「ツラくないけどちょっとツラい、続けるとツラくなくなる運動」
今年から、住んでいる地域の高齢者を対象とした健康運動プログラムの講師としてインストラクターを務めている。小学校の空き教室を利用して地域の高齢者有志が集まり、僕の提供する運動プログラムを実践。僕は町からの補助金を受け取り、高齢者の健康増進(寝たきり予防→医療費削減)を図るというもの。こういう試みは全国各地で行われているらしい。国や地域も高齢化社会と医療費削減に対し、真面目に考えているのだろう。
僕以外にもストレッチトレーナー、ヨガのインストラクター、フラダンス講師など様々な肩書の人が講師を務めている。僕は月一回担当。
お試し開催を入れると5回行っているが、始めは数人だった参加者が教室いっぱいになってきた。僕は自宅で一人でもできる、道具を使わないエクササイズを提供している。参加者は自宅でちょっとした時間に僕に教わった運動をやる。月に1度のレッスンは、自宅で週に1度やるだけで効果が4倍になる。自宅で完璧に再現しなくてもいい、思い出した動作をテレビ見ながらちょっとやるだけでも効果ありますよ。と言っていたら実践してくれた人も多く、参加者の体力がどんどん増強してきた。
僕は鍼灸マッサージの実費往診で、治療と並行して患者さんに足りない筋肉を補う運動療法も行っている。運動は、適度な刺激でケガ無く継続できれば必ず筋肉増強効果が得られる。筋肉が増えれば身体の安定性が向上し、血液の循環が改善してホルモンバランスや自律神経が整う。
短期的な痛みの除去には鍼灸マッサージが効くが、長期的な「痛みの出にくい体」を作るためには、バランスの良い筋肉トレーニングの方が効果的だと思う。
そんなことを何気なく呟いたら、多くの人に共感してもらえた。
体力の低下を感じ、運動の必要性はわかるが運動が苦手だし嫌いという人はかなり多いのだろう。僕もランニング始める前は同じだった。
本当は最も手っ取り早く、コスパもタイパも良くて結果が出るのは、軽いランニングだ。それは今でも確信している。ただ世の中にはどうしても走りたくないという人が多い。体調やケガで走ることが不可能な人もいる。
そんな人にどうやったら無理のない、安全でツラくないけど継続すれば効果が出る運動を提案できるだろうと考えたら、「高齢者用の運動で、いいんじゃない?」と思いついた。
上記のポストは、高齢者用の介護予防運動で行っている最も基本的な動作の一例だ。実際にこの運動を含むプログラムで筋力が増強し、立ち姿勢が良くなり、歩行が安定したり、階段の上り下りが楽になった人が多数いる。ジャンプができるようになったと得意げに披露してくれた人もいた(危ないので急いで止めた)。これは僕の講座に参加してくれる人に毎回アナウンスするのだが、別にすべての動作を覚えなくてもいい。気に入ったエクササイズを2つか3つ持ち帰って、家で空いてる時間に適当にやればいい。うろ覚えでも構わない。正しい動きを追及するほど求めるレベルは高くない。ただし、息がちょっと切れる程度までやってほしい。
「息がちょっと切れる程度」だ。そこが大事。
「息も絶え絶え」になるほどの運動はやりすぎ。初心者には早い。翌日に疲れが残りすぎると、運動が嫌になって継続できなくなってしまう。
息がまったく切れないのは、弱すぎて逆にやる気が出なくなる。ちょっと息が切れるところをストップゾーンに設定しておくと、だんだん息が切れにくくなる。毎回息が切れるポイントまでやることで、結果的にエクササイズの回数が増えていく。徐々に体力がついてきたことを実感できる。
こういう自己の体力に合わせた運動強度の設定は意外と難しい。
みんなやり過ぎてしまうのだ。やる気があるのはいいけど、ちょっと物足りないくらいで十分。そのかわり、明日もやる。来週も、数か月先もやる。
小さな積み重ねで、大きな成果を得る。なにごともこれが一番効果的だ。
先のポストでは最も単純で基礎的な動作を3つ紹介した。それぞれ太ももの筋肉、股関節と腰回りの筋肉、肩甲骨周辺の筋肉を鍛える効果がある。この三か所が最も運動不足を感じやすい、つまり老化が現れやすいポイントなのだ。
運動1、太ももの前を鍛える
最初にやってほしいのはこの太ももを鍛える運動。太ももだけではなく、腹筋やお尻を引き締める効果もある。
ポイントは図の★印にあるように、急いでドタドタやらないこと。ドタドタ音を立てると、膝などに余計な衝撃が加わり、ケガにつながる。騒音問題にもつながる。回数をこなすことが目的ではないので、5回とかでも息が切れたら終了でいい。
図ではベッドで寝て行うようになっているが、「寝てやるスペースがない」というコメントもあった。そういう人は座ってやるのもアリだ。
椅子に座った状態で、椅子と同じ高さかそれよりも低い(低いほど運動は楽になるが筋肉増強効果が落ちる。その辺は自分の体力、筋力と相談。)足場に足を乗せる。乗せた足を床に降ろす。それを繰り返す。
寝て行うバージョンと両方やってみるとわかるが、座るタイプの方が優しい。つまり効果は薄く、体の弱い人向けだ。
座ってやるスペースがないという人は(どうやって暮らしているか聞いてみたいが)立って行うことも可能だ。
立ち姿勢から足を膝の高さくらいまで上げ、前の足場に静かに降ろす。また足を持ち上げ、床に降ろす、この繰り返し。ドタドタ急いでやらないのは同じ。この場合、ふらついて転ばないように気をつけて欲しい。冗談ではなく、我々運動不足の民は片足立ちでのバランス感覚が失われている者も多い。やってみたらおもったよりフラついて驚く人もいるだろう。
太ももは大きな筋肉なので、動かすと多くの酸素を必要とする。普段運動をしていない人は、体全体に蓄えられている酸素の総量が少ないため、大きな筋肉を少し動かすだけで息が切れてしまう。なので、この運動は自分がどの程度運動不足なのか推し量るのに適している。
何回くらいできただろうか、15回?20回?50回?何回でも別にいい。競争しているわけではない。目安として覚えておいて、次回やる時にその数を基準にして続けてみて欲しい。
運動2、肩甲骨周辺を鍛える
次は肩甲骨の運動。肩こりの悩みを抱えている人は多いと思うが、一般の人が感じる肩こりは、ほとんどの場合肩甲骨周囲の筋肉が十分に動いていないことが原因で起きる。肩甲骨は背中のかなりの部分を覆う大きな骨であり、肩甲骨にくっついている筋肉はとても多い。
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