符亀の「喰べたもの」 20210411~20210417

今週インプットしたものをまとめるnote、第三十回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ミミズクと夜の王」(1巻) 鈴木ゆう(著/文)、紅玉いづき(企画/原案)

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自らの望む死に方を求めて元奴隷の少女ミミズクが入ったのは、魔物の棲む夜の森。そこで出会った美しい瞳の「夜の王」に自らを食べてほしいと懇願するが、その願いは拒まれてしまう。何度も諦めず夜の王への会合を重ねる少女だったが、いつしかその心には変化が生じていた。

扉絵で世界観、1ページ目で場所と主人公の境遇、そして次の2ページで主人公の特異性の表現と、どんな漫画かを伝えるスピードが素晴らしいです。主人公は死にたがりの奴隷ですが、登場してからずっと笑っているので話が暗くならず、好感も持ちやすいので広い読者層にアプローチできているのがいいですね。そのうえでわかりやすく狂っているので、取って付けたようなポジティブさを感じず、作品に厚みを持たせながらキャラクターの印象を頭に叩き込んでくれる。この冒頭は勉強になります。

時折見える闇のようなサブ要素、少女の変化や夜の王の討伐を狙う騎士団の存在といった長期的な楽しみももれなく用意されており、非常にクオリティの高い作品だと思います。


転生悪女の黒歴史」(1~2巻) 冬夏アキハル

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中学時代、主人公はいつか異世界に転生できると信じ、自分がヒロインの冒険ファンタジーを書いていた。それから10年、普通に働いていた主人公は、その黒歴史の処分をどうするべきかという母親からの電話に気を取られ事故にあってしまう。トラックに轢かれた彼女は、無事自分の黒歴史小説のヒロイン、ではなくその妹に転生していた。プロローグで退場した後処刑されるはずの自分の運命を変えるため、そして萌え展開のために犠牲になるはずだったキャラたちも救うため、諸々のフラグを折るための闘いが始まった。

自分が作った黒歴史の中の話である、という設定の活かし方が上手いです。ぱっと挙げられるだけでも、「ヤバい展開があっても主人公のせいにできるので作話がしやすい」「書いたのが昔なのと死ぬはずだった自分が生きているのとで細部の展開が読めない設定により、アクシデントが作れる」「キャラの役割を主人公が認識している分、それから外れた感情を認識できなくても納得しやすく、鈍感主人公への違和感を覚えにくい」「黒歴史小説の第何話という形でエピソードが区切れる」「萌えやご都合主義の展開でも中学生の黒歴史小説なのでOK」などの利点があり、活用しまくっています。

悪役側に転生するというのも、「死なないようにがんばる」という目的のわかりやすさにつながっており、ただ差別化のためにひねっただけ以上の働きをしてくれています。ここも上手いですね。何気に主人公は展開を知っている以上のチート能力がなく、理想が詰め込まれた他キャラたちの方がチート感あるのも新鮮です。

強いて言えば、「主人公(コノハ)と同名のキャラは別にいて、異世界での主人公の名前はイアナ」という部分はややなれるまで時間がかかり、読みにくい設定になっていた気はします。主人公と同名のキャラは異世界では別人というのは設定的に問題ないと思うのですが、じゃあ誰がこの転生先のキャラなんですかというのは、カタカナの名前が苦手な私には覚えにくかったです。姉妹設定を活かし、コズエとかミキみたいな関連性のある名前だとありがたかったのですが。


強すぎるゲーセン店長のノリコさん

100円で(格ゲーの対戦相手を)ヤレるノリコさんと、彼女に惚れている格ゲーマーのサラリーマンとの物語。

中盤で出てくるキーワードが後半にも生きており、「兼ねる」形になっているのが上手いです。一回目の登場の際にしっかりと役目を果たしているので伏線っぽさもあまりなく、だからこそもう一回出てくるときに思考の外から殴られ、構成の上手さをより強く感じる形になっていると思います。


積読を崩せるほどには体力が回復しておらず、結果なぜか少女漫画回というかLaLa回になっていました。いっそのこと、ちゃんと少女漫画に手を出してみてもいいのかもしれませんね。


一般書籍

アーウン、ヨンデルヨンデル。


Web記事

コロナ失職したおっさんが自作WEBサービスを公開するまで

WEBサービスの概要の出し方がさ、ずるいよ。そこまでとタイトルで「失職したおっさんでも勉強して第二の人生を歩めました」系だと思うじゃないっすか。いや実際もそうなのかもしれませんけど思ってたやつとは違うじゃないっすか。

「ブラウザバックは早計だ。」のあたり、これを完全にわかってやってるのが強いですね。やはりフリだと思わせないネタフリが一番面白いですわ。


『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった、絶え間ない努力――初代担当編集が明かす誕生秘話

「鬼滅の刃」ができるまでに関する、編集さんへのインタビューです。

「みんなが知っている要素を使って新しいものを創り出している」「中心に普通の人を置いて、周りに異常性のあるキャラクターを配置する」など、広い客層にうったえるためのポイントがまとめられており、ブレイクさせるための「陰にあった努力」が述べられている良記事だと思います。


面白さこそ絶対――。『週刊少年ジャンプ』編集者が漫画家の「壁」であり続けるワケ
恋愛の漫画も、恋愛じゃない漫画も、彩り豊かに。編集長・相田聡一が語る『りぼん』の未来
僕らの仕事は、“必”要不急。三谷幸喜が語るエンターテインメントのこれから

上の記事を1月以上タブで開いて放置していたので、せっかくだからと同メディアのインタビュー記事を漁った結果がこちらです。

1本目は、後半の「約束のネバーランド」が連載化されるまでのアプローチに関する部分が特に面白かったです。面白い作品を世に出すための作戦として、勉強になる記事です。

2本目は、今の漫画界に関する編集長さんの考えが随所にちりばめられているのが良さだと思います。もし今後ここにりぼんの作品が挙げられることが増えたら、今日のLaLa回とこの記事の影響です。

3本目は漫画の話ではないですが、エンタメの最前線を走る方のインタビューとして面白かったです。裏話としても、興味深い内容でした。


思ったより読書に時間が割けなかった感はありますが、少女漫画にも積極的に手を出せたりと、好奇心はちゃんと維持できているかなと思います。ここから徐々にインプットペースを上げていきたいところです。

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