符亀の「喰べたもの」 20210725~20210731
今週インプットしたものをまとめるnote、第四十五回です。
各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。
漫画
「かぐや様は告らせたい」(22巻) 赤坂アカ
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積んだねー。(5月中旬の初版発売日か翌日に購入。読んだのは約4時間前。なお次巻は8月19日発売予定。)
この巻はラブコメ巻かつギャグ巻という感じでしたが、やはりこの作者さんのギャグは面白いですね。王道もアホ展開もスカシも下ネタも、スタイルを変えながら畳みかけてくれるので、1冊ほぼ丸々ギャグでも飽きないです。
こうもあの手この手で攻められると「思ってた展開と違う」となってスベる原因になりそうなものですが、本作の打率はとても高く、素晴らしいです。この高い打率の理由として、「1ページ中でメインのギャグは1本に絞る」「他のコマはそのギャグに後乗せする形で笑いを盛るのに徹する」「すごく後乗せしてすごく盛る」を徹底しているのがあると思います。1ページ中に多くの情報を載せすぎないのは漫画の鉄則ですが、他のコマがその後押しをモリモリしてくるので、つい笑わされてしまいます。基礎と力技の勝利。
「レディメイドヒロイン」(1巻) うめだ悠
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57939219/picture_pc_6b152dd3613227cac7864103fff65c4f.png)
(1話末尾のネタバレを含みます。リンク先より1話を試し読みしてからお読みください。)
伸び悩んでいるアパレルデザイナーの佐久間梨央は、上司から社外コンペに参加するよう勧められる。自分のデザインした服を着てくれる人がいる喜びを糧にこの仕事を続けてきた彼女だが、トラウマや自信のなさ、そしてなにより苦手な営業の多田景斗とコンビを組むことになったためにくじけそうになる。そんなとき目の前を通りがかったのは、3年前に自分のデザインした服を着てくれた、そして今もその服を着てくれていた彼女であった。話しかけようと声をかける佐久間だが、なんとその正体は、女装をした多田であった。
「3年前の恩人が女装した同僚でした」というインパクトがありつつも非現実的な設定と、先方の要望や競合他社に予算といった壁の中で奮闘する仕事ものとしてのリアルな戦いとが、いい感じに漫画としての虚構度のバランスを保っていると思います。後者だけですと、正直重いし地味なので。
ただその片輪であった社外コンペ部分がこの巻で終了してしまい、かつ恋愛描写に若干ポリコレ的な危うさ(「女装してる多田君的には、女性の私は恋愛対象外ってこと?」的な煩悶など)もあり、良くも悪くも2巻以降がどうなるか次第という印象は受けます。なのでちゃんと物語が描ききれるまで連載が続いてほしいです。なのに発売後2週間積んでごめんなさい。
「映画大好きポンポさん3」 杉谷庄吾(人間プラモ)
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57942241/picture_pc_c7d5658c9ef01f53f4a90ea7a5c29ff0.png)
「映画大好きポンポさん」シリーズの3本目(スピンオフ含めると6本目)。映画版もよかったですね。
あとがきにもありますように、「2で完結した作品の3作目として、今までのキャラを大集結させた」作品という感じは否めません。ですが、2本分の映画撮影エピソードを同時並行させるというテクニカルな脚本ながら、それぞれの作品中での役割をはっきりさせることで読者が混乱しにくくしている点は流石です。そしてその2本が1点に集まる見開きは、クライマックス感の演出としてこれ以上ない程見事だったと思います。
ただやはりキャラへの説明や魅力の持たせ方が弱く、スピンオフ含め過去作を読んでいるのが前提なところがあるのは不満でした。それも含めて「観客はなにを見るために劇場まで足を運んでくれるの?」「役者だ!!」ということなのかもしれませんが。
「その後のサキュバスさん」 猗笠怜司
人間と結ばれ、40年経ち、セックスレスに悩むサキュバスを描いた読み切りです。
今年読む(読んだ)読み切りで5本の指に入りそうな程刺さりました。すごく好きです。
序盤のギャグパートで感情とアプローチの空回りっぷりを描くことで、後半一人で悩んで暴走してしまうところで「感情の起伏の激しいメンヘラ」的な印象を持ちにくくしているのが上手いですね。こういう、ノイズとなる感情を抱きうるポイントに対してそれが自然なジャンルから移行することで目がいきにくくする手法は、他の娯楽にも応用できそうです。
その他、「あっこれただのコメディじゃねえな」となる22ページではキャラにもそのシーンに驚かせて疑似的に共感させる、すぐに来た感を出したい36ページの前ではコマを詰めつつセリフを無くして読者がページをめくるのを速めるなど、噛むほどに味の出るいい作品でした。新連載も面白く、期待に胸が膨らみます。
修羅場の一山目と奮戦していたため、気づけば新刊を買ってすらいないという事態に陥っていたため急遽積読を崩す回となりました。というかこんな連載をしてるくせに積読をしまくってるのがおかしい。そして反動で2万円分本を買ったのもおかしい。
一般書籍
「ストーリーのつくりかたとひろげかた」 イシイジロウ
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57946307/picture_pc_927cc2fc733a74ef36dfa2bc040a2a74.png)
先々週にご紹介した「IPのつくりかたとひろげかた」の続刊的な本です。ですがそちらを読んでいなくても全く問題はなく、むしろIPに携わっていない非クリエイターの方でもこっちは面白くよめるのではないかという本です。
全体的に面白かったのですが、特に4章後半の、データとデータの間の「残像」でドラマを生むというくだりが非常に興味深く読めました。というのも以前より、ボードゲームでストーリーを体感してもらう、それもマーダーミステリーなどのシナリオを体験するのではなく、その場でいつの間にか生み出されたストーリーを一期一会的に味わってもらうことの可能性について考えていたためです。これは225ページのアドリブ舞台劇について記した「奇跡を生む舞台装置」という表現が近いのですが、その奇跡を演者が生む瞬間を観客として見るのではなく、いつの間にか生じた奇跡をプレイヤーとして解釈するイメージです。
この「解釈する」というのがおそらくミソで、ボードゲームにおいては各処理をプレイヤーが行うので、システムがストーリーっぽいものを生成するようなもの(「奇跡ゲージが溜まったら必殺技山札をめくれるぞ!」的なやつ)だと、与えられたストーリーを体験しているだけに感じてしまうと思っています。しかし、一見ストーリーを作りそうにない処理の結果ドラマが出力されたときに、その「残像」に物語的な意味を「解釈」してもらう。これが私のやりたかったことなのではないかというのが、この本のおかげで言語化できました。
ま、それを実現するのが難しいんですがね。
Web記事
読 め な か っ た 。
文春の光浦さんの記事など面白いものはあったのですが、消化して吸収できたやつはなかったみたいなので今週はこの欄お休みです。むしろ漫画メインなのに44回分数本のWeb記事をだいたい抽象化したうえでオススメしてたのがおかしい。ということにしてください。
修羅場はまだまだ続きますし、なんなら一番ヤバい案件にそろそろかからないといけなくなってきましたが、私は元気です。先週から今週にかけてじわじわメンタルが回復してきた気がするので、たぶん元気です。それか潰れる直前の自分が見えなくなってるやつかです。
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