コンバインのスタッツとNFLでの成功率(オフェンス編)

NFLドラフトでは、毎年ドラフト前に、候補選手の身長、体重から足の速さなどの身体能力を測定する、スカウティングコンバインというイベントが開催され、ドラフト候補選手の40ヤード走のタイムなどが話題になる。その一方で、NFLで成功した選手の数値を持ち出し、コンバインなんか関係ないという主張も多くみられ、実際のところどうなのか?と思うのは私だけではないだろう。そこで、NFLの膨大なデータを提供してくれているPro Football Referenceのデータを利用して、ポジションごとにコンバインのスタッツとNFLでの成功率を調べてみることにした。これはコンバインのデータをどの程度真剣に見るべきかという点で参考になるばかりでなく、ドラフト候補のプレーを見る際にどのような身体的特徴が意識すべきかの指標にもなるので非常に有益と考える。

調査方法としては、まずは成功の定義であるが、Pro Football Referenceは独自のAV(Approximate Value)という指標で各選手のNFLでの活躍度合いを数値化してくれている。これを使って、各ポジションで上位20%を成功とみなして、コンバインの成績とNFLでの成功率を計算した。期間はコンバインのデータが入手できる2000年以降とした。今回の対象とするのは身長、体重、40ヤード走、垂直飛び、ベンチプレスとした。時間があればシャトルや3コーンドリルなどについてもやってみたい。

今回はオフェンス編。ただし、QBの上位20%とすると、かなり微妙な選手まで入ってくるので除外させていただいた。

ディフェンス編はこちら

1.RB

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RBの成功率を見ると、まず明らかに傾向があるのは40ヤード。4.6秒を切ると成功率が大幅に上昇し、4.3秒台以下になると40%とかなり高い成功率となる。やはりRBの4.3秒台はアピールになるし、4.7秒を超えるとスピード不足の懸念が強くなる。その他の項目で言えば40ヤードほどでないが垂直飛びも傾向がありそう。

目安:

アピールになる:40ヤード4.3秒台以下、垂直飛び37.5インチ以上

懸念材料:40ヤード4.6秒以上

2.WR

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おそらく、毎年最も盛り上がるのはWRの40ヤード走であるが、実は成功率との関連はかなり薄い。4.5秒台も4.3秒台も成功率に大差はなく、4.6秒を切っていたらあまり心配する必要はなさそう。高さもWRの見せどころの一つなので身長も注目されるがそこまで顕著な傾向は見られない。ただし、体重に関しては少し傾向がありそう。210ポンド以上になると成功率が上がり、180ポンドを切ると下がる傾向が見られている。NFLにWRとして注目されてる時点である程度スピードは満たしているので、その中では体の強さが重要ということと解釈できる。

目安:

アピールになる:体重210ポンド以上

懸念材料:体重180ポンド未満、40ヤード4.6秒以上

3.TE

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WRとは対照的にTEは40ヤードが極めて重要なポジションである。特に4.7秒を境にして成功率が3倍近く変わっている。こちらはWRとは逆にTEである段階でそれなりにサイズはあるので、その中ではスピードが重要になるということで、NFLのTEはパスでの貢献をかなり要求されていることを反映している。それ以外では垂直飛びが35インチ以上、体重が240ポンド未満が上がっているがこれは40ヤードとの相関があるためだと考えられるのであまり気にしていない。

目安

アピールになる、懸念材料:4.7秒切るかどうか

4.OT

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予想以上に傾向がはっきり出たポジション。OTはこれまでドラフトを見てきた中でも最も難しいポジションの1つだと思っている。試合を見ていい動きしてると思った選手がNFLでは話にならなかったり。それだけにコンバインのスタッツが役立つならありがたい。まず、こちらも40ヤードがかなり重要で、5秒を切ると成功率が跳ね上がっている。逆に、5.3秒台になると急激に落ちており、動けることがかなり重要なポジションなのが見て取れる。それ以外でも、身長、体重のサイズ、ベンチプレスも20回以下で悪化、35回以上で向上という傾向があり、身体能力、サイズ、パワーの全てが要求される超人のみがこなせるポジションであると再認識できる。

目安:

アピールになる:40ヤード4秒台、身長6‐6以上、体重330ポンド以上、ベンチプレス35回以上

懸念材料:40ヤード5.3秒以上、体重300ポンド未満、ベンチプレス20回未満

5.OG/C

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大まかな傾向はOTと同じでこちらも40ヤード5秒を切ると成功率が上がっているが、5.3秒以上の悪化傾向はOTほど顕著でない。サイズ的にも300ポンド未満でもそれなりに成功率は高いし、ベンチプレスもOTと比べれば閾値は低そうである。OTほど身体的要求は強くなく、テクニックで乗り切れるチャンスが多いというのは直観とも一致するところだろう。

目安

アピールになる:身長6‐6以上、体重330ポンド以上、40ヤード4秒台、ベンチプレス35回以上

懸念材料:垂直飛び25ポンド未満

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