令和5年司法試験[環境法]雑記

令和5年司法試験[環境法]のふりかえりです。
環境法選択の皆さんにとって、試験前や合格発表までの安心材料としてお役立ていただけるものになっていましたら幸いです。

【試験の成績】
65.85点(6位/85人)

【参考】
試験問題:https://www.moj.go.jp/content/001415898.pdf
出題趣旨:https://www.moj.go.jp/content/001415935.pdf
採点実感:https://www.moj.go.jp/content/001408694.pdf


〔第1問〕

テーマ:道路騒音訴訟、空港・基地騒音訴訟

〔設問1〕

(1)判例理解を問われた問題。大阪空港訴訟最判と国道43号訴訟最判(差止)の民事差止訴訟の提起の適法性について、結論が分かれた理由を論じるものです。
まず、大阪空港訴訟最判の規範を述べた上で、【資料】にある騒音対策を指摘しつつ、道路騒音は(空港と比較して)道路管理者の事実行為による対応が可能であるから、道路騒音訴訟は公権力の発動を求めるものではない、と結論づけました。
この論点はTKC模試でも出題されていましたし、Aランクの論点であると思われるので、覚えてきた論証を正確に書きつつ、【資料】の内容も丁寧に(分量多めに)引用しました。

(2)民事差止請求の違法性の判断枠組み=受忍限度論に関する理解を問われた問題。
問題文に提示された順番に従って、①国道43号訴訟最判(差止)が示した違法性の判断枠組み、②同訴訟最判(損害賠償)との相違を述べ、公共性の考慮の当否を含めた学説の立場を論じました。
こちらも大方用意してきた論証どおりになりました。

ちなみに、作成していた論証は、例えば以下のとおりです。少し長めのものを用意して、一言一句同じでなくとも、同じ内容を同じ長さで暗唱できるくらいにはしていました。

【受忍限度論】
※公共性(彼此相補性)の考慮の当否については別の論証を用意していました。

生活妨害型公害その他生活環境利益が侵害される違法侵害類型の場合、違法性の有無は、相関関係説に従い、侵害が社会生活上受忍限度を超える程度のものであるかという基準で判断される。
具体的には、損害賠償請求の場合には、①侵害行為の態様・程度、②被侵害利益の性質・内容、③侵害行為の公共性の内容・程度、④被害防止措置の内容、⑤受益と被害の彼此相補性を考慮して判断する(国道43号線訴訟上告審判決)。

差止めは事業活動にとって大きな打撃となるのみでなく、社会的に有用な活動を停止させるおそれがあることから損害賠償の場合と異なり、公共性を考慮せざるをえない。したがって、裁判例上、差止めの場合には損害賠償よりも高い違法性が要求されるとするものが少なくない(違法性段階説)。最高裁判決は、発想としてはこの考え方によりつつも、差止めと損害賠償とで、違法性の判断において各要素の重要性をどの程度のものとして考慮するかには相違があるから、両場合の違法性の有無の判断に差異が生じても不合理であるとはいえないとしており(国道43号線訴訟上告判決)、「ファクターの重みづけ」相違説とでもいうべき立場を採用している。
→差止請求の場合には、①②③のみを取り上げて比較衡量をして受忍限度の判断をしている(国道43号線訴訟上告審判決)。

【考慮要素】
・加害者の利用方法の地域性への適合の有無
・加害者の被害防止対策(経済的期待可能な措置)実施の有無
・加害行為の公共性の有無・程度
・環境影響評価や住民への説明などの手続履践の有無
・法規違反(規制基準違反)の有無
・(日照妨害については)加害者と被害者の先住後住関係

ここまではあらかじめ用意してきた論証をそのまま貼り付けるような形で、出題趣旨どおり書けたと思います。採点実感によると、設問1は比較的多くの受験生がよくできていたようですが、公共性についてまで触れられていたことや、全体的な論述の厚みで、若干他の受験生と差がつけられたのかなという印象です。

問題はここから……。

〔設問2〕

厚木基地訴訟平成5年最判・同訴訟平成28年最判の理解(+行政訴訟の理解)を問われた問題。のはずなのですが、問題を見て「基地騒音訴訟って環境法の範囲なんだ……!?何について論じればいいのかわからない!!!」となってしまったので、これらの判例の理解については一切論じられていません。
ついでに、行政訴訟をメインで論じるべきところ、民事訴訟についてしか触れられていないので、ダブルで詰みました。冷静に考えれば、設問1が民事訴訟なら設問2は行政訴訟と相場が決まっているはずなのですが、どうしても平常心ではいかないものですね。
行政訴訟について論じなければいかなかったことには、環境法の試験後、同日の行政法の試験に向けて復習している際に気がつきました。初日から散々。

初日の試験後

以下、大きな間違いを犯しながらも論述した内容です。

(1)民事差止訴訟しか頭になかったため、「民事訴訟を提起することができる」と書く以外、特に論じることがありませんでした。「厚木基地訴訟平成5年最判が自衛隊機基地騒音に係る民事差止訴訟を不適法としたこと、同訴訟平成28年最判が法定抗告訴訟としての差止訴訟を適法なものとして本案審理に入ったことを踏まえ、訴訟要件を含めて適切な立論を行った答案はかなりの割合を占めた」(採点実感)そうなので、この段階でかなりの差をつけられてしまったのだと思います。もし行政訴訟の訴訟要件を検討していれば、あと5点くらいは伸びたのかな……嗚呼……。

(2)本来であれば差止訴訟の本案勝訴要件を規定する行訴法37条の4第5項にしたがって検討すればいいのですが、もちろん民事訴訟を前提として解答してしまっています。

次に、小問⑵において、厚木基地訴訟平成28年最判の論旨を踏まえた解答者の多くは、差止訴訟の本案勝訴要件を規定する行政事件訴訟法第37条の4第5項に則して、(a)防衛大臣の判断に幅広い裁量が認められることや、(b)差止請求を認容すべきかを判断するに際しては、自衛隊機の運航目的等に照らした公共性や公益性、周辺住民の被害の性質と程度が考慮されることを指摘できていた。また、被害軽減措置の有無や内容等も考慮されることを指摘できている解答が少数ながら存在した。……
なお、小問⑴・小問⑵を通して民事差止訴訟を専ら検討している解答もあったが、これは大阪空港訴訟最判から厚木基地訴訟平成28年最判へと至る判例の流れと学説における議論を看過し、[設問2]の題意を踏まえていないものである。ただし、これらの答案の中にも自衛隊基地騒音の特殊性を踏まえた立論がされているものがあった。(採点実感)

他方、現場で無理やり自衛隊基地訴訟の特殊性を捻り出したことにより、上記採点実感の太字部分の内容にはある程度触れることはできているので、おそらく私の答案は「ただし」以降のものに含まれているというのが希望的観測です。

(3)何を書いたかは覚えていませんが、何かしら論じました。
「なお、自衛隊基地騒音に係る民事差止訴訟は適法であるとの前提において、道路騒音に関する国道43号訴訟最判(差止)において示された判断枠組みとの差異を論ずる中で、ある程度明確かつ一貫性のある論旨を展開できている解答もあった」(採点実感)。この解答が私のものである可能性がわずかに存在してほしいです。

〔第2問〕

テーマ:容器包装リサイクル法

〔設問1〕

(1)容リ法における費用負担が拡大生産者責任に基づくことを、「最安価費用回避可能者」「環境配慮設計(DfE)」などのキーワードを用いて、論証どおり記述しました。他の受験生に差をつけられないよう、このような重要な概念・キーワードにかかわる論証についてはほとんど丸暗記して試験に挑んでいます。

(2)再商品化義務の規定(容リ法11条~13条)、再商品化合理化拠出金制度(10条の2)を指摘しました。再商品化合理化拠出金制度の持続可能性の問題については、(たしか辰巳の答練でも取り上げられていたため、その際に)詳細に論証を作成しており、それがそのまま試験に活きました。
(1)(2)はほとんど出題趣旨どおり論じることができており、他の受験生と差がつけられたのかなと思います。

(3)具体的にどの条文まで指摘したかは覚えていませんが、その場で六法を眺め、いくつか条文を挙げたと思います。措置については、列挙するような書き方になってしまった記憶があり、出題趣旨が想定していたコンパクトな記述にはなっていなかったような気がします。

〔設問2〕

(1)事前に学習していた事項ではなかったため、その場で思いついたことを何か論じたと思いますが、何を書いたかは覚えていません。

(2)ライフ事件が題材であることには気づいていましたが、判決の内容自体はあまり学習していなかったため、なんとなく事案を把握しているのみで、具体的な根拠条文まではチェックしていませんでした。そのため、その場で条文を読み、「これだ」と思ったものを指摘しましたが、容リ法11条2項2号ロは指摘できていない気がします。もっとも、「ライフ事件については学習していると考えられるが、訴訟において問題とされた根拠規定について把握できていない者が少なくなかった。」(採点実感)とあるので、あまり差はついていないと思われます。

(3)出題趣旨の想定どおり【資料】の要約を記述しました。このあたりから時間制限との戦いになっているのではないでしょうか。

(4)基本的な条文操作を問われている問題で、出題趣旨どおり条文を挙げ、措置について説明しました。


※今後も必要があれば少しずつ追記していくつもりです。

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