符亀の「喰べたもの」 20211024~20211030

今週インプットしたものをまとめるnote、第五十八回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ウマ娘シンデレラグレイ」(1~4巻) 久住太陽(漫画)、杉浦理史(脚本)、伊藤隼之介(漫画企画構成) (原作: Cygames)

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オグリキャップを主人公とした、「ウマ娘」のコミカライズです。いつもの本屋さんに急に4巻全部入荷したので、ウマ娘やってないしアニメも見てないですが買いました。

立ち上がりは遅かった印象ですが、5話目の154~158ページの演出でオグリキャップの怪物性を叩き込まれてからはハマりました。ああいう空気が変わる演出は、それだけその空気を変えたキャラが異質な存在であるのがよくわかり、また作中キャラと読者が同じ感情を抱きやすくなるおかげで物語への没入感も増すのが強いですね。しかし「それまでの空気」を作ってからでないと変えるもなにもないので、読者を掴むまでが遅いのがこの方法の欠点に感じます。本作の立ち上がりの遅さもそこに起因すると思っていまして、実際のオグリキャップと重ね合わせられるほどの知識がないと、本作序盤のオグリキャップはただの天然だが強そうなキャラです。この後成長させなくてはいけないストーリー上の問題もあり、作中で煽られているほどのスター性がまだ感じられず、作中世界との乖離を感じて最初はのめり込みにくかったと思います。この「空気を変える」方法を使うには、弱点である初速の遅さを何かで補わなくてはならない。これは勉強になりました。

しかしその後は見事で、飛びますが特に3~4巻の日本ダービー編の演出はしてやられました。史実を知らない分、最後までオグリキャップが日本ダービーに出られたのかわからなかったので。ギャグとシリアスの使い分けも上手く、普段萌え系の上手い絵で進行する分、少年漫画的なガチ演出やデフォルメの火力が上がっており、有効に働いていると思います。

先程史実は知らないと書きましたが、そんな競馬興味0人間にも元ネタを調べさせる魅力と調べればちゃんと応えてくれる情報の練度にも、触れずにはいられません。特にオグリキャップと同行するベルノライトが、史実で同行した装蹄師さんと同郷同期のウマとを掛け合わせている(と考察されている)のが見事です。装蹄師さんの方はオグリキャップのwikiを見れば察しが付く元ネタですが、そのわかりやすい元ネタにもう一段深いネタを仕込んでいるのが凄まじいです。以前「作り込まれていそう感をどうお客様方に持っていただくか」を考えていると述べましたが、そのヒントになる事例として勉強になりました。


今日からはじめる ばーどらいふ!」 一日一種

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生きがいが見いだせなかった会社員の主人公が、レンジャーとジョウビタキに出会ったことでバードウォッチングに目覚めていく物語。というか「マンガでわかる鳥見入門」(帯文より)。

図鑑っぽい絵柄で人物まで描かれていて、絵面が特徴的な作品です。鳥の特徴が雌雄の差や似た種の見分け方まで描けるほどしっかり描き分けられており、そのやわらかくも写実的な画風にキャラがなじんでいて視覚的に面白い作品です。

ストーリー部分も、多少説明不足な用語はあるものの「裸眼で見る→道具を使って見る→図鑑で知る→撮る→見に行く(旅する)」というステップアップ順に説明が並んでおり、入門書としてとてもよくできていると思います。ちゃんとバードウォッチングをするつもりがなくても、知識として面白く普段の世界の解像度がちょっと上がるという点で、オススメな一冊です。


ヤクザが切ったはずの小指と再会する話

ヤクザの前に、切った小指がこゆび姫として現れるという短編です。

やはり、14ページ目最後のセリフが美しいですね。今敏監督が「はっきりとオチがつくような『落とし話』は話の構造が単純すぎるように思えるし、シンプルというより作品がオチにフォーカスしてしまうと『それだけ』の話になってしまいがちになる。」と書かれている(「KON'S TONE 「妄想」の産物」158ページ)のですが、本作のこのセリフはこゆび姫のオチであっても話全体のオチではなく、だからこそオチとしての集約感と物語全体をそれだけに小さくまとめないのとを両立できているのかなと思います。


作品数こそ少ないですが、「ウマ娘」を一気買いできたおかげで冊数は確保できました。質の方も、修羅場ってるわりには悪くないのではないかと思います。説明書は手つかずです。


一般書籍

歴史書が500/1500ページまで進みました。来週には上巻のまとめが載ることでしょう。やったね。


Web記事

『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)

文化庁が、常用漢字のうち同じ訓を持つものについて、その使い分けをまとめたpdfです。

事例を見るまで片方だけでいいと思っていたものや、分け方を誤解していたものがあり、勉強になりました。個人的に、「防犯ビデオや胃カメラなど,撮影と同時に画像を再生する場合」のように漢字が作られたまたは日本に浸透した頃には存在しなかった概念にも使い分けが定められているのが面白かったです。


ターゲティングできない、という価値。

ターゲティング広告により直接的な表現が増えてしまった今こそ、ターゲット以外の人も広告を見るという事実を再考するべきではないかと提言された記事です。

我々個人事業主にとってこうしたマス広告は費用的に難しいですが、その理念は元から賛成であり、そこを言語化していただいて助かりました。


日本の音楽にはもっと『批評』と『歴史』が必要だ…人気YouTuberがそう語る理由

音楽系情報を発信するYoutuberであり音楽史の本も出版されたみの氏に、批評の重要性を聞いたインタビュー記事です。

「興味を持って掘り進めようとした時のガイドがないと、トレンドとブームで終わってしまう」という一文が刺さりました。私は「トレンドとブームで終わ」らないよう、または終わった後に再興できるようにモノや語りを遺すというアプローチをとろうとしていたのですが、こういう切り口もあったのだなと思いましたね。一方記事のほとんどがみの氏の経歴に関する内容で、タイトルに関する話はラスト1ページぐらいしか語られなかったのは残念でした。これなら前後編でやってよかったと思うんですがね。


自炊に『上手』『下手』がある、なんてない。

自炊に対しネガティブな感情を抱く人たちのイメージを変えたいと「自炊料理家」として活動する山口祐加さんへの、インタビュー記事です。

「『手抜きでごめんね』ってつい言ってしまう人は、『いつもより簡単に作ったんだけど、こういう献立どう思う?』と聞いてみると、案外、『これ好きだよ』って返ってくるかもしれない。」「料理に『ズボラ』『手抜き』のような名前づけを必要以上にしない」など、どうやって心理的なハードルを下げるかを真剣に考えてらっしゃるのが伝わってくるインタビューでした。この辺りのテクニックは、自炊だけでなく高すぎるハードルを持つ全ての人に対し一考すべきものだと思います。


がん細胞が免疫細胞を悪落ちさせる方法が判明!

がん細胞が自分を攻撃してくるはずの免疫細胞を「悪落ち」させるメカニズムを解析し、がん治療の新たな手法の糸口をつかんだとする論文を紹介する記事です。

元論文はアブストラクトしか読んでいませんが、そこに出てこない「悪落ち」という単語を持ってきたのがズルいですね。おそらく「instruct (調教する)」から連想したのかと思いますが、この訳とそれを表すイラストによってPV数を桁違いに爆上げしていると思います。


警備会社大手ALSOKがジビエ事業に参入 一体なぜ?【WBS】

上同様にバズっていた、ALSOKがジビエ産業に参入したことを報じたニュース記事です。

縮小していく現金輸送のノウハウを害獣回収とトレーサビリティの確保に活かしたのが見事ですね。こういう強みを活かして生き残る手腕は、いつか見習うべきときがくるかもしれません。


『バックハンダー』イラストメイキング1 ルーレット

今週の宣伝枠です。

新作のトリテ「バックハンダー」について、そのカードをどのようにデザインしたかまとめる連載の第1回です。第2回は週明け月曜か火曜に更新予定です。


ゲームマーケットまで1ヶ月を切り、いよいよ忙しくなってまいりました。そんな中、久々に広義土曜日に更新できたのは精神衛生上とても大きいと思います。なお未着手の説明書。

明日もイベントに参加予定ですので、今日はこの辺りで早めに寝させていただこうと思います。

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