符亀の「喰べたもの」 20220102~20220108

今週インプットしたものをまとめるnote、第六十八回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

チ。―地球の運動について―」(6巻) 魚豊

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地球を動かす物語。第五十四回以来の登場です。

表紙のキャラ2人の人生が交わった瞬間、そうきたかと口に出してしまいました。この「そうきたか」という感情は、想定外の形を出されながらもそれに不快感がなかった時にだけ抱けるものです。カタルシスは大きいですが、難易度とリスクも相当高い技です。でも、やりたい技です。なので、その感情がどう抱かせられたのかを分析しました。

まず、「想定外」ということは想定をして外さないといけません。私は、この巻収録の話の2話目に出てきたキャラが、それまでの主要キャラの1人が落ちぶれた姿なのかと思いました。まあこの推理は思いっきりはハズレで、twitterで検索しても同じような思い違いをした人が見つからないぐらい外れているので、たぶん作者も想定していなかったのでしょう。ですが、この明らかに私が悪いバカな思い違い、それも次の話で即否定される(そのキャラの過去の姿が出てくるので明確に別人とわかる)勘違いのおかげで、では実際にはどう2人の人生が交わるのだろうかと「正解待ち」状態になり、画として「正解」が提示されたときの衝撃をそのまま直に受け止められました。最初にもっとそれっぽい「想定」をしていたら、それが裏切られたことへの落胆がカタルシスを阻害していたことでしょう。そういう意味では、奇跡的なバカだったと言えそうです。

こうやって考えると、この「そうきたか」を生むためには、観客に「もうバカな私は黙りますね」と「正解」を受け入れる態勢を取らせるのが重要な気がしてきました。そうなると、ボードゲームのような自主的に「正解」を作らないといけないメディアでこれを体験してもらうのは難しそうです。結果は残念ですが、体験から仮説の言語化までたどり着けたのはまあよしとしましょう。漫画もシンプルに超面白かったですし。


トリリオンゲーム」(3巻) 稲垣理一郎(原作)、池上遼一(作画)

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PCスキルは高いがコミュ障のガクと、コミュ力の塊だがワガママで常識の通じない男ハル。2人がタッグを組み、最強の大金持ちを目指す話。第四十八回以来の紹介です。

こちらも、「そうきたか」を何度も味わえる気持ちいい一冊でした。ですが、こちらの仕組みは「チ。」とは異なっていたと思います。本作は上記の2人がどんどん成功して稼いでいくわけですが、漫画らしい急成長をとげるため、絵面のわりに現実感がかなりうすくなります。なので、そううまくはいかんやろ的な展開もまあまああります。しかし、本作の面白いところは、そういう「甘い」展開の直後に「でもこのキャラならできるか」と思わせる描写がはさまるところです。主人公の1人のハルは、コミュ力と型破りな発想で相手の心を動かす天才です。そして彼に作品中のキャラが驚かされるとき、読者の心も同様に動かされます。同じ体験をしている以上、読者はガクの躍進の証人になってしまうのです。こうした説得力を感じさせる展開を現実感の薄い「甘い」シーンの直後には差し込まれるため、「甘さ」から本作をナメた脳にダイレクトに衝撃が飛び込んできます。説得力の欠けたシーンでナメた読者を証人化して問答無用で納得させる、見事な想定の外させ方だと思います。


今週は修羅場っているので数が読めませんでしたが、両方とも違う形で「そうきたか」を味わえて大変面白い体験ができました。おかげでがんばれそうです。


一般書籍

修羅場中に読書、ムズイ。


Web記事

今週はこちらもなし。

ちょっと忙しいぐらいですとスマホで息抜きできるWeb記事のインプット量が増えるのですが、本当にヤバくなるとスマホ触る時間も消えるんですね。


制作も仕事も佳境に入ってきて、なかなかヤバいことになっていますが、とりあえず生きてます。ただこの状態で書く文章に責任は持てないので、余計なことを書く前に今日は筆を置こうと思います。

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