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トレメンドスサーカス「女性大会議」感想、そして考えたこと

 本題に入る前に私の立場を含んだ自己紹介と見に行った経緯を説明しましょう。
 私は男性で、性自認も男性ですが、いじめを原因とした男性恐怖症に悩まされ、自身の男性性が嫌いです。もちろんそんな性格ですからホモソーシャルもマチズモも憎んで生きています。幼いころから友人は女性しかおらず、今でもほとんどの知り合いが女性です。その影響からか、かわいいものが大好きで、かっこいいと褒められるよりかわいいと言われる方が嬉しかった。
高校生になってから、ロリィタ文化にハマりだし、自分では着ないけれどネットで画像をみたりだとか、文化として勉強したりしています。
こんな感じの17歳高校3年生です。

 今月のはじめ、以前から同じバンドのファンということで連絡を取っていた紫京院瑞姫さんからお誘いいただき、「そういえば今まで演劇を生で見たことなかったなぁ」と思い、講演内容もよく見ず、財布のことも考えず速攻で行くと返事しました。バイト禁止の万年金欠高校生ですのでチケット代は親に借金しています。
 返事をしてから公演ホームページを見ました。タイトル「女性大会議」。大丈夫か?私、男だぞ?アウェーじゃないか?
 ただ、心配しても仕方なかった。行くって言ったから。

 事前に劇団のことはある程度知っておこうと思い、ティックトックで検索すると、舞台の切り抜きが上がっていました。
 強烈なメタルに乗せられた力強い男性嫌悪とフェミニズム。一気に興味を惹かれました。女性差別は実感できないけれど、世間をみると明らかにはびこっている現代、私が目指す映画業界にも往々にして枕営業が行われています。(MeToo運動も海外の映画プロデューサーによる被害から始まったものですし。)女性とか男性とか関係なく差別はなくすべきだと考えて勉強してはいましたが、実際にフェミニストの人と会って話すことがありませんでした。短絡的な思考ではありますが、Twitterに生息する、論理が破綻しあまりに過激で世間から蔑視されているツイフェミと呼ばれる人たちによってもたらされたマイナスイメージがあったのです。
 ただ実際にフェミニズムについて考えている女性と話をしないでフェミニズムを語るなんておこがましい。これはいい機会だと思いわくわくして当日を迎えました。

 遅くなりました。やっと演劇の感想です。

 全編にわたって書くと恐ろしく長くなりそうだし、なにより台本を買い忘れたので抜けや勘違いがあると申し訳ないので、特に記憶に残っているパートについて書いていきます。
 考えながら見ていたので順序がバラバラになっているかもしれませんがご容赦ください。

 まず第一部から。

 世間一般のトイレが「男性用」と「共用」になっていることが多すぎるという旨を嘆いているセリフがありました。盲点でした。男性として普通に使っていましたが確かにあれはおかしい。盗撮などの犯罪の温床になっておかしくない。というかすでになっているでしょう。

 風呂キャン界隈の話がありましたが、私は意地でも風呂に入らないと落ち着かない性格なので共感はできませんが、なぜ風呂キャンするのかの理解はできました。化粧を毎日する文化ってやめた方がいいと思うんですよね。時間も無くなるし肌にも悪い。したい人がすればいいと思います。

 一番記憶に残っているのはアカバネさんの怪談のパートです。父親という存在を家に住みつく妖怪と定義し、怪談に仕立てる。アイデアが優勝過ぎて本当に面白かった。父親に手を出された娘は、トラウマによる防衛本能から父親を忘れたのか、それとも母親の再婚相手で関係値がないのか。その両方もありえるでしょう。正直この設定だけで映画が一本作れると思う。ジョーダン・ピールとかアリアスターが作りそう。

 第一部ではかなり露骨な男性嫌悪があり、自認も肉体も男性の私としては少し苦しいところがありましたが、冷静に考えてみればトレメンドスの方々がそういう作りにするのは当たり前で、性暴力に遭い男性にトラウマを持った人からすればどんな男性も等しく敵で、それは男性恐怖症の私も持っている価値観だなと思い、最初の嫌な気分になっていた自分を心の中で殺しました。

 そして本公演が終わってからおまけのように描かれたラピュタパロディの共同親権問題。
 私は茨城のド田舎在住なのですが、友人にも、背中に龍の入ったDVをしてくる父親から逃げるように離婚した体験をもつ人もいるので、なんでこの法案が可決されたのか全く分からない。

 第一部の内容が第二部で深堀される感覚があったのでもう第二部の感想に移ります。
 トレメンドスの方々がテーマごとに発表していたのでそれぞれひとつづつ感想を言っていきたいと思います。

 まず最初に紫京院瑞姫さんの「私の反性売買」。
 トー横女子などが問題視されるなか、りりちゃんは見せしめ逮捕されてニュースになるのに、買った男性は咎めを受けず、そして買われて受け取ったお金はホストに消えていくという常に消費されていく悪循環が生まれていることを憂いていたのでヘドバンレベルで首を振りながら聞いていました。
 今の世の中でトー横をみんな軽視しすぎだと思う。未成年が家庭を飛び出し、身売りをするなんてあってはいけないのに、世間ではその人たちに「トー横キッズ」と名前を付けることでコミカルな存在にし、現実から目を背けようとしている。いや、もしかしたら江戸のえたひにんのように蔑視できる存在をつくることで安心しているのかも。
 これは終わってからロビーで話していたことですが、性売買に手を出す女性には大きく分けて二種類あると思っていて、本当に性的なことが好きだから仕事にしたい人と、生活に難があるから仕方なくやっている人。
 私は後者のような人を絶対に生みたくはないが、前者の存在も否定できない。だから私は性産業から目を背けず、しっかりと法整備するべきだと思う。働きたいという女性がいたら「なぜ働きたいのか」をしっかりとヒアリングしたり、店にはカウンセラーを常駐させるなど、ルールを決めることが重要なんじゃないかなと思います。

 2つ目が、SEDO さんの「きょうだい間の依存による自他境界の消失、家族とフェミニズムの関連性」。
 やはり感じたのは世間にあるフェミニズム差別。差別が起こる要因の一つに「よく知らない」ということがあると思いますが、フェミニストはその中でも特に顕著だと思います。実際世間のフェミニストのイメージは「ネットにいるやばい人」に前述したツイフェミのせいで固定化されてしまっていると思います。
 確かにトレメンドスさんの演劇の中にも一見過激な論がありましたが、ちゃんと話を聞くと「あぁ、確かに必要だな」と思えるものです。やはりそういった教育の場が必要だと思う。トレメンドスさんには中学校、高校を回って今回のような公演をして欲しい。

 3つ目がアカバネさんの「生活保護受給者の手引き」。
 これはライフハックとして覚えておいて損はない知識だった。市民税カットできるのはデカい。

 4つ目。正直これが一番刺されました。遥香雛さんの「ロリィタファッションから見る女男の経済格差・実害」。
 私は他の記事でも書いていますが、かわいい恰好が大好きで、ロリィタにも憧れを持っていますが、手を出すには至りませんでした。なぜなら、ロリィタは女性のための文化であり、男性である僕がその文化に入るのはいいのだろうか。そしてなにより男性からの防護服でもあるロリィタを男性の私が着るのは違うんじゃないか。そんな考えがあるので傍から見て、文化を勉強しているだけでした。
 ただ、着たいのも事実。この夏に意を決してラフォーレ原宿にロリィタを買いに行こうとしていました。
 そんな私に、雛さんの言葉は、ぐさり、ぐさりと心に刺さりました。
 特に実際の男性客のエピソードを聞いて、「弁えてくれ」と思いました。ロリィタは女性のための文化で、男性が着るのは本来邪道、それでも情けで文化をかじらせてもらっている立場なのに、「ロリィタの女性とつながりたい」なんて考えでロリィタを着るのは、あまりに失礼。何も考えず、勉強もせずにイメージだけでロリィタを着ようとしているのが透けて見えています。キモ過ぎる。
 ロリィタを着ている人には、男性にトラウマを持っている人も往々にしています。だからロリィタをきて男性から身を守る。そんな神聖な服を邪な気持ちで着るなんて汚らしい。そもそも店舗に男性がいることすら望ましくないのに。私もロリィタは好きですが基本ネットでしか見ないし、店舗に入るときも友人の付き添いでしかありません。
 男性市場を開拓したいのなら、男性向けの別レーベルを作るなりしっかりと棲み分けをしなければならないと思いました。

 最後が第六天魔王知乃さんの「トレメンドスの提示するフェミニズムとは何か」。
 この時知乃さんは「ラディカル・ヴィクティム・フェミニズム」を提唱していました。これは性暴力・暴力の被害に遭った女性を基準に考えるフェミニズムです。詳しくは私の言葉よりも公式Xに貼られている文章を読んだ方がいいと思います。そしてかみ砕いて自分の中で考えてみてください。
 日本は被害者に厳しい国だ。と言われていますが、特に性犯罪が軽く見られすぎていると思います。実際、私の友人に、高校で先輩にレイプされたという人がいますが、結局その性犯罪者はそのまま卒業してなんの咎めもうけませんでした。野放しです。
 被害女性を守るため、女性だけの町という制度は必要だと思います。男性にトラウマを持つ女性にとって、その人がどんな思想であろうと等しく敵視している男性なんですから。私も男性恐怖でそのように判断している面もありますし。
 この考えはもっと広まってほしいです。

 質疑応答もはさみながら、全3時間の公演が終了しました。
 この公演、そして終演後のロビーでの会話はめちゃくちゃ楽しかったです。久しぶりに自分の考えをまとめて、他人に話せる機会が生まれました。

 フェミニズムに興味のある方はもちろん、悩める女性もそうでない女性にも来てほしい劇団だなと思いました。
 お読みいただきありがとうございます。

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