符亀の「喰べたもの」 20201108~20201114

今週インプットしたものをまとめるnote、第八回です。


漫画

おとなりに銀河」(1巻) 雨隠ギド

端的にまとめると、売れない漫画家の主人公と、その元にやってきた美人で敏腕なアシスタントのヒロインとの恋愛ものです。実はヒロインは人間ではなく、さらにそのトゲに触ってしまったために主人公は彼女との婚姻の契りを結んでしまう。1話で明かされるこの設定も、1話の時点ではややパンチに欠ける印象を受けます。「甘々と稲妻」の作者さんの新作と言った方が、マンガ好きにはピンとくるかもしれません。

この漫画の良さは、さらに一段踏み込んだ設定と、それを活かした演出力の高さにあるでしょう。「冴えない主人公と完璧美人なヒロインが、ひょんなことから婚約関係に!」というのはよくある展開なものの、この漫画の婚姻関係とは「姫であるヒロインを守るためのものであり反すれば罰がくだる」という進化した設定となっています。これにより、ファンとして好きな主人公を傷つけてしまっていることへのヒロインの葛藤や5話のあの展開が、効果的に描かれています。そしてそんな2人の関係が大きく動く4話5話のラストは、大ゴマ見開き背景オノマトペ反復崩しと演出面で白眉のクオリティであり、そのまま演出の教科書に載せられそうなレベルです。

演出力のおかげで恋愛ものがそんなに面白いと思えない人でも作品のリズムに乗りやすい作品かと思いますので、1話を試し読みしてひっかかった方は1巻のご購入をオススメします。


極道主夫」(6巻) おおのこうすけ

元伝説の極道が専業主夫としてがんばるコメディー。アニメ化ドラマ化おめでとうございます。

1話からわかりやすい設定とそれを活かした画力、そして強すぎる画力で面白い作品でしたが、この巻ではさらにギャグと絵に磨きがかかっています。コメディー面では、元々長所であったツッコミ不在のシュールギャグだけでなく、起承転結やフリの利いた王道展開に意外なオチと剛速球も変化球も身につけられて無敵に近い状態になっています。また連載開始当初はおそらく動きのついたポーズが苦手だった(しかしそれがシュールさと極道っぽいキメ感につながっていたため、正直わざとだと思っていました)のかと思うのですが、特にこの巻では動きのあるポーズも迫力ある感じに仕上がっており、より芸の幅が広がっていると思います。なんやこいつすげえ上から目線のコメントやな。


銀狼ブラッドボーン」(13巻) 艮田竜和(原作)、雪山しめじ(作画)

元伝説の吸血鬼ハンターである老年の主人公が、「骨喰い」と呼ばれる化物の出現を機に再び立ち上がる物語。元英雄のジジイが、老いとも戦いながら蘇った過去の敵たちとの因縁にケリをつけていく話が嫌いな漫画読みなど、在乎。

この作品の強いところとして、巻を重ねるにつれて作品内で新たな因縁が生まれ、しかもそれは読者も知っている相手との闘いなのでより燃えるという点が挙げられます。そういう点で今まで9巻が私的ベストだったのですが、この巻はそれに並び立つ燃えを提供してくれましたね。しかもエピソードのクライマックスだった9巻と異なり、こちらは最終決戦が始まったばかりでさらに盛り上がる余地があるのが恐ろしいです。続刊来週ぐらいに出してくれませんかね?


先週演出について長文をだらだら書き連ねてそういう目になっていたのか、今週は演出力の高い作品が多かった気がします。正直漫画の演出を学んでもボードゲームに活かせるような気がしませんが、それはそれとして面白さの解像度が上がるのはやはりいいですね。


一般書籍

今週1ページも読んでませんわハッハッハ。ちなみに今日ゲムマ会場に1冊持ち込んだんですが、皆様が来ていただいたおかげで読む暇がありませんでした。皆様本日はありがとうございました。


Web記事

絶対に仏教由来語を使ってはいけない異世界

今週のアホ枠。ですがこのセリフが増えるほどに制約と調べものが増える設定で思ったより長めの文章量を書き、かつ丸投げなオチ以外は中だるみせずに書き切っているのはシンプルにすごいと思います。たぶん普通に文章力が高いです。

NGワードへの解説のボリュームが程よいのが特にいいですね。こういうネタだと解説博士とか出してスベったり、そうでなくても調べた知識量を出そうとして書きすぎになりがちなんですが、さっぱりとした書き口で流しているのが設定の狂気を薄れさせて読みやすくしています。その上でちょっとした小ネタは追記することで辞書風にして、シュールさも増している。かなりよく練られたテンプレートですよこいつは。


謎解きってなんだー!

謎解きとはなんなのかについて、東大生の謎解き制作集団に所属している(当時)筆者が考察した文章です。ちなみにこの筆者とは個人的に友人関係にあるのですが、去年の執筆当時は普通に見逃し、今週本人に謎解きについての話題を振った時にリンクをたたきつけられて初めて読みました。ごめん。

でこの記事ですが、正直友人としての贔屓目抜きに面白いです。この記事では謎解きを「特別な知識は必要とせず『ひらめき』さえあれば誰もがクリアできるゲーム」と定義し(正確には、これは筆者の所属している謎解き制作集団内の定義です)、そのひらめきについての考察を行っています。この考察内での言語化能力が素晴らしく、ふわっと「謎ってなんかこんなのだよねー」と思っていたことが論理的な文章として解きほぐされるのにはちょっとした快感も覚えます。それを基として導かれる面白い謎を作るための方法論も、謎解きのプロとして四六時中思考を巡らせたのであろうと察せられるものでとても面白く拝読しました。

リンクで引用されている記事も面白いので、それも合わせてご覧になられることをオススメします。


やはり今日がゲムマ本番だった週ということで、さすがに読めている量は少なめですね。てかボツにしたのも含めこの週も漫画5冊読んでるのがおかしい。あとゲムマ終わってその日のうちにこれ書いてるのもおかしい。やるなら先に書いておけよ。

ちなみに今回のゲムマですが、我々が今まで重きをおいていた試遊がコロナ禍により禁じられるという逆境にも関わらず、なんとか例年より若干下がった程度の売り上げをあげられました。これも一重に作品の力、ではなく皆様のご協力とお客様のご厚意あってのものでございます。おかげで来年の春も(アイデアが形になれば)新作が出せる体力が残りましたので、これからもよろしくお願いいたします。

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