符亀の「喰べたもの」 20210815~20210821
今週インプットしたものをまとめるnote、第四十八回です。
各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。
所用のため、日曜日に更新しています。
漫画
「トリリオンゲーム」(2巻) 稲垣理一郎(原作)、池上遼一(作画)
PCスキルは高いがコミュ障のガクと、コミュ力の塊だがワガママで常識の通じない男ハル。2人がタッグを組み、最強の大金持ちを目指す話。第二十八回以来の紹介です。
起業モノの弱点として、ビジネスという読者の多くが張本人として関わっているジャンルを扱う分、「なぜ主人公たちの会社は(作中の他の会社や読者のそれに比べて)上手くいっているのか」の理由づけがある程度ないと陳腐に感じやすい点があると思います。本作では、その理由をまず能力の高いキャラが最適な形でそれを発揮しているからとして全キャラに見せ場を作り、それだけでは怪しい部分を全部コミュ力行動力お化けのハルに押し付けており、これが面白いと思いました。面白い漫画においてキャラが魅力的なのは当然のようなものであり、逆に面白い漫画に「あいつの魅力のせい」と言われてしまえば、もう読者は反論できません。
この連載において、物語の展開に対する「納得感」は、度々登場するキーワードです。本作の、「そのメディア的に前提として受け入れられやすい部分に、納得感を担保する役割を全て押し付ける」というやり方は、この納得感というテーマを考えるにあたって重要な一石を投じてくれたのではないかと思います。
「スタンドUPスタート」(4巻) 福田秀
「訳アリ」人材の価値を見抜き、起業によってその価値を高めようとする人間投資家を主人公とした、起業マンガです。第三十五回以来の登場です。
「トリリオンゲーム」と(視点は変わりつつも)同じ起業モノであり、こちらもキャラに「納得感」を担保させている点も近いと言えるかもしれません。しかしこちらの面白いところは、主人公の投資家がエピソード毎に変わる素人に起業を勧めるという形のため、「主人公が読者と同じ知識レベルのキャラに理論を教える」のがやりやすくなっている点です。この巻に出てくるのは元大手企業のサラリーマンたち、つまりビジネスの知識はある人たちですが、その子供に教えるという形で素人への授業を成立させているのが見事です。こうして主人公に先生としての役割も与えることで、人に知識を分け与え他人を信頼する寛大さという魅力を足しているのも上手いですね。
「ゆかいなまんが」 ジョンソンともゆき
1~4コマ漫画を毎日投稿している作者が、その中のお気に入り作品や描き下ろしをまとめた単行本です。
他の作家さんでtwitterに投稿された作品のまとめを購入した際、オチがわかっていてあまり楽しめなかったことがあったために購入を迷っていましたが、結果としてほぼ初見と同じように笑えました。これは、まず単純に毎日投稿されているせいで古い作品をどんどん忘れていたからというのはあると思います。その上で、この本の構成によるところも大きいのではないかと思いました。
この本では、「2コマ漫画→3コマ→1コマ→4コマ→描き下ろし」という順で作品が並べられています。このように序盤にコマ数が少なくて思い出すよりも先にオチまで読めてしまう作品を持ってくることで、読者に既視感によるネガティブな印象を与えにくい状態でそのテンションを盛り上げる効果が出ていると思います。では1コマ漫画を一番先に持ってきたらいいのではないかと思われるかもしれませんが、氏の1コマ漫画はタイトルがオチになっている作品も多く、ネタがわかるまでタイムロスがある作品は読者が盛り上がるまで温存しておいたのではないかと思います。
まあ、私が氏のニコニコ時代からのファンなため、ひいき目で見ているだけなのかもしれませんが。あと描き下ろしは4コマ以外も欲しかったです。
ボツにした作品も含め、人間ドラマ的な漫画の割合が多かった週な気がします。こういう作品はストーリーとキャラクターへの依存度がより高く、無理矢理な展開で読者が冷めやすい弱点を抱えていると思います。その分面白い作品は「納得感」を与えるための工夫が上手く、いいインプットになったと思います。
一般書籍
2冊を並行して読んで、両方半分ぐらいまで来ました。じゃあ片方だけなら今週紹介できたのでは?
Web記事
「A Feminist History of Self-Portraiture」
旧石器時代のヴィレンドルフのヴィーナス(巨大な乳房と腹部が特徴の石像)の造形が、性的な誇張ではなく一人称視点を反映した結果生まれたのではないかとする論文を元に、歴史的な「女性の自画像」についてまとめた記事です。英語の記事ですが、ヴィーナス部分は原文と機械翻訳で、それ以降は基本機械翻訳で拝読しました。
こういった新たな視点によって生まれた新説は、自分の既成概念を覆してくれるのでとても面白いですね。
「[98] Evidence of Fraud in an Influential Field Experiment About Dishonesty」
行動経済学の大家の論文で、データの捏造があるのではないかとして分析をした投稿の解説記事です(ただし、捏造部分は共著者が用意したものとされています)。本文は英語ですが、和訳してまとめられたnoteもございます。私は機械翻訳を中心に適宜原文で読ませていただきました。
データが乱数によって生成されたかどうかを確かめるのは難しいはずですが、この記事では実に見事な方法でその仮説を検証しています。推理小説のようにデータの精査の方法が学べる、とても面白い記事です。
「『いい企画って、なぞなぞなのよ』つんく♂が怒涛の勢いで教える“企画脳の鍛え方”」
つんく♂さんに企画脳の鍛え方について質問した、インタビュー記事です。
構成が上手く、基本的に時系列に沿って会話を並べた形で編集されていますが、最初に4つのキーワードを並べて先に内容をまとめてしまっています。読みやすい会話形式と先に構成を示してしまう説明文形式の、いいとこどりが上手いです。
つんく♂さん自身のお話も面白く、「① 細分化する② 日常の解像度を上げる
③ 『○○の○○版』を考える④ ネーミング力を身につける」というキーワードのおかげで覚えやすくまとめられているのもありがたいです。
「https://twitter.com/cha_bo39/status/1426883949133918213」
西洋画における雨の描き方について考察をされている、ツイッターの一連のつぶやきです。
日本の浮世絵の表現が入るまで雨を線で描く表現法が無かったのではないかという仮説が面白く、結論こそ出ていない(出すにはさらに検証が必要なため)もののとても面白い考察です。
「頭がいい人の特徴」
私的に一番頭がいい人物の一人だと思っている筆者さんが、頭がいい人の特徴について書いたnoteです。
「東国原英夫の年齢は?歳は?出生からの経過年数は?調べてみた!」
今回は、そんな東国原英夫さんの気になる年齢、年齢、年齢を調べてみました!ファン必見です!
そんなに気にならないよ。
山場の2つ目を超え、ワクチンも2回目を打ち、テストプレイ会で好評をいただき、調子が向いてきた週だったと思います。
来月頭までまだ数個山が残っていますが、とりあえず生き延びたいと思います。
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