『クーデター』 午後ローを予習する。

 九月に入って一発目の作品は『クーデター』。二〇一五年の作品。未見。
 主演はオーウェン・ウィルソン。『シャンハイ・ヌーン』や『ナイトミュージアム』シリーズでコミカルなイメージが強いが本作は暴徒に襲われながらも家族を守る父親役と、けっこうシリアス。
 共演のピアース・ブロスナンも、従来の軽妙洒脱な雰囲気を抑えて、かなり男臭い役を演じているように見える。

 東南アジアの某国に赴任してきた主人公一家だが、到着して早々に国内ではクーデターが勃発。反政府組織は、外国人の排斥活動も行っていた。標的となった主人公は家族を守り、国外に脱出できるのか、という話。
 某国とにごしてはいるが、予告の映像を見ると、タイを想定しているものと思われる。暴徒と化した民衆が揃いの赤のスカーフなどを着用している様を見るに、反独裁民主戦線を意識しているのか。
 また過激な外国人排斥運動などは、義和団の乱なども思い起こさせる。もちろん、あくまで架空の某国の話である。異国の地で、外国人として暴徒に囲まれる恐怖そのものが、この映画のメインだろう。
 昔は、といってもかなり昔だが日本でも黒船来航の後に、国内の政治方針を二分していた時期がある。外国人排斥運動も盛んで、生麦事件など外国人への襲撃もたびたび起こっていた。当時赴任してきた外交官らは、刀を差している侍と道ですれ違うたびに、びくびくしていたという。
 その逆にアメリカでは、一九二四年のジョンソン=リード法における日本人移民排斥や、黄禍論といった人種差別思想が広まっていた時期もある。
 こういった問題は、どの国も、どの人種も抱えていることなのだろう。とりたてて一方を批判するわけにはいかない。解決するかどうかは別として時間が流れれば、自然と融解するだろうと思う。長い時間をかけて、あらゆる人種が入り乱れ、明確な人種という分類が意味をなさなくなれば、過去にあった問題として片付けられるのではないかと、楽観的に思っている。
 ものすごい先の話になるとは思うけど。

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