これも親ガチャ?(LAST+=第27話) 

(河合真奈の話)
相田勉を乗せた救急車は、茜さんの勤めている病院に
着いたそうです。
「は~い、大丈夫よ。どこが痛い?」
久美子さんが受付の看護師だったようです。
「茜さん、状況は?」
反応しない相田勉の代わりに、救急車に一緒に
乗ってきた茜さんが質問されて。
「救急車が着くまでは、異常な頭痛と全体の硬直と
痙攣。脈拍120。瞳孔も開きかけたんです。
この病院に着く瞬間に、事切れて全身脱力した
次の瞬間、全て正常に戻っちゃいました。
現在、記憶喪失中です。」
茜さんは静かに言いながら救急車から降りると、
その場に座り込んだそうです。
「全て正常?」の言葉で、病院のスタッフは、
簡易ストレッチャーを停めて、茜さんを見つめた時。
「ム~君、私が解らないんです。ウ・ウ・・・ワ~ン!」
茜さんは号泣し始めたそうです。
私(河合真奈)が病院に着いたのは、
そんな一悶着が終わった後だった。
「茜さん、大丈夫?」声をかけた私にしがみついて
「真奈ちゃん、どうしよう?
ム~君のいない生活なんて、私、考えられないわ。」
?????
「茜さん!相田君、そこに座ってるじゃないですか?」
私は意味が分からず、あっけにとられていた。
「ム~君、私の事が解らないの!ヒック、ヒック・・・。」
私は、茜さんを長椅子にもたれかけさせて、
相田勉の正面にかがみこんでみた。
「あっ、真奈ちゃん。なんだか、大人になってるね。」
相田勉がようやく反応したのが、この一言だった。
私は愕然として、
‘相田君はもう戻ってこないかも!’ そう思いました。
病院の事務にタクシーを呼んでもらって
茜さんと相田勉を連れて帰ろうと病院を出た直後に
相田勉がボソッと呟くんです。
「ム~君、死んじゃった。」
私は覚悟はしていましたが、心臓を誰かに握られるような
嫌な感じに襲われました。
酷かったのは、茜さんです。
号泣がまた始まってタクシーに
なかなか乗せられる状況にならない。
ドライバーに「ごめんなさい、うるさいけど勘弁してね。」
そう言って、無理やり3人で乗り込んだんです。
「住所は、慣れるまでは財布に入れておけ!」って
財布に入る大きさの堅紙のメモを
ほんの数時間前にム~君が渡してくれていた。
私はそのメモを財布から取り出してギュッと
握りました。‘今は私がしっかりしなければ!’
そう自身に言い聞かせました。
家で待っていた愛ちゃんに
食卓のテーブルに座らせた茜さんを頼み、
私は赤いノートを探す事、相田勉を部屋で寝かせる事を
手際よく済ませてから食卓のテーブルに戻りました。
‘さすが相田君、あの引っ越しの最中に机を一番に
組み立てて、その正面に赤いノートを置いておいてくれてた。’
私は感動しながら、愛ちゃんと茜さんを前に
ム~君の伝言と現状を話しながら
赤いノートの中を読んだ。
「これは・・・・、みんなが各々読んだ方が良いわね!
ム~君の愛が詰まってるもの。」
私は斜め読みした後に、そう言いながら愛ちゃんに渡した。
だって、さっきから茜さんのスマホにメールの着信音が
鳴り続けているのに、茜さんは全く反応していないんだもの。
放心状態っていうのよね、これって。


赤いノートの中には、こんな事が書いてありました。
株式、信用信託は1つずつを除いて、全て換金した。
現在の総額、茜分500万円、勉分6000万円。
税金分は、弁護士に納付分を預けてるから
全額使えます。このマンションは先に3000万円
払い済みで、残りの300万円をローンにしました。
ローン月額、修繕積立金、固定資産税用として、
毎月5万円を指定した銀行口座に入金して下さいね。
余裕で払っていける計算です。
勉分の6000万円を愛と真奈で
3000万円ずつに分けて使って下さい。
かなりのイレギュラーが無い限り
ギリギリ生活できる予定です。
3000万円のお金に目がくらんだら、
どうしようもないけどね!
相田勉に株の配当と信託の配当で
年間300万円くらい入ってくる計算です。
家賃はいらないから、切り詰めれば
茜が働けなくても食べていけると思う。
毎日、クタクタになってると目標を忘れがちになるけど
時間がかかっても、目標を忘れないようにして欲しいな!
もちろん、目標が変わっても全然良いんだよ!
高校生や中学生で考えた事、想像と実際は
かなり違ったと思ったら、立ち止まって
計画を立て直そうよ。
愛も、真奈も1度しかない人生なんだから。
俺は2つ分楽しませてもらったけどね。
相田勉を頼むよ。
高校レベルまででいいからさ。
愛も真奈も、頭が良いから
お前らの将来が見れなくて本当に残念だよ。
でも、見守ってるって思って!
君らは1人じゃないよ。


ム~君の赤いノートには、他に
税理士:神戸一郎の名刺(岡田香さんの紹介)
が貼り付けてあり。
アート&インテリジェンス アカデミー社
矢島浩太郎
※矢島先生には、愛に現状を話させてね。

愛のマネージャー:岡田香・連絡先:
××福祉学園の担任:大森大福・連絡先:
※手続きは住んでるから、先生の指示通りに
相田勉を通わせて欲しい。学校の費用は
市が補助金を出してくれる手はずです。

佐藤正のお母さんの連絡先:
茜さんの同僚・久美子さんの連絡先:
※茜が想像通り使えなくなったら、その晩のうちに
久美子さんに電話する事。
などが書いてありました。      

みんなが部屋に戻り、私もベッドに潜ると
声を殺して泣きました。ふっと気付くと
朝になってて、洗面所には顔が腫れた私と
愛ちゃんと茜さんがいて、3人で背中をさすりあいました。
    
                  終わり

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