符亀の「喰べたもの」 20210418~20210424

今週インプットしたものをまとめるnote、第三十一回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ヒラエスは旅路の果て」(1巻) 鎌谷悠希

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親友の死に絶望し、トラックに轢かれて自殺しようとしていた少女。彼女を助けたのは、不死身の男と死期を悟った神であった。2人が黄泉の国へ行こうとしているのを知った彼女は、親友に会うために彼らに同行しながら、様々な死と向き合っていく。

面白かった。面白かったです。そして十分にその面白さの仕組みが解読できていません。やめたらこのnote?

まず秀逸なのが、最初の1ページ目ですね。こんなにさわやかな「今から死ぬから!」、見たことがありません。この漫画の特異性を表現して読者を惹きつけつつ、暗い話ではないのだろうという安心感も与えてくれます。

そのセリフにあるように、1話において主人公の少女は、ポジティブな死にたがりとでもいうべき狂った存在として描かれています。しかし話が進み、人間目線から見た神さまのズレっぷりが分かるにつれ、少女の描写は等身大な迷いや後悔についてが中心になっていきます。これも上手いところで、ただの人間である主人公が人間らしく死に苦しむからこそ、この作品のテーマが活きています。狂人キャラが2人いてもわけがわからないですし、親友への思い以外は普通だからこそ主人公に共感でき、それでも狂ってしまうほどの親友への思いの強さが強調されています。そういう意味で、不死身で死を人一倍受け止めてきたキャラを最後の一人に据えるのも上手いですね。

本当に2巻が楽しみな作品です。早くもっと話数を読ませてください。そしてサンプル数を増やし、面白さを抽象化しやすくしてください。


戦隊大失格」(1巻) 春場ねぎ

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突如上空に出現した浮遊城。毎週日曜日にはここから怪人が降り立ち、ヒーローと世界征服を賭けた一大決戦がくりひろげられていた。なお怪人の幹部たちは速攻で壊滅させられており、決戦の実態は停戦協定に従ったモブ戦闘員たちのやらせショーであった。

五等分の花嫁」の作者さんの新連載とあって、しっかり面白いです。設定を活かした展開が上手く、毎話しっかり見せ場を作ってくれるのもいいですね。

で、まあ面白さについては多分いろいろ語られてると思うので気になった点を挙げさせてもらいますと、まず時折読みにくい点があるのが気になります。見せ場に使われるフォントの視認性が悪すぎるのも気になりますし、1話冒頭の展開も、先のページを読んで設定を頭に入れて読み直すか一々どういう事情でそんなことが起きているのかを考えて読まないと何を表している描写なのか理解できず、頭に疑問符が浮かびやすいのも欠点です。1話の1話としての完成度、つまり作品の設定の開示やどんでん返しによるヒキなどは十分上手いと思うのでレベルは高いと思うのですが、優等生と評するには基本的なところで抜けが多いなという印象も受けます。

あとはまあ、この巻の最後の展開についてですね。極力配慮はしますがネタバレになるので、未読の方は次の漫画まで飛ばしてください。

最後の展開ですが、設定を活かした造りで非常に面白かったと思います。ですが一番作中で好感度が高かったであろうキャラが消え、正直他のキャラに魅力を感じにくい構成だった分、2巻以降どうすんのという心配の方が強いです。いやマジでどうすんのこれ。

Amazonのレビューは予想外に賛否両論っぽい感じで、一部漫画ではなく戦隊モノとしてみている感じのズレた批判もあるようでしたが、正直低評価のレビューにうなずけるところもあります。読んでいるときは面白いんですが語ろうとするとノイズ部分と2巻以降への不安が邪魔してくる感じで、このnoteにしては珍しい論調のレビューになってしまいました。いや、2巻でうならせてくれると信じていますよ僕は。


転生悪女の黒歴史」(3~5巻) 冬夏アキハル

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先週の続き。面白かったので既刊全巻買いました。ちなみに今月末に最新刊が特装版と通常版合わせて出るそうですよ奥さん。

やはり過去の自分が物語の作者であるという設定が上手く、特に今回読んだ3巻分では「本来はこうなる/ならないはずなのに」という展開が多かったように感じます。この「本来」が提示できるのがこの設定のミソで、そこを主人公と共有できる分、その後の展開にも一層「そうきたか!」と感動できるんですね。バトル漫画によくある「なに!?その技を防げるはずがない!いったいどうやって!?」の気持ちを実際に味わえる、というとよりわかりやすいでしょうか。

ちなみに、その「本来」を「脚本の原作」という形で提示していたのが、私の大好きな「アクタージュ」です。そちらでは演者や脚本役のキャラはこのあとどうなるかを知っていて、裏切られるのは観客役のキャラと読者だけ。一方こちらでは作中の誰も今後の展開を知らず、むしろ中途半端に「本来」を知っているからこそ、主人公がキャラの気持ちを誤解している。似たようなギミックを使いながら、キャラと読者のズレの形(どちらがより情報を持っているか)がほぼ正反対になっているのは面白いですね。

「転生悪女はアクタージュであり、アンチアクタージュである。」そう言うとなんか評論家っぽくてカッコイイ気がするので、私に使用料払ったうえで友達にドヤ顔してみてください。


今日の夜10時から一気に上のやつ全部読んだおかげで、頭痛がするぐらいに脳を酷使してしまいました。ちゃんと頭使ったおかげで転生悪女とアクタージュの関連を導けたのは収穫でしたが、この体調で書いた文でどれほど伝わっているのかは疑問です。こうならないよう、次週はスケジュール管理に気をつけます。



一般書籍

2月か3月からちょいちょい読んでいた本の終わりがようやく見えてきたところで、ふと買ってしまった500ページ弱の本に浮気しまくっています。これが面白いんだ。

というかこいつらに読書時間を奪われまくったせいで漫画が読めていなかったんですよ今週。つまり私悪くないですね。



Web記事

ポケモンカードゲームがなぜ急に大復活ヒットしたのか、考えてみた

2019年末に書かれた、ポケモンカードの復権に関するnoteです。

やってることは正直ポケモンだからできたこと感はありますが、note後半でまとめられた内容は我々の規模感でも取り組めそうなもので、参考にできるのではと思います。


意外と知らない…空前の『ショートショートブーム』が起こっている『これだけの理由』

ショートショートが流行っている理由について、様々な観点から論じた記事です。

読む側への考察も面白いですが、書く側への考察もされており、その内容も納得感のあるものでためになりました。「短文+企画性+時限性」という縛りによって自分でも書けそうな感じを出して他人事感を減らし、それが本としてストックされるかもしれないという夢も用意されている。こういうコンテンツとそのコミュニティの作り方は、私の不得手なところであり勉強になります。


【カービィファイターズ2】コミュニティの力で好きなゲームを一生楽しむ方法【徹底解説】

好きなゲームを遊び続けるためプレイヤーコミュニティを運営している筆者さんによる、コミュニティ運営の利点とやり方に関する記事です。

4章の「ゲームコミュニティを発展させるにはどうするんだい!」の部分がとても面白く、個人でゲームコミュニティを発展させるためのノウハウが詰まっています。私は基本作ったら作りっぱなしなタイプなのですが、1作品を積極的に育てるタイプの作者さんには特にオススメな記事です。


テイエムオペラオーのオペラトークを解析する - ウマ娘考察

今週のウマ娘枠。

やはり情報量と調査量は強いという記事です。こういう細かい小ネタをどうやって消費者さんたちに気づいてもらうかというのが、最近の私の課題の一つです。ちなみに「アマロン」では怪文書を書k…書いていただきました


何故かゲムマ終わった自由だーという感じになっておらず、積読がほぼ崩せていないのが不思議です。来週こそは5000文字越えの長文を叩きつけてやろうと思って早2週間になるのですが、来週こそは5000文字越えの長文を叩きつけてやろうと思います。

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