符亀の「喰べたもの」 20210912~20210918

今週インプットしたものをまとめるnote、第五十二回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。

所用により、日曜日に更新しています。


漫画

ネオ・キャット」 青化

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2本足で歩き社会進出した猫のいる世界を描いた短編集です。

漫画がうまい。まさに漫画がうまい。そういう作品です。

試し読み部分の猫が出てくるシーンがわかりやすい例ですので、説明を失礼します。このページは横長の3コマが縦に並ぶページで、まず1コマ目、猫を中央にドンと載せたコマにより、マッチング相手が猫である驚きを読者にストレートに伝えている。この時、椅子の足と影で視線誘導をしているのも芸が細かいです。そして2コマ目では、このページまでの主人公ポジションのキャラが、表情こそ読めないですが無言により驚いているような雰囲気でアップにされる。しかし既知のキャラ故に情報量が少なく、かつ表情もその乏しさ含めこれまでの描写からの予想とほぼ同じで変に引っかからず、故にマッチングの目印としてその手に持つ「好きなDVD」にも目がいきやすくなっている。そして最後の3コマ目で再び猫のアップを写しながら、わずかにDVDを顔に近づけてそれが同じDVDであること、そしてそれ以外ほぼ1コマ目と同じポーズなことから1コマ目からそれをたずさえていたことにも気づかせる。その瞬間、2コマ目で驚いているように見えたのはその偶然の一致に対してなのかもしれないという再解釈も生じる。たった1ページの中で、そのコマの意味や認識を変化させて多重の味わいを持たせている。

このような技を感じさせるページやコマが、これだけでなく何ページもある点に、本作のすさまじさを感じます。この高い技術が感じられる分、歩く猫のかわいさがそれだけで中身が無いのではという不安抜きに味わえ、結果何も考えなくとも面白く読めます。

余談ですが、以前から何度か出ている「クライマックス感」の要因として、上記の「再解釈」が使えるのではないかと現在考えています。これは、正確には「マスカレード・ホテル(劇場版)」と続編の「マスカレード・ナイト」を見ながら考えていたことなのですが、同じキーワードがここでも出てきて驚いています。こういうとき、noteで思考を整理してよかったなと思いますね。


君のことが大大大大大好きな100人の彼女」(7巻) 中村力斗(原作)、野澤ゆき子(作画)

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イカれたハーレムもの。(第一回の記述より再再利用)

これも他作品で考えていたことなのですが、面白く感じられない作品にありがちなパターンとして、今ストーリーのどの地点にいるのかわからなくなるやつがあると思います。「こいつともう3話戦ってやっと逆転の手が見えたみたいですけど、その一撃与えたところで主人公の目的からすると意味ないのでは?てかもうこの戦い自体なんの意味あるの?」的なやつです。今適当に作った例なのでこの記述の元ネタは探さないでください。

特にラブコメでは(近年そうでないものも増えてきましたが)極力関係性を進展させたくない(話が終わるから)ため、シーンの意味を求めた瞬間に作品に冷めてしまうリスクが高い気がします。ストーリーよりもキャラを見たいので意味を求めないとか、季節イベントや「手をつなぐ」「キスする」とかがストーリー上のターニングポイント代わりになっているとかもそうだと思うのですが、実際変なストーリー要素が入ってきて「ん?」となった経験がある方も多いのではと思います。

前置きが長くなりましたが、この作品では彼女が増える(は?)うえ、基本彼女が増えたあとは今までの彼女(は?)に新彼女(は?)を紹介しつつ絡ませるというお約束の流れがあり、その通過儀礼がストーリーが進んだという印象を与え停滞感を抑えているのではないかと思います。え?本筋これだけ?


制作の山場と私事が重なって読めた冊数は少なかったですが、いい作品に恵まれ今までの考えと連なったキーワードも導け、インプットとしてはなかなかよかったと思います。でもそろそろ積読の数がやばくなってきたので、量も増やしたいところ。


一般書籍

マーケットデザイン」 坂井豊貴

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一般的な経済学における「市場(マーケット)」のようなモノを適切な持ち手にわたらせるためのシステムを、経済学と数学を用いてデザインする方法「マーケットデザイン」を紹介する新書です。

非常に読みやすく、また面白い本でした。私は不勉強で「マーケットデザイン」という単語すら知らず、この本も「市場でいかにうまくやって生き残るか」的な本かと思って購入したのですが、そんな専門外かつ表紙の紹介文4行も読めない人間でも「マーケットデザイン」の雰囲気がざっくりとつかめて興味を持てたので良著だと思います。

書き方の部分でも、数式が出てこないことを連呼して数式アレルギーの方が脱落しないようにしたり、先に結論を述べてから詳細を説明していったりと、わかりやすく多くの読者が理解できるようにという筆者さんの気配りが随所から感じられます。最初一見(たぶん実際にも)無意味なぐらいに詳しく腎臓の説明から始まった際は驚きましたが、読み終わってみるとそんな重箱の隅しか突けるところがないとても読みやすい一冊でした。

巻末に読書案内としてもう少し進んだ教科書を挙げていただいたので、そちらにも手を出してみたいと思っています。


Web記事

今週もないです。

中古住宅で発見された、不気味なビデオテープの正体」とかは面白かったのですが、インプット出来たといえるほどちゃんと分析できませんでした。面目ない。


ようやく制作の山場を越え、またちょうど連休にも入りましたので、しっかりと読書したいと考えています。積読が1割弱崩せたらいいですね。っていう発言で10冊以上の積読があるのがバレますね。

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