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望郷のプラモデルクロニクル①(1981:前篇)

[1981年/小学校2年生]
1981年5月、兵庫県のとある住宅地に今までには無かった新しい店舗がオープンした。
その名は「ローソン」。
当時は駅前の商店街もスーパーマーケットも開店:朝10時〜閉店:夜8時が普通だった時代。
大阪と神戸といった街に挟まれた決して田舎とは云えないこの住宅地でも、夜に開いている店なんて無く真っ暗で静かだった。
そんな町に突如現れた「コンビニエンスストア」は地域住民の生活を大きく変えた。
開店:朝7時〜閉店:夜11時、さらに食品から雑誌、文房具まで多彩な商品を取り扱っているのだから。

当時、小学生だった自分達にとってこの新しい店は特別な店だった。
それはある商品がメチャクチャに美味いと学校で評判になったから…。
その商品名は「ブリトー」
入荷数が決して多く無いのにも関わらずウチの小学校では爆発的に流行してしまった為、子供達によるブリトー争奪戦が激化。
ブリトーに魅せられた小学生たちが帰宅後に小遣いを持ってローソンに全力ダッシュするというイカレた光景が校区内で展開された。
当時のローソン店長も何故この店だけブリトーがこんなに売り切れるのか意味が分からなかっただろうと思う。

そんなある日、いつものようにブリトー争奪戦に敗れたオレは代わりにアイスでも買おうと店内をブラついていた。
その時あるものが目に止まった。
「アオシマ合体シリーズ」「宇宙戦艦ヤマト」のプラモデル。
100円の値付けがされているそれらの中に少しだけ大きな箱で300円の商品があった。
「ベストメカコレクション 量産型ズゴック」
明らかに悪役のロボットだと分かるのに何故か箱絵にメチャクチャ惹かれた。
ほぼ直感的にブリトーを買う為の小遣い銭と余分に持っていた前月の小遣いの残りを足して、レジに商品を持っていった。
これが自分が人生で最初に買ったプラモデルとなった訳である。

バンダイ 「ベストメカコレクション 水陸両用ズゴック」

公園で友達と遊ぶ約束をドタキャンして家に帰り、早速「ズゴック」を組むことに。
工作用のハサミと付属している台形の袋に入った接着剤を使い説明書に沿ってどんどん組み立てていく。 
…出来た。何か知らんがカッコいい。
ひとしきり眺めてから、箱に記載されている説明文を読む。…「機動戦士ガンダム 」?。
聞いた事あるなと思ったら歳の離れた兄貴の部屋にそのポスターが貼ってあったのに気づいた。
アレの敵ロボットなんだと分かり,同時にそういえばローソンに同じシリーズで足の無いロボットのプラモがもう一つあったなと思い出した。
ズゴックより値段が高くて手が出なかったし、小遣いは使いきってしまったしで、改めて小遣いを貯めてから買いに行こうと決めた。
しかし結局そのプラモ=「ジオング」を自分が買う事は無かった。
何故ならその1ヶ月後にウチの小学校で「ガンダム のプラモ=ガンプラ」が急速に流行りだしたからである。
しかも今回はウチの学区内どころか全国レベルでのブームとなっていた。
全国の小中学生が帰宅後に小遣いを持って販売店に全力ダッシュする。
新たなる大規模なブリトー争奪戦がこの年に始まったのであった。 (つづく)



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