見出し画像

「ワガママ魔法使い」製作裏話 #4

翳る魔法

彼と住むようになると魔女は極力魔法を使わなくなった。今まで魔法でやっていた掃除、洗濯、食事など彼に教わり自分の手でやっていた。ついいつもの癖で魔法を使いそうになったが、いずれくる魔法がなくなったときのために自分の手でやると決めたのだ。

その点においては彼はいい先生だった。ありとあらゆることを知っており、自らの手で生活していたのはさすが旅人といったところだろうか。初めてつくったシチューは煮込みすぎて焦がしてしまった。芋の皮むきもできない魔女が初めてむいた芋はもう半分以下の大きさになっていた。

それでもなぜだろう、魔法で作った料理よりもおいしい。焦げたシチューも小さくなった芋も彼と共に自分の手で作ったためであろうかとてもおいしかった。何より彼は「おいしい!」と言って食べてくれたのはいちばん嬉しかった。なんでも食べてしまうので、ちょっと味音痴なのではないかと疑ってはいるけれど。

誰かのために何かをつくるのがこんなに楽しいことだと魔女は初めて知った。人がとてもめんどくさいことをしているとバカらしく見ていたが、今となっては尊敬の念すら抱いた。
だんだん自分でできることも増えてきたので、魔法が弱くなっていることはさして気にならなかった。自分の手でできることが増えてきたのは嬉しかった。もう料理は彼よりも上手になっているのではないかと思っていた。彼にはまだまだと言われていたけれど。

落つる星

ある日見慣れない人が二人のもとにやってきた。初めのうちは追い返していたが、何度も来るので話を聞くことにした。どうやら女王からの手紙を持参した使いのようだ。

手紙の内容は、城の魔法使いや天文学者がどうやら星が落ちてくることを観測し、伝説にある「落つる星」と確認できたのだが、どうするかいい案が浮かばない。伝説によると「星の魔女」が知っている魔法で砕け散ることができると言う。しかし王都には星の魔術を使えるものがいない。「光」の魔女ならば「星」「月」「火」「水」「土」の魔法を全て知る。まさしく彼女が「光」の魔女だった。

そして彼女は言った。
「今、私は人を好きになりました。初めて信頼できる人だと思いました。だからもう魔力は残っておりません。術式を知っていても、魔力がなければ発動しません。どうかお引き取りください。」と。さらに
「もし魔力が残っていたとしても、もう魔法を忘れてしまった人たちのために力を貸すのは嫌です。どれだけのことを私たち魔女にしてきたのかをお忘れてしょうか。」そう言うと彼女の目は少し涙が溢れていた。

どうしようもないと思った使いはがっくり肩を落として帰っていった。
彼がそっと魔女に近寄ると「ごめんなさい、あなたとの世界を守れそうにないわ。」と言う。そうすると彼が「大丈夫、いままでたくさん君からはもらったのだから、何も後悔することないよ。最後までいっしょにいよう。」といった。

二人は星が落ちてこようといつも通りの生活をしようと誓い合っていた。

これ2番の内容なんですけれどやっぱり長いですよね。(^^;)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?