『ジャッカルの日』 午後ローを予習する。

 本日の午後ローは名作『ジャッカルの日』である。一九七三年の作品。
 原作は、フレデリック・フォーサイスの同名超ベストセラー。実際の暗殺者、テロリストらが愛読していたことでも有名なサスペンス小説である。
 監督はフレッド・ジンネマン、主演はエドワード・フォックスとミシェル・ロンズデール。ふたりがそれぞれ、正体不明の暗殺者ジャッカルとフランス警察の警視に扮し、フランス、パリを舞台に頭脳戦を繰り広げる。
 本作は実在の人物である第十八代フランス大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺事件を取り扱ったフィクションだが、当時のフランス、国際情勢などを予習しておくとより楽しめることだろうと思う。
 第二次世界大戦終了後、列強各国の弱体化と植民地政策の転換、その支配地域で起こった民族自決運動の拡大などにより、帝国主義は限界を迎えていた。北アフリカのフランス領アルジェリアでも反仏抵抗運動が激化、一九五四年にアルジェリア戦争へと発展する。フランス国内でもアルジェリアの独立をめぐって支持派と反対派とに分裂。一九五八年には反対派によるクーデターで第四共和政政府は崩壊同然に。その後、軍人らにとって影響力の強い、先の大戦の英雄シャルル・ド・ゴールが首相に就任し第五共和政が発足。これが反対派の後押しになるかと思われたが、期待に反して、あっさりと独立を承認してしまう。
 一方、過激化する反対派は、OASと呼ばれる秘密組織を結成。テロリズムによる独立反対運動を続けていた。しかし一九六二年のド・ゴール暗殺が失敗に終わると、フランス警察や政府情報機関の捜査により組織メンバーの身元が次々と判明していく。彼らは逮捕の手を逃れ国外へ脱出し細々と活動を続けることになった。
 ここまでが前置きであり、ようやくここから作品世界の話へとつながる。組織のメンバーが割れてしまったOASは、政府にまだ知られていない外部の殺し屋を雇い、ふたたびド・ゴール暗殺を企てる。そこで雇われたのが、ジャッカルというわけである。
 
 ところでこのド・ゴールさん、実際に暗殺されかかったことが、かなりの回数あるらしく、それでも生き延びて七十九歳での大往生ということで、すごいことだなあと思う。あ、これってネタバレになるんですかね。ならないか。
 
 本作の及ぼした、その後の同ジャンル映画への影響はかなり大きいと思われる。組立式のスナイパーライフルとか偽造パスポートとか。
 ちなみに本作は一九九七年、ブルース・ウィリス、リチャード・ギア主演で『ジャッカル』のタイトルでリメイクされている。舞台はアメリカになり、細身のライフルはバカでかい重機関銃になった。つまりほとんど別物である。映画としての評価はさておき、ジャック・ブラックが重機関銃で射殺されるシーンはかなり有名だと思う。
 
 まったく関係ないけど、漫画家の荒木飛呂彦氏が本作のタイトルを『ジャッカルの目』と勘違いしていたというエピソードが記憶にあるのだけど、これって本当の記憶なのだろうか。不安。

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