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絵のない絵本⑭ ぼくのきいろいくつ


ぼくのくつはきいろいくつ。

パパがすきないろの、ぼくのきいろいくつ。

パパが「こんどのうんどうかいはこれで、だれにも負けないぞ!」と言って買ってくれた、ぼくのきいろいくつ。

このくつをはいていると、ほんとうにだれにもまけない。

かっこいい、ぼくのきいろいくつ。


このくつがあれば、だれよりもたかく、だれよりもはやく、だれよりも力がつよくなる。

毎日のれんしゅうも、へっちゃらなんだ。

すごいんだ、ぼくのきいろいくつ。


これで明日のうんどうかいは、ぶっちぎりの金メダルまちがいなし!

しっかりみがいて。じゅんびばんたん!ぼくのきいろいくつ。



天気よし!弁当よし!

ぼくのきいろいくつもよし!


きょうは、パパもママもじいちゃんもばあちゃんもあきねえちゃんだって応援してくれている。

たのんだぞ、ぼくのきいろいくつ。


秋の深い青空。

突き刺さる日射し。

汗をぬぐう風。


たいようが傾きかけたころ、ぼくはどろどろの顔でたちつくしていた。

かたっぽうを置き去りにした、ぼくのきいろいくつ。

肩が小刻みに震える。




「負けるんじゃない!」

パパの声…

どれくらいの時間がたったのかわからない。

ぼくは負けない。負けたくない!


たくさんの声のなか、ぼくの耳はちぎれてしまいそうだったけど、ぼくは負けないんだ。




きのうみがいたきいろいくつは、砂だらけ。

でも夕日に照らされて光るんだ、ぼくのきいろいくつ。

きょうだけは金メダルいろのくつ。


パパがくれた、ぼくの金メダル。



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