『SAFE/セイフ』 午後ローを予習する。

 さて本日の午後ローは『SAFE/セイフ』ですよ。男塾筆頭ジェイソン・ステイサム主演の二〇一二年のアクション映画。
 元刑事の主人公は、八百長試合で日銭を稼ぐ格闘家となっていた。ところがある日、ブック破りの末、妻をロシアンマフィアに殺害されてしまう。ホームレスとなるも、マフィアのしつような嫌がらせは続き、ついに自殺を考えるが、その時、追われている少女と出会う。彼女はチャイニーズマフィアに誘拐され、人間コンピューターとして利用されていた数学の天才少女だった。重要な暗号を記憶した彼女は、敵対するロシアンマフィアに拉致されるも、汚職警官らが介入した隙をついて逃亡していたところだったのだ。主人公は少女を救い、ロシアンマフィア、チャイニーズマフィア、それらとつながる警官らを相手に逃走劇を繰り広げる。いいね。
 マフィア同士の抗争の中に、両陣営とつながる汚職警官らの存在が入り、複雑な三つ巴のような状況になるのが面白いところ。カット割りなどのテンポがよく、単調になりがちな序盤の状況説明も、時系列を入れ替えたりするなどして飽きさせない工夫がされている。
 『ブレードランナー』『地獄のヒーロー』『ゴースト・ハンターズ』『ゴールデン・チャイルド』などでおなじみのジェームズ・ホンがチャイニーズマフィアのボスとして出ている。
 他にも『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』でブラックボルト役を演じていたアンソン・マウント。『狼たちの午後』のクリス・サランドンといった俳優の名前が目を引く。
 話は変わるが、映画の中のマフィアの姿は、その時代とともに変化している。アメリカ移民当初からしばらくは、アイルランド系ギャングが幅を利かせていたそうだけれど、その後、ユダヤ人系ギャング、イタリア系のマフィアが禁酒法時代に勢力を伸ばす。そのあたりの状況は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アンタッチャブル』といった映画で描かれていたが、現在では、おそらくその影響力も弱まっているのだろう。『ゴースト・ドッグ』や『ソプラノズ』では、すっかり斜陽産業となった姿が反映されている。
 八〇年代後半から九〇年代にかけては、中国系マフィアや、日本のヤクザなども映画の中に頻繁に登場するようになった。『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』とか『リトルトウキョー殺人課』などが代表的なものだろうか。あ、いや『ブラック・レイン』の方が適切ですね。
 ここ最近だと悪役のギャング、マフィアといえば、ロシア系かヒスパニック系を、よく見かけるように思える。
 今後も、アメリカ国内の状況を反映し、その姿は変わっていくのだろう。
 

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