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世に“雪崩”を起こした、変革のドラマ

主演:綾野剛×監督:藤井道人のテレビドラマ『アバランチ』がHuluで配信開始。テレビドラマ界に改革の狼煙を上げた力作の魅力を、3ポイントで紹介。

彩度からアクションまで挑戦尽くし、本気の映像表現

『デイアンドナイト』『新聞記者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』など、作品ごとに進化を続ける監督・藤井道人。いま最も勢いのある気心の知れたスタッフたちと映画の方法論をテレビドラマに持ち込んだのがこの『アバランチ』だ。画面全体の光量や彩度を落とし、俯瞰ショットを意識的に取り入れることでソリッドな世界観を創出。「狭いビルの階段」「エレベーターの中」「暗闇」「走行中の車」といった様々なシチュエーションを用意し、難易度の高いアクションを次々に投入(実戦形式の近接戦闘にも注目)。主人公がくゆらすタバコの煙さえカッコいい挑戦尽くしの映像に、うならされる。

設定もテーマも、深く濃い! 攻めた社会性×娯楽性

放送開始までほとんどの情報を明かさず、意味深な映像やメッセージで煙に巻く告知方法も本作の特徴。やがて「アバランチという謎に包まれた集団が世直しを図る」という物語が見えてくるが、事はそう単純ではない。メンバーの過去や敵対する黒幕の思惑、さらに驚きの展開が立て続き、物語は複雑化。「権力者のスキャンダルを暴き全世界に動画配信する」という現代的アプローチ、アバランチが神格化されたりテロリスト扱いされる情報化社会のひずみ、「日本を諸外国のスパイやテロリストから守るために国力(軍事力含む)を上げる」といった社会的な要素をはらんだ攻めたテーマ、毎話続きが気になる「引き」が用意されている設計等々、「見ごたえ」という名の強度が極めて高い。

全員ハマり役! キャスト陣の躍動が熱い

藤井道人監督と数々の作品でタッグを組み続けている綾野剛をはじめ、出演者たちの力演も大きな魅力。アバランチのリーダーに扮した木村佳乃、その部下を演じた福士蒼汰、アバランチメンバー役の千葉雄大、田中要次、高橋メアリージュン。それぞれに過去と“変化”が用意されており、綾野の普段はへらへら→凄みの変貌、淡泊な性格に見せかけて、役の人情家な一面を見せる千葉の涙、さらにメンバー間の絆のドラマも胸を熱くさせる。綾野と高橋のキレッキレなアクションも迫力十分。彼らに立ちはだかる“敵”である渡部篤郎の怪演、名バイプレーヤーの山中祟や駿河太郎、田島亮といった面々の活躍など、キャスティングの妙×キャラクターとのシンクロ具合も絶妙だ。

Text/SYO

SYOプロフィール

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマ・小説・漫画・音楽などカルチャー系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トーク番組等の出演も行う。Twitter:@SyoCinema

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