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竜とそばかすの姫 雑感

なんで最後の場面ですずを一人で行かせるんだ、という感想が溢れているが、あの場においてはすずだけがあちら側の人間だからではないか。あちら側とは、他人のために無条件で自己を犠牲にできる側。銀河鉄道の夜におけるカムパネルラの側。カントの定言命法を体現する側。自ら素顔を晒して歌うことで母が同じ境地に至っていたことを身をもって知るシーンは実に感動的だと思う。

一方で、そうでない側の人たちが批判的に描かれている訳ではない(むしろ肯定的に描かれている)というのも重要ではないか。他人事のように素顔晒しを提案し、自分は東京についていかないしのぶくんも、駅に送っていっただけのおばちゃんズも、庇護対象というロールを押し付け気味のヒロちゃんも、普段すずの心の支えになったり成長を手助けしたりしている訳ですね。

あるいはUの世界の人たち。ネットの悪意だけはやたらと解像度高く描かれていて「説教臭い」という感想もよく見たが、考えてみれば彼らはあまり反省もしていなければ報いも受けていない。なんならすずの歌に涙を流して合唱していた人たちと地続きであると言える。何の事情も知らないのに調子良い奴らだと言いたくもなるが、そんな彼らによってすずの世界が変わったというのもまた事実。

要するに、そういうことでいいんじゃないか。
だれもがすずの様にはなれないが、それでも世界は良い方向に進みうる。
その上で「あなたはどう生きるか」ということを問いかけてくる映画なのではないだろうか。


というわけでロードショーは見逃したものの話題だったのでBDを見返しました。まぁ正直脚本は大小粗だらけではある…よく見る批判も多くはそう的外れとは思わない。でも俺は好き。

劇場で視聴した際の感想は以下。
@hugi_riさんの伏せ字ツイート | fusetter(ふせったー)

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