『誰かいて、誰もいない』 #2000字のホラー
叫び声で目が覚めた。
時計を見ると深夜の四時。冬のこの時間は、まだ暗い。僕の家は、築半世紀ほどの狭小住宅が密集する一画にある。住人らの高齢化も進み、徐々に空き家も増えている。その血管のように細く入り組んだ通りに、甲高い叫びがまた響く。
「助けてえ! 助けてよお!」
訛りを含んだ叫び声の主は、道を挟んだ向かいに住むSさんだ。彼女は、たしかもう八十歳をこしていたはず。息子さんは二十年ほど前に家を出て音信不通だという。その後すぐ旦那さんに先立たれ、以来ずっとひとり暮らしだ。数