【読切小説】ほのかに流れ込む慕情〜中央分離帯にて〜
ここの信号は長い。
待ち時間も長いし、物理的距離も長い。
しかし、渡れる時間は短いという不条理な信号だ。
私はゆったりと周りを見渡しながら歩くのが好きだ。
今日はその信号もうっかりゆったり渡っていたら、
まだ半分も渡っていないのにもう信号が点滅し始めた。
あっ。焦らされるのいやだなあ。
小走りで真ん中のシマまで移動する。
シマ、といってもそれは私や私の周りがそう言っているだけで本当の名前は知らないのだが、信号の物理的距離が長く、かつ渡れる時間の短い信号にはよくある場所