vol.3「二次性徴へのまなざし」

 今回はコロナウィルス感染拡大防止のため、zoomでのオンライン開催でした。もっくん珈琲オーナーのもっくん(川村葉月さん)にホスト役をお願いし、話題提供は前回から参加の大学院生田邉大樹さんがつとめてくれました。田邉さんがまとめてくれた資料も画面で共有でき、参加者の皆さんが回覧ではなく同時に資料を参照しつつ語り合えるというのが、非常に便利でした。

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(写真:我が家のモニター画面はこんな感じでした)

 今回はもっくん、田邉さん、私も含めて5人での語り合いとなりました。写真にもあるコミックをはじめ、二次性徴にともなう体の変化、心の戸惑いや違和感、周囲の大人の言動が描かれた作品、男性・女性の身体感覚や表現にまつわるいくつかの書籍を田邉さんが紹介、解説し、参加者皆さんが自身の体験や考え、思いを語り合いました。

 田邉さんからは、男性としてご自身が感じてきたこともざっくばらんに語ってもらい、他の女性参加者にとってはとても貴重な機会となったように思います。また、男子の二次性徴について描かれている作品の乏しさについても田邉さんから報告があり、改めて男の子へのケアも大切にしていきたいな…と感じました。

 かつて「女子」だった皆さんからは、自身の二次性徴の時のことが色々と語られ、その中には「薄気味悪かった」というような表現もありました。男子は身体の変化に悩むより、湧き上がる欲求の対処の方に意識が向きやすいのだそうですが(だからこそ、欲求について周囲はポジティブに受け止めることが大事!)、女子は体型の変化や初経の発来のように具体的な対処が必須な出来事によって社会的にも生理的にも翻弄されやすいのでしょう。

 小学4年生の保健で二次性徴を学習するタイミングで、私が外部講師として子どもたちにお話しする機会があるのですが、そこでよく質問されるのが「身長」のことだったりします(特に男子)。いつ伸びるのか、どのくらい伸びるのか、どうしたら伸びるのか…。どうしたら、はさておき、いつとかどのくらいとかに関しては、大人になって成長が一段落してみないと結局のところは分かりません。
 思い描いている未来の理想像と、現在現実の自分とのギャップに不安がふくらんでいくのは成長であっても性徴であっても同じで、何が違うかというと、成長に関しては周囲の大人は手放しで祝福するけれど(とはいえ、体重に関しては過剰に眉をひそめる人もいるかもしれません)、性徴についてはそう単純なまなざしではないということです。
  二次性徴について考える時、私はよく「蛹」をイメージします。生殖活動が可能な成虫になる前の変容段階ですが、実際に蛹を解剖すると中はどろどろに溶けたような状態になっているそうです(溶けているように見えるのは、主に筋肉の組織だとか)。つい擬人化して考えてしまうのは悪い癖だと思うのですが、果たして幼虫は成虫になった己の姿をイメージしながら蛹になるのだろうか、未知への不安を抱えながらその生命プログラムを受け容れる(しかない)のだろうか、と想像を巡らせてしまいます。
 成虫―大人になってしまえば、その体は「未知」ではなくなり、生殖活動にまつわる様々な事象、その美醜を見聞きするようになると、子どもたちの性徴に向けるまなざしが時に無神経な、時に複雑な成分を含んでしまうのは仕方ないことかもしれません。だからこそ、かつて自分が感じた得体のしれない不安や怖れ、戸惑いといった感情を振り返っておくことは、この時期の子どもたちを見守る大人には必要なワークかもしれないと感じました。

 私自身はたくましい筋骨隆々の男でも、か弱いゴスロリが似合いの女でも、どちらかに振り切れた存在に憧れていて(ステレオタイプな性をまとえば、いずれかのコミュニティに馴染んで楽に生きられると思っていた)、どちらにもなれそうにない自分が嫌で思春期はいつも他の誰かになりたかった。生物学的に女性であること自体は高校生の頃に受け容れられたけれども、容姿は好きになれずなんでこんな体なのかとうらめしかったのです。
 ただ、そういった負の感情さえもブースターとしなければ、自分の人生へと乗り出せなかった過去を振り返ると、生涯に一度しか経験できないこの変容の段階を、豊かな喜怒哀楽とともに味わうしかないのだろうと思うのです。様々な個性を生きる人々の間で。


 今回のお茶会のサブタイトルは、「今振り返って考える、オトナの振る舞い」というものでしたが、私が娘たちにいかに振舞うかというと、自分の性(ここは「さが」と読んでもよいのかも)を生きるオトナの一人としてともに生きる、ということなのかなぁと思いました。田邉さん紹介のコミック「放浪息子」に登場するニューハーフのユキさんのように。

もっくんによるレポートはコチラ(もっくんカフェブログ)。
【レポ】オンラインはぐ♡ラボお茶会@もっくん珈琲Vol.3

次回のお知らせ
 第4回目のテーマは「ゲームの森を語る」。話題提供は、再びもっくん。
前回に引き続きコロナ感染拡大防止のためZoomでのオンライン開催です。お知らせはコチラもご覧ください。

はぐラボお茶会チラシ04


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