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産婦人科専門医・宋美玄先生に聞いた、「妊婦さんの1分先のリスクとは?」

2児の母として子育てと産婦人科医を両立され、テレビや書籍、WEBメディアなどで情報発信を積極的に行われている“カリスマ産婦人科医”としておなじみの宋 美玄先生。
コロナ禍における妊婦さんの取り巻くリスクや注意すべきことや、これからの過ごし方についてアドバイスをいただきました。
妊婦さんはもちろん、まわりのご家族の方にも知っていただきたい内容ばかりですので、ぜひご一読ください!

宋先生

妊婦さんの1分先とは?

ー 先生はメディア等で「妊婦さんの1分先はわからない」とは発言されていますが、この「妊婦さんの1分先」の真意について教えて下さい。

宋先生(以下、宋):妊娠中は出血、破水、流産などいろいろなことが起こります。また、急に血圧が高くなって、例えば、妊娠性血圧症候などの様々な合併症を発症することがあります。
よく妊婦さんに聞かれるのは、検診では何も問題ないと言われたのに、「急にこうなった」、と。ただ我々も水晶玉で未来が予測できるわけではないので、検診で経過が良好でも、1分後にどういう不測の事態が起こるか、わからないんです。


なので、妊娠中ですが旅行に行きたいです、と言われても、医学的に「まあ、行っても大丈夫」ということは言えないんです。
ですので必ず妊婦さんには、「みなさん今のところは順調だけど、1分後には何が起こるかわからないのが妊娠なんだ」と思って暮らしてください、と伝えています。

妊婦さんがコロナで注意すべきことは

ー 現在のコロナ禍において、改めて妊婦さんが注意すべきことについて教えて下さい。

宋:
今現在のところ、コロナが妊婦中だから重症化しやすいといったことは言われていません。また、コロナになった際の母子感染についても不明な点も多いのですが、今のところ妊婦さんだから重症化のリスクが高いということはないんです。

一方で妊娠初期にかかった場合に、例えば風疹とかのように、赤ちゃんに将来、後遺症というか先天異常が起こるかどうかについても、発生してから間もないウイルスのため、こちらも不明な点があります。

ですので、重症化のリスクは低いのですが、例えば、妊娠するとお腹が大きくなって、肺を押し上げたりして浅い呼吸しかできなくなったりという生理的な変化もありますし、もちろん、かからないに越したことはないですよね。

ただ、その感染予防のために日常生活をどこまで犠牲にするかの程度については、感染予防に完全に振ってしまうと犠牲も多いので、その辺は情報を取り入れながら、妥当な範囲でご自身で選択していただく必要があるかと思います。

妊婦さんへのアドバイス

ーこれから出産を迎える妊婦さんへのアドバイスをお願いします

宋:冒頭に妊婦さんの旅行の話をしましたが、ある雑誌関係者の方に聞くと、経産婦さんを対象にした「赤ちゃんが生まれる前にやっておけば良かったランキング」の1位がいつも旅行なんです。こういう情報は基本的に出産を無事に終えた人が対象だったりします。途中で大変だった人の話はなかなか出てこないから、自分も安心してしまうんですよね。

妊娠中は、本当に1分先に何が起こるかわからない日々を過ごします。出産もなんだかんだいって命がけですし、しかも、それはスタートでしかないんです。そこから子育ての長い道のりが続くじゃないですか。

その間には、本当に自分が想定していないようなことがたくさん起こりうります。楽観的にハッピーな想像、お子さんの明るい未来を思ってるから乗り切れるっていう面もあると思うけれども、やっぱり、理想と現実で辛くなることも十分に想定してほしいです。やはり無理はしないで欲しいですね。

一番伝えたいことがあるとするならば、子供が生まれたらこういうことができなくなるから、今のうちにやっておこうと、あまり思わないでほしい。自分が赤ちゃんをお腹に抱えてて、それは誰も変われないっていうことを忘れないで欲しいですね。子供が産まれるとできなくなることって実はあまりないと思うんですよね。


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