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今日も (2)

先輩への告白というのは人生ではじめての経験だった。今の私も経験豊富とはいえないが、
当時の僕は今よりもっと初心で。
先輩を呼び出して告白だなんて勇気はなかった。

たまたま友達に誘われて入ったバンドのサークル。同じ楽器で、私の好きなバンドのコピー弾いていたのが先輩だった。
一目惚れとかはするタイプではないから、最初は本当に純粋に。アドバイスが欲しくて連絡先を聞いた。

あっという間。
2ヶ月もすれば、確信めくほどに想いは強くなっていた。当時、(勿論今もだが)自分のチョロさには笑ってしまった。

会って伝えた方が、届きやすいことは僕でも分かった。けれど異性の先輩を呼び出すタイミング、授業も違うのにいつがいいのかも分からず悶々とし
結局
僕は耐えきれず電話をかけた。

「ごめんね。後輩としては好きだよ。」

優しい声だった。他にも沢山の言葉を掛けてくれていたが、4年も前のこと。私の心に明確に残ってるのはこの一言。

直接話していれば、もう少し時間をかけて距離を縮めていれば、違っただろうか。
と妄想してしまう。
過ぎた可能性に意味の無い期待をしてしまう。

けれど私は、僕が知らなかったことを知っている。

先輩の隣に、今もずっと大切にしている人が
僕と出会う前からいたことを。
言わないでくれた事実を。優しい嘘を。
知っている。

その僕に向けてくれた優しさに
私は気づかないふりをする。
話にも出さず、忘れ去ったふりを。

今日も。する。

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