符亀の「喰べたもの」 20210613~20210619

今週インプットしたものをまとめるnote、第三十九回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。

土曜日に寝落ちしたため、日曜日に更新しています。


漫画

先生、今月どうですか」(1巻) 高江洲弥

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予知能力によって16歳年上の売れない小説家と結婚することを知った大家兼高校生のヒロインが、彼に家賃を取り立てに行くときのみ、月に一回だけの会合を重ねる恋愛ものです。

ぶっ刺さりました。正直1話の時点ではヒロインのビジュアル以外にティンと来るものはなかったのですが、2話中盤(62ページ)の絵と3話ラスト(110ページ)で落とされました。「コメ」要素が薄い純粋な「ラブ」ものだと一番好きかもしれません。

先程1話に刺さるものが無かったと書きましたが、改めて読み直すと、予知能力の設定は上手いと覆います。ヒロインは基本的に、未来の結婚相手の小説家にはツンツンした態度をとっています。そういうキャラが一人になったとたんに好意を(読者に)見せるのはお決まりですが、本作では結ばれた未来を予知で見せ、「好きな相手をその人への好意に満ちた表情を見つめているシーン」を1話から出しています。本来これは、連載が進まないと出せない破壊力の高いシーンであり、故にいきなり高火力を叩きつけられる本作の設定はよくできていると思います。惜しむらくは、1話の決めシーンが見開きなうえに一枚絵として見ないと意味のない絵のため、スマホで1ページずつ試し読みしている状態では魅力が発揮できず1話全体が薄味になってしまっていることでしょうか。つまりは1話でもの足りなくても是非買って続きを読んでいただきたいということです。

月に一回、家賃をもらいに行くときだけ会える大家と住人の関係という設定も、うまく活かされています。ただこれは1話毎に1月経つということでもあるので、高校卒業というタイムリミットによって話数を制限されないかは心配です。

余談ですが、読了したあとの帯で、「ひつじがいっぴき」と同じ作者さんだと知って驚きました。年齢ダブルスコア年上男性カップルの性癖が変わってなくて安心しました(失礼)。そっちも名作なのでぜひ。


イチケイのカラス」(1~4巻(完)) 浅見理都

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地方裁判所を舞台に、曲者ぞろいながら被告人に寄り添い判決を下す裁判官たちの人間ドラマです。今期の月9の原作だからか急に全巻入荷されたので一気読みしました。

「法廷で本当のことを知っているのは被告人だけ」という作中のセリフ(4巻76ページ)が、良くも悪くも本作を象徴していると思います。本作では法廷ものにありがちなミステリー要素はほぼなく、実際の事件がどのようであったのかすら語られないエピソードも多いです。その分被告人の人生を裁判官がどう扱うのか、どう法の範囲内で被告人を助けられるのかに描写が絞られており、新鮮で面白いです。被告人に感情移入もしやすく、彼らがどう裁かれるのかをハラハラしながら見守るように読まされる独特な感覚は本作の確固たる魅力です。

しかし、その判決が被告人にとってどうだったのか、事実を反映していたのかといった「正しさ」についての答え合わせがない話が多く、読後感としてモヤモヤは残りやすいです。これと主人公が好感を持ちにくいキャラなことが合わさり、1巻を読破した際に気持ちよさは感じられませんでした。1巻から2巻への継続率は結構低かったのではないでしょうか。2巻冒頭のエピソードは「スッキリ感」が強いので、まだ読んでいない方は2巻まで一気に購入されることをオススメしますし、このエピソードを1巻でやっていればもっと続いたのではという気もします。4巻完結という結論を知ってからこういうのを言うのはズルいですし、ラストのエピソード的に打ち切り以外の理由による完結だろうと思っているのですが。


ヒポクラテスの卵」(1巻) ススキノ海

心臓に持病を持つ少女が、医学生として学ぶ少女漫画です。版元ドットコムに登録されていなかったので、書影はリンクの公式ページからどうぞ。

主人公は少女漫画らしい感情豊かな女の子なのですが、彼女に「心臓病」という設定を持たせたのは上手いですね。まず医療の現場で読者の共感できる感情を主人公に持たせるためには、主人公に医学知識が豊富だと都合が悪いところがあります。倒れた人を見たとき、すぐにバイタルを確認してその数値に深刻さを感じ取るキャラに、医学素人の読者は感情移入しにくいです。なので主人公の知識は足りていない方がいいのですが、今度は大学で何を学んでいるんだという話になってしまいます。そこに対しサボっているような印象をやわらげ、かつ医学要素が個性にできず普通の女の子になりかねないところに強烈なタグ付けをしている点で、なかなか優秀な個性付けだと思います。キャラに愛着持ってもらって心臓病要素抜きでも読んでもらえるようになったらしばらく放置してもいいですし、それで一波乱ほしくなったら引っぱり出せるところも優秀です。この文、我ながら人の心がなさすぎでは?


宗教的プログラムの構造と解釈」 佐武原

VR上の「神様」を描いたSF読み切りです。

若干説明不足な感はありますが、起承転結全て高いレベルでまとまっていると思います。特に伏線とオチが好きです。流石バズるだけある。

そのうえで、このツイートにあるような「一発パンチの強い『絵』があってほしかった」(「ここでいう『絵』とは、『その作品の思想とかテーマとかを象徴するような、忘れ難いシーン』くらいの意味」)という指摘は、確かにと思いました。これは今後作品を読むとき、および自分の作品を仕上げる際に使っていきたい視点です。


[特別読切] 運命よ其処を退け」 家守真言

好きを貫く澪(みお)は、好きなアニメのイラストをSNSにあげても全く反応をもらえない日々を送っていた。そんな中たまたまリアクションをくれた“すずさん“に…恋をしてしまう!?というかこれは恋!?
(公式の紹介文をそのまま引用)

今後の展開に必要な「通話の録音」を出す流れが自然すぎて感心しました。それ以上は多分前情報無しで読んだ方がいいと思うので黙ります。


今週は作品の製作に本腰を入れだした週なのでインプットは少なめだったと思っていたのですが、書き出してみると結構な量になりましたね。つまりはそれだけ本業が進んでいないということなのですが。



一般書籍

「作品の製作に本腰を入れだした週なのでインプットは少なめだった」、この意味がわかるね?


Web記事

結局サークル難民と大塩平八郎にはなんの関係があるんですか

上記ツイートから1年をかけて語られた、サークル難民(現在「ルサーク積民」名義)氏の幼少期の物語。

もうこの長さと濃さになると事実かどうかはどうでもいいと思うのですが、それにしてもリアリティを感じます。それはおそらく、感情の描写が細かいからでしょう。「AだからBだと思う」と言われると前提にされたAが事実に思いやすいのと同様に、当時の筆者さんの感情が述べられることで、それを引き起こした「事実」の現実味が増しているのだろうということです。このテクニックは今後色々と使えそうなので、覚えておこうと思います。

ちなみにこの一連のツイート、面白いですが本当に長いのでお気をつけください。私は一日潰しました。


【日報】スマブラに鉄拳のカズヤが参戦する意味をおまえは理解する(逆噴射聡一郎)

独特の言語センスで「スマブラに鉄拳のカズヤが参戦する意味」を説いた記事です。

言葉遣いが独特すぎて正直読みにくいのですが、各章のタイトルが端的かつ分かりやすいので何言ってるのかはわかるのが上手いです。そのタイトルが出てくるのがまあまあ遅いのでブラウザバック直前でしたが、そこからは脱落せずに読めました。またnoteの形式だと見出し部分が読み飛ばされにくいというのにも気づけたので、今後ちゃんとしたnoteを書く際には使おうかと思います。


みずほ銀行システム障害に学ぶ

みずほ銀行システム障害の調査報告書について、経緯や筆者さんの勉強になった点をまとめられたブログです。

引用元のページの明記や序盤の「他人事とは思えない」の連打で読者の背筋を伸ばしてから読み進めさせているのが上手いです。内容も勉強になるところが多く、いい記事でした。


製作もそろそろ本番となり、土曜日のテストプレイ会への参加やそれ用のモックの作成もあって思い返せば忙しい週でした。地味に本業の錬金術もここ数ヶ月の成果を吹き飛ばすようなデータ出ましたし。

そういえば、まんだらけさんの通販サイト「ファントム」がオープンしましたね。我々も今まで委託してこなかった処女作と2作目の2本を、オマケや値引き付きで委託しております。ぜひ、リンクからチェックしてください。以上久々にマトモな宣伝でした。

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