今日も ⑴

「いつもありがと」
今日も  そう言って通話を切る。
日付が変わる前、いつもより少し早い時間に通話終了の画面が表示された。

社会人になって、忙しい毎日が続く中で
僕の楽しみの1つは間違いなくこの時間。彼女と通話しながらゲームをする時間である。

あ、いやいや
彼女という言い方をしたが、一般的に女性を示唆する意味で話しただけで、
私の「彼女」という訳ではない。

この通話相手の女性、
私が尊敬すると共にずっと憧れ続けている女性は、私の先輩 であり、友達 であり、
過去に振られた相手 なのだ。

先輩は少し人見知りするところのある優しい人で、
自分の芯を持っている真っ直ぐな人。
興味のあるないがはっきりしていて興味なければすぐ忘れてしまう。が、
仲良くなる程、自然体で心から楽しそうに接してくれる。

私は4年前、先輩に振られた日からずっと
惹かれた気持ちを捨てきれないまま、自分でもみっともないくらい必死に、でも態度には出さないように、友達のふりをして関係を繋いでいる。

さっき通話を切る前に、少しだけ世間話をした。

明日、先輩はなんか予定あるの?
「旅行に行ってくる!」
そっか。車でいくの?
「多分ね〜」
多分なんだ笑

誰と?  とは聞かなかった。
聞かなくても分かるから。

楽しんできてね。
「うん、ありがと〜 お土産は任せろ!」

そんな話をしたわけだ。
今日も、楽しかった。楽しそうにしてくれていた。だから明日からも、
僕は僕を抑えて、楽しい友達を演じつづける。

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