも、、お好み焼き屋満腹亭の河出です」
「いや、グリーンマートの人ですやん」

という、まさかの再会もあり得る。
それで、

「あれ?グリーンマートで働いてませんでした?」
「それが、レジのお金を使い込んでいたのがバレまして、、、」

やばい奴だったことがわかる可能性もあり得る。
でも、そうなったとしても、罪を憎んで人を憎まず。
貴重品だけは身につけながら、千切りの練習に入ろう。

「えっと、じゃあ、僕が貧乏ゆすりするんで、キャベツをそれに合わせて、、、」
「え?キャベツどこにあります?」
「キャベツ持ってきてないですか?」
「あれ?そんなん書いてましたっけ?」

やばい奴は同じミスを繰り返す。

「じゃあ、あるテイでやりますか、、」

このあるテイでやるヤツ意味あるんか?
集まったからなんかしないと、という気持ちでやるけど。
絶対意味ない。

やっぱり顔合わせを必要とする「貧乏ゆすり×〇〇」は僕みたいな人見知りには難しそう。

貧乏ゆすりのエネルギーはもったいないままだ。


#エッセイ #コラム #貧乏ゆすり

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