【帰省時の思い出(その2)】

 私が卒業しました大学は、四国の香川県にありました。

 自宅は神奈川県の鎌倉市です。家から大学に行くには、最寄りの駅からモノレールに乗り、大船に出、大船から東京に。東京からは新幹線で岡山に出、岡山から宇野線で宇野まで行き、そこからはまだ瀬戸大橋が完成していない時代でしたので、宇高連絡船で宇野から高松に出、高松から土讃線で大学のある最寄りの駅に到着し、やっと下宿に着きます。

 自宅を朝の八時に出、下宿に到着するのが夕方の五時ですから、九時間ぐらい掛かりました。

 また、空路の飛行機では、自宅から五時間ぐらいで下宿まで着きます。私は時間が短縮できるので、もっぱら飛行機を利用してました。

 でも、電車での帰省も色々と思い出はあります。いくつかご紹介します。

 広島県の友人と帰省した時は、多度津港からフェリーで福山に出、福山から新幹線で東京に出るとと言うルートでした。その時の思い出は、多度津駅から多度津港まで十五分ぐらい掛かり、また、雨も降り出して来て大変な思いをしました。ただ、フェリーに乗り込むと、フェリーには畳スペースがあり、そこで横になれ、多度津駅から多度津港まで歩いた疲れが取れました。

 大学に入り、どのようにしたら時間を効率的に使えるかと思い、時刻表で色々と帰省ルートを調べ、それを実行してみました。

 時刻表を見ると、夜中の二時半に下宿からの最寄の駅に出る列車があり、これですと、東京に着くのが十時で、その日を有効に利用できると思い、一度だけこの時間で帰省しました。

 午前二時半に出発する列車に乗り込むと、真夜中であるにも関わらず意外と乗客が多く驚きました。高松駅からフェリーに乗り込むときにスキンヘッドで赤いスラックスを履き、他の乗客とは少し異なる雰囲気を感じる男性を見かけました。

 宇野駅から岡山駅に向かう宇高線は、昼間は快速で四十五分で岡山駅に到着しますが、四時台の電車は普通電車で一時間以上も掛かりました。

 岡山駅に到着したのが五時半頃。私は六時の新幹線を予約していたので、その新幹線に乗り込みました。乗り込むとじきに朝日が上り、窓ガラスを通して私を照らします。私はウォークマンをカバンから取り出し、松山千春を聴きながら車窓からの風景を眺めました。

 車中二時間うとうとできたのでしょうか。いつもよりも岡山駅から東京駅までの所要時間が短く感じられました。

 東京駅に着きホームに降りると、隣の車両の扉からフェリーで見かけた赤いスラックスの男性と一緒に二人の男性も一緒に降りて来ました。彼をよく見ると、手には手錠が嵌められており、護送中だったのです。私は真夜中の列車には、訳ありの人が乗り込んでいるんだなぁと思いました。

 帰省のルートとしてもう一つありました。それは寝台特急での帰省です。寝台特急は宇野駅から出ており、寝台特急は新幹線の乗車券よりも高かったです。

 宇野駅に着き、ホームに向かう階段を降りようとすると、ホームにもうすでに寝台特急が停車していました。私は大急ぎで階段を降り、寝台特急に乗り込みホッとしていると、発車のベルが鳴り出し、寝台特急はゆっくりと走り出しました。私はしばらく車窓からの風景を眺めてましたが、眠くなり、ベッドに横になりました。

 以前、よく寝台特急を利用する方から「寝台特急は揺れませんよ。それで夜は眠れますよ」と聞かされたことがありました。

 しかし、実際に乗ってみると、少し揺れ私は寝られず、停車したので、閉めたカーテンを開けてホームの掲示板を見ると大阪と書いており、また横になりましたが、眠れず再び列車が停車したので、窓のカーテンを開けると京都でした。

 それから、横になるものの眠れず、腕時計を見ると三時でした。でも、少しは眠れたのか目が覚めた時には、あたりは明るくなっており、腕時計の針は六時を指していました。私が降りる横浜駅到着は六時四十五分。六時だったら、もう車窓から見える風景もいつも見かける風景だと思い、通路側にあったイスに座り、眺めるものの見覚えのある風景ではありません。しばらくすると、「昨夜の地震でこの列車は、現在静岡付近を通過しております」と。

 それで、車窓から目に入る風景が見覚えのない風景であることが分かりました。列車は徐行運転で、一時停車することもありました。しばらく経過すると、またアナウンスがあり、「通勤時間なので、通勤列車を先に通しております。各停車時間は・・・」と流れ、横浜駅に到着するのは十時とのことでした。

 このことを知り、もしかしたら、寝られた時間は地震で列車が停車していた間だったのかなぁと思いました。
 三時間以上も遅延したので、最寄りの駅で払い戻しの手続きを取りました。

 自宅から下宿まで遠距離であったので、前回の文章を含め、多くの思い出ができました。
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