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(第25回) でべそのすべて その⑥ 最終回 おおきなへその治し方

(第24回) でべそのすべて その⑤ 巨大臍ヘルニアの手術法 からの続きです。
このセッション、長く続いてきましたが今回で最終回です。

(第23回) でべそのすべて その④ 偶然からの発見 で、巨大臍ヘルニアを乳幼児期早期に手術すると非常にきれいになることを論文報告した僕は、
同じように何らかの理由で通常より早期に手術を行った巨大臍ヘルニアのお子さん達と、同時期に通常の手術時期(1歳以降)で手術を行った巨大臍ヘルニアのお子さん達で、結果を比較してみるという臨床研究をすることにしました。
今回の内容の一部は論文
佐伯 勇ら: 巨大臍ヘルニアに対する手術時期による臍輪収縮率の違い 日本小児外科学会雑誌 52(2): 259-63, 2016.
からの紹介になります。

でべそに関して語りだしたら長くなるとは思っていましたが、まさかの第6回までいってしまいました。
さすがに最終回です。
毎回イラスト写真つきで4,000字くらい記載していますから、でべそに関してだけで20,000字くらい書いてますね。
まあ、日本中どこを探してもこんなにでべそのことを書きまくっている文章はないだろうと思っています。

さて、臨床研究です。
4例だけでは信用性が薄い。また、比較になっていないということで、
この論文における研究では、乳児早期に手術をした群10例、通常時期の手術群8例で比較しています。
乳児期早期に手術をしたお子さんの手術の時期は、平均で2か月(修正月例)、体重は中央値で4.27kg
通常時期の手術のお子さんは、手術の時期が平均で1歳7か月、体重は11.9kgでした。
このお子さん達の手術で、
「手術後1か月で臍のサイズがどうなったか」を、臍縁横径で計測しています。
その結果がこのグラフです。


結果

すごい差ですね…。
術前の臍のサイズは両群でほぼ同じ。
手術法も前回紹介した、僕の方法(臍内部U字切開法)で統一しています。
ですからこれは、手術の技術ではなく
単に乳児期の早めに手術をしたら臍が小さくきれいになる
ということになります。
なんでだ…?
そして、この真ん中あたりではどうなるの…?
臍が自然と小さくなる子とあまり小さくならない子の境目はどこ…?

疑問はつきませんね。

なんでか?
ということですが、これは完全に推測になります。
証明しようがないですからね。
個人的には「おへその形が決まってしまうから」だと考察しています。
おへその形というのは、おへその周囲、つまり僕が名付けた「臍縁」によって決定されるわけですが、これはみなさん平均して横径が16mm程度で一定しています。
しかし、大きな臍ヘルニアが持続してしまうと、この通常の臍縁より大きなサイズの部位の皮膚にしわができてしまい、段々と固定されてきます。
つまり、本来の臍縁より大きな部位に臍らしきしわが形成され、「大きなおへそ」に見えるようになるのです。

まだ小さな赤ちゃんでは、でべそを治してしまえばこの「大きなおへそ」の原因になるしわが自然と改善しますので、本来のおへその形に戻るということになります。
そういう意味では、早めに圧迫療法で治すというのは正しいというころになります。
そして、圧迫療法が生後6か月を超えると効果が突然少なくなる…というのは、おそらくはこの「自然と改善する時期」を超えてしまうということなのでしょう。

ということで、この「臍が自然と小さくなる子とあまり小さくならない子の境目」というのは、6か月くらいにあるのではないか…?と予想されました。

しかし僕は、そんな中途半端な推論で終わるような好奇心の持ち主ではありません。
はい、研究継続。

この論文発表を行ったことで、エビデンス(証拠)を持って巨大な臍ヘルニアのお子さんに対しては「もし臍をきれいに治したいという希望があれば、通常の手術時期とされている1歳を超えてからではなく、もっと早めに手術もしますよ」と言えるようになりました
もちろん、その他のデータも全てちゃんとお示しして、ご家族に手術の可否は選択していただいております。
さっきの研究は「乳児期早期群10例、通常の手術時期群8例」でしたが、更に様々な時期に検討を広げ、約2倍の35例の検討を行いました。
内訳はこんな感じです。


検討2

では、結果はどうなったのか…!?
と、またいいところで有料になります。
すいません。でも、この検討結構労力とかかかってるんですよ…。

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僕の有料記事の売り上げは、基本的に広島大学病院小児外科において小児がんの研究のための基金として使用させていただきます。
続きに興味がある方は、ご寄付のつもりでどうぞ~)

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