符亀の「喰べたもの」 20220619~20220625

今週インプットしたものをまとめるnote、第九十二回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

スタンドUPスタート」(5、6巻) 福田秀

「訳アリ」人材の価値を見抜き、起業によってその価値を高めようとする人間投資家を主人公とした、起業マンガです。第四十八回以来の登場です。

この2巻とも、展開としては王道というかベタすぎるやつなんですよ。ひたすらフラグを建てて、その通りのオチになる。普通なら興ざめにも程があるレベルですが、それでもしっかり面白く読めました。

その理由ですが、そろそろフラグを回収して来るはずのタイミングで、全然回収しなかったんですね。それでテンプレ展開を外してくるエピソードなのかと思わせておいて、溜めに溜めてから回収する。つまり、読者を2回裏切っているわけです。1つのネタで2回驚けて面白さの濃度が高く、テンプレ展開に落ち着くため展開に納得できて裏切りへの嫌悪感は低く、さらに王道展開がゆえのストレートな熱さは120%味わえる。まさに美味しいとこどりで上手いなと感心しました。


推しの子」(8巻) 赤坂アカ×横槍メンゴ

推しの子に転生した兄妹が、それぞれの目的を胸に芸能界に挑む物語。第七十四回以来の紹介です。

前回で妹が「主役の座を取り返した」と書きましたが、ついでに兄の業まで背負わせるのはどうかと思いますよ。

いや冗談めかして書きましたが、その展開には度肝を抜かれましたし、流石だなと思いましたね。復讐譚は物語の背骨としては強力なものの前面に押し出し続けると面白さを殺す、しかし出さなすぎると何の話かわからなくなるというジレンマを、復讐者とそうでない者とのW主人公にして解消する。すると生じる復讐者側のキャラが他のストーリーにかまけていいんですか問題と、復讐者じゃない方のバックストーリーが薄くなる問題を、復讐者役を入れ替えることで解決する。普通だったら理論通りいかずに話がぼやけて終わりだと思いますが、各エピソードが面白い分その間は話の意味を考えようという気が起こらず、気づけばキャラに愛着を持っているので腕力で持っていけてしまう。ラブコメ的な脚本術なのかもしれませんが、実に見事です。


ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋」(1巻) 上遠野浩平(原作)、カラスマタスク(作画)、荒木飛呂彦(Original Concept)

ジョジョ第3部に登場する人気キャラであるホル・ホースと、第4部の主人公である東方仗助、そしてオリジナルキャラの3人を主軸にした公式スピンオフです。

トト神のスタンド (予言を漫画として示す能力) が、スピンオフととても相性がいいのに気づかされました。スピンオフで一番見たいのはキャラクターのやり取りですが、それを書きすぎてストーリーが進まないようだと漫画として面白くありません。その問題を、トト神の予知通りに進んでいる、さらに言えばそのやり取りのストーリー上の意味までもがわかるようにして解決できており、安心してキャラの掛け合いを楽しめます。 ストーリーの概要が先にわかってしまうというネタバレ面についても、ストーリーが主題ではないスピンオフなら大きな問題にはなりません。多少強引な展開 (ここもトト神がある程度ごまかしてくれる) はありますが、にわか目線ですとキャラクターの再現度も画力も高いように見えますので、これからが楽しみです。


君のことが大大大大大好きな100人の彼女」(10巻) 中村力斗(原作)、野澤ゆき子(作画)

凛としたポンコツ美人が好きだと言っていたらヤベえのが来ました(そもそも全員ヤバい)。


先週金曜がジャンプ系の発売日だったおかげで、今週は多めにインプットできました。この並びで「スタンドUPスタート」が新刊じゃない、それどころか最新刊が先週発売なのに入荷してなくて読めてないのが地味に面白いですが。


一般書籍

『あざとい』伝え方入門」 山本御稔

コミュニケーションの進化の過程で生まれた「あざとい」伝え方を、学問や筆者の経験をもとに記したコラム集です。

まず、本書の背面や帯の説明文にコラム集であることの記載がなく、買ってからそのことに気づきました。正直コラム集だと知っていれば買わなかったと思いますので、試し読みしなかった私が悪いのですが説明不十分だと感じます。そんな個人的な恨みと、単純にまとまりが悪いコラムが多かった印象から、今回は厳しめな内容で書きます。

「まとまりが悪かった」と感じた理由ですが、おそらく起承転結の「転」の位置、つまり、具体例から主張を導いたり問題提起をするタイミングが悪いせいかと思います。本書のコラムは1本およそ3ページ分なのですが、特に前半部分で、本題が最後の一段落でいきなり出てくるか逆に2~3段落目ですぐ登場するパターンが頻出していたように感じました。

前者のパターンが無理矢理まとめた印象を与えてダメなのは言うまでもないかと思いますが、問題は後者についてです。私もできるだけ早く本題を示すべきと考えていたので、分析してこの結論になったのは意外でした。ですがどうやら、コラムぐらいの文章量で序盤に本題を出してしまうと、文全体がだらだらとした印象になってしまうようです。というのも、主張の登場が早すぎると、コラム中の具体例が主張したい内容とどう結びつくのかの説明が足りず、結局具体例部分の話が続いてしまうためです。本来主張部分は文の流れを変え、「転」として緊張感を与えて文を引き締める役割をすべきものですが、序盤の内容が続くようではその意義がはたせず、緊張感のない文に感じてしまうのだと思いました。特にコラムの文章量ですと主張の再登場も難しいため、一度機能不十分なまま出してしまうとどうしようもないのかなと思います。文章量によっては主張の先出しは控えるべきと学べたのは、一つ収穫でした。

なおフォローしておきますが、後半の4章5章では面白い事例も増え、主張が「転」として働いているコラムも多かったと思いますので、前半以外は面白かったと思います。上記の反面教師的な使い方を除いても、最終的には読む価値のあった本に感じています。という新しい話を最終段落で突っ込むなって話だったんじゃないのかオイ。


Web記事

ボードゲームの説明書のルール説明以外

説明書の表現について、製作者さんが意図を語られたnoteです。

ゲームの面白さを保証する(運ゲーにしない)ために説明書ができることの例として、とても勉強になりました。


テストプレイ会の準備、そして当日のはしゃぎっぷりのおかげで寝落ちし、更新が1週間ずれるというやらかしをしてしまいました。迅速に修正しなくちゃ、ヤバい。

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