符亀の「喰べたもの」 20220130~20220205

今週インプットしたものをまとめるnote、第七十二回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

藤本タツキ短編集 22-26」 藤本タツキ

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チェンソーマン」などの作者である藤本タツキ氏の短編集その2です。その1は、第五十五回で紹介しました。三ヶ月連続刊行企画のラストを三ヶ月積読して連続刊行の意味を崩壊させるスタイル。

どの短編も、設定は独創的ではっちゃけているのに読みやすいのがすごいと思いました。その理由を探るために物語の構造を分解しましたが、全4作のうち3作は「○○はAなのか、それともBなのか」の話にまとめられることに気づきました。例えば2本目は、「目が覚めると女の子になっていた主人公は心まで女の子になってしまったのか、それとも男のままなのか」の話だといえます。「目が覚めると女の子になっていた主人公」ってなんだよ。

この二項対立的なAとBの間を揺れ動くのがほとんどの話の大筋であり、その構造がすぐに見えるので「何の話なのか」がわかりやすいです。さらに、その間の移動に緩急がつく、例えば10ページかけてA側に寄っていたのに急にBに移ることで、読者を振り落とさずにダイナミックな展開を作れています。この構造はパクりやすいですし、いいですね。

ただ、私的に一番好きだった「妹の姉」はこの構造ではないんですよね。姉の持つ妹への複雑な感情がテーマなのでわかりやすいというのはあると思いますが、こっちへの分析はまだ不十分です。後日再チャレンジしたいと思います。


天晴爛漫!」(2-3巻(完)) アントンシク(漫画)、APPERRACING (原作)

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19世紀末を舞台に、渡米したメカニックと侍が自動車大陸横断レースに挑む物語です。これも年末に発売されてから一月半積んでました。

ロマン枠の自動車と、アクション枠の銃撃戦が上手くお互いを補い合っていた作品でした。自動車だけでは性能勝負で抜きつ抜かれつができない時代的に絵面が地味になり、銃だけでは各キャラの抱く大義が表現しにくく読者を乗せにくい。この2つが合わさり、自分の意地のために戦う最終決戦のワクワク感がとてもうまく演出されていたと思います。まあちょっとページ足りなかった感じはありましたけども。


株式会社マジルミエ」(1巻) 岩田雪花(原作)、青木裕(作画)

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事前準備と記憶力には自信があるが空回りを続ける就活生の主人公が、ひょうんなことから魔法少女として働きだす物語。

1話を試し読みした時点ではハマりきっていなかったのですが、2話の社長に落とされました。しかし、なぜそこで良さを感じたのか、というよりもそこまでが微妙に感じていた理由は言語化できていません。たぶんその瞬間にこの漫画が「主人公が自分の力を活かして社会人(魔法少女として)成長していく話」だとわかったからだと思うのですが、それは1話でも十分読み取れるはずで、ここでようやくそれが理解できたのかが分析できていません。これを言語化できれば、「どこが面白いのかわかってもらえてると思ってた」みたいな事故をなくせそうなので、もう少し考えたいところです。


分析が不十分な作品もありましたが、紹介したものの倍ぐらいの漫画を読み、一部はちゃんと構造にまで分析ができたのはよかったですね。このまま質のいいインプットと消化を繰り返していきたいです。


一般書籍

久々に読み始めました。今まで途中まで読んでいた本、ではなく新しい新書を。そんなんだから積読減らねえんだよバカ。


Web記事

『ログライン』の重要性

ストーリーを1~2行でまとめた「ログライン」の重要性や、それを活かした作品の作り方についてまとめられたツイート群です。今回のnoteですと、「藤本タツキ短編集 22-26」で考察した内容がまさにその話であり、改めてその重要性を感じました。


4コマ描く

ベルリンは鐘」などの作者であるニャロメロンさんが、4コマの描き方をまとめられた記事です。

4コマのリズムについ解説されているのですが、文章のリズムも緩急が効いていると思います。特に、ブレーキをかけているフレーズの直後に「ここがブレーキですよ!普通はこんなこと書きませんよね!!!!????」と、標識のような文を加えて読者の目を止めているのが上手いと思いました。その「リズム」について補足されたツイートとともに、勉強になりました。


楳図かずおさん 27年ぶりの新作で描いた“人類の未来とは”

楳図かずおさんの27年ぶりの新作制作とその展覧会の開催を受けたインタビュー記事です。

「漫画っていうのはコマが多くて、ある意味『つなぎの芸術』なんですね。でもつなぎだけで終わっちゃって、しょうもない漫画もいっぱいある。ここで何が抜けてるかっていったら、クライマックスなんですね。一方で絵画はクライマックスしかない。だから僕が今回描いたのはつなぎがない、やにわにクライマックスが来ちゃう、連作絵画なんです。」という分析がとても面白く、さすがだと感じました。展覧会にも行かなくてはならないですね。


元JAXAマンの『プラネテス』批判が本当に言いたかったこと

元JAXA職員による「プラネテス」批判を受けた炎上問題について、その正しい経緯をまとめようとされたnoteです。

本人以外が「本当に言いたかったこと」と書いていいのかというのはさておき、ある文脈でまとめられようとしている事件の正しい経緯を再確認する営みは重要だと思いましたので、ここにも挙げさせていただきました。


緊急輸血拒否ー現場では何が起こるのか」(第1ー13)

エホバの証人信者の母を持つ筆者が、その母の危篤と輸血拒否問題についてまとめられたブログです。現在更新中ですが、一区切りがついた13回目までを読みました。

内容の重要性は言うまでもないので、ここでは書き方について少し触れます。このブログは短い記事の連載であり、各回ごとに「得た教訓」としてその内容がまとめられています。このブログの内容のある程度はエホバの証人組織への問題提起ですが、この書き方によって、ただそのためだけに書かれた批判文のような印象を持ちにくくなっていると思います。「『エホバの証人の緊急輸血拒否が起きた場合に現場で何が起こるのか』についての具体的事例に基づく生の情報」としてこの記事を読みたい当事者の方が、より冷静にこのブログを読むための助けになっていると感じました。


ついに大きな山場を抜け、まだ来週か再来週まで気は抜けないものの、ようやく色々とインプットできる状態に戻ってきました。この調子で積読を崩していきたいものです。あとそろそろアルセウスやりたい。


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