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その他、シナリオ話

昔、PC9801版「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」をPCエンジンに移植しました。
村人メッセージまで細かく丁寧に書かれたシナリオで、すごく勉強になりました。

その後、このゲームを海外版にリメイクするという話が持ち上がりました。

しかし、海外版はレギュレーションが厳しいため
「酒」や「奴隷」といった要素をシナリオから外してほしいと
担当のボブさんに言われました。

私はそれを聞いて頭を抱えました。というのも、このゲーム、
「酒」と「奴隷」がメインシナリオに思いっ切り組み込まれているのです。

以下、酒に関する部分をまとめてみます。

・元海賊のボアードは大の酒好き。
・しかし、魔物のせいで酒が手に入らずイライラしている。
・感情的になったボアードが部下を殴る。
・殴られた部下がベッドで寝込んでしまう。
・その後、回復した部下から情報入手。
・ここで得た情報を元に、主人公たちが魔物を倒し、酒場がオープンする。
・「あいつのために酒を買ってやろう」と仲間が助言。
・アイテム「ラム酒」を入手。
・酒を飲んで機嫌が良くなったボアードが、酒と交換で爆弾をくれる。
・手に入れた爆弾で洞窟の岩を爆破し、次のエリアに行けるようになる。

「未成年である主人公が酒を飲むのは確かにまずいですが
成人しているボアードが飲むのは別に良くないですか?」と聞いたところ
「年齢に関係なく、酒を“良い物”として扱っているので
やはりシナリオのほうを変えてほしい」と言われました。

奴隷に関するシナリオは、以下のようになっていました。

・洞窟を抜け、新しいエリアに入ると奴隷商人たちが人身売買をしている。
・少女たちをゴザのような物の上に立たせ、隣で「安いよ安いよ」などと言っている。
・少女たちに話しかけると「助けてください」などと言っている。
・「もう奴隷売買はしなくても良くなったんだ」と商人たちに主人公が伝える。
・ヒロインであるディーナ姫がこの奴隷市場に売られていたが、既に買われた後。
・主人公たちがあとを追う。

シナリオを変えるのは別に良いのですが、あまり大きく変えすぎると
絵やプログラムの追加・修正コストが上がってしまうため
極力シナリオの変更だけでなんとかする……という方針が決まっていたため
悩んだ末、こんな感じにシナリオを変えました。

・元海賊のボアードは心臓病。
・しかし、魔物のせいで薬が手に入らずイライラしている。
・感情的になったボアードが「うっ……!」発作を起こし倒れる。
・ボアードがベッドで寝込んでしまう。
・その後、看病している部下から情報入手。
・ここで得た情報を元に、主人公たちが魔物を倒し、薬屋がオープンする。
・「あいつのために薬を買ってやろう」と仲間が助言。
・アイテム「Nitro」を入手。
・薬を飲んで回復したボアードが、「そいつは爆弾にもなるぜ」と教えてくれる。
・アイテム「Nitro」で洞窟の岩を爆破し、次のエリアに行けるようになる。

・洞窟を抜け、新しいエリアに入ると商人たちが「砂漠のバザー」を開いている。
・少女たちをゴザのような物の上に立たせ、隣で「働け働けぇ」などと言っている。
・少女たちに話しかけると「どうか買ってください」とアイテム売買メニューが開く。
・「もう強制労働させなくても良くなったんだ」と商人たちに主人公が伝える。
・ヒロインであるディーナ姫がここで働かされていたが、メイドとして雇われた後。
・主人公たちがあとを追う。

……今思い返すと、だいぶ強引な辻褄合わせですが、とりあえずプログラム等の修正は最小限で済ますことが出来ましたし、当時担当だったボブさんも喜んでくれたので、まあ良いかなと思っています。


NECビッグローブさんからの依頼で、ギャルゲーのシナリオを書いていた時の話です。

「ツンデレでお願いします」と、ディレクターさんからの指示があったため
自分なりの解釈で、ツンデレの女の子を書いてみたところ
「ちょっとツンツンしすぎなので、もう少しデレてください」と修正指示がありました。「わかりましたー!」と、デレ気味に修正したところ
「今度はデレ過ぎなので、もう少しツンツンさせてください」と言われ
再修正したら「ツンが目立ちすぎるので、ややデレ気味に……」
……と、こんな感じでツンとデレの間を行ったり来たりしながら、
トータルで6回ぐらい書き直したことがあります。

なんか、下手くそな床屋がもみあげのバランスに苦戦しているような感じでした。
それ以来、ツンデレのシナリオを書く時は、ちょっと身構えてしまいます。

その後、ツンデレについていろいろ勉強してみたのですが
調べれば調べるほど、わけがわからなくなってきます。

・最初はツンツンしてるけど、だんだん親密度が上がって、デレデレしてくる。
・みんなといる時はツンツンしてるけど、ふたりっきりになると急にデレる。
・照れ隠しにツンツンした口調で接しているけど、不意にデレた本心が出てしまう。

……こんな感じで、ツンデレの解釈自体にも人によってブレがあるのです。

「いわゆるテンプレ的なツンデレでお願いします」

そう言われて、「べっ、別にあんたのためにやってるんじゃないんだからねっ!」
みたいなテンプレ的な台詞を書いてみたら
「いや、それはさすがにやりすぎですよ!」と怒られたことがありました。
……そうなると、テンプレ的なツンデレって、どんなキャラなのでしょう?

他にも「エヴァンゲリオンのアスカが、ツンデレか? ツンデレじゃないか?」
で論争が起きてしまったり、「ツン→デレ」と「ツン⇔デレ」の違いがあったり、ツンデレの男版が、普段はオラオラでふたりっきりになるとニャンニャンになる「オラニャン」だと今知ったり……

定義が曖昧なワリに、個々に熱いこだわりを持っている人が多いため
正直、ツンデレに関しては要注意なのです。

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