符亀の「喰べたもの」 20201011~20201017

今週インプットしたものをまとめるnote、第四回です。


漫画

部長が堕ちるマンガ」 中村朝

部長にいじめられている同僚を助けに入る主人公(無機物×部長のBL同人誌を描く壁サー腐女子)。彼女によってBLに触れさせられた部長は、自らの行動を反省しつつもその世界へと足を踏み入れていく。そんな漫画。

もう完全なる出オチ設定ですが、毎話中心となるキャラを変えたり部長のカップリング相手を変えたりで一巻分飽きずに読めるのが素晴らしいです。

世界観が狂気なので見逃しがちですが、1話目は振り回される系ツッコミだった部長が、最終的に完全なボケ役にまで堕ちているのもいいですね。そこまで堕ちても自分がBLで消費されることにはツッコむところも、最後の一線は超えないよう耐えている感じで、応援したくなります。

なお買うだけ買ってまだ読めていませんが、「シン・部長が堕ちるマンガ」という続刊も出ています。帯的にたぶん一線は超えてます。

君は冥土様。」(1巻) しょたん

高校生の主人公の家に突如押し売りをかけてきたメイドさん。その正体は元凄腕の暗殺者であった。そして、それに全てをささげてきたため家事はポンコツであった。そんな話。

ポンコツクールと忠犬子犬系ヒロインとを足し合わせたようなメイドさんがとにかくかわいく、そこに暗い過去まで乗っけた属性渋滞状態ですが、他キャラも含めて属性ではなくキャラが生きている感じがするのがうまいと思います。背景やアクション部分の画力も高く、漫画的なデフォルメの使い方も上手で2巻以降が楽しみです。

ちなみにこれを書いているときに知ったのですが、この作品は同氏の同人誌が元になっており、かつその同人版がほぼそのままサンデーうぇぶりに載って単行本化されたようです。すごい時代ですね。

夢中さ、きみに。」 和山やま

文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞ならびに手塚治虫文化賞短編賞を受賞した作品。前半4作品はちょっと変わった男子高校生林くんと主人公との掛け合いが、後半では伊藤潤二氏の漫画に出てきそうな見た目の男子高校生二階堂くんとその過去を知った同級生目高くんを描く連作が収められています。

間違いなく面白いんですが、正直この面白さは言語化しにくいんですよね。なんとなくBL的な雰囲気を感じる世界観ながら、じゃあ明確に友情以上の感情が向いている話なのかと言われると首肯はしづらい。というかそもそもうち1話は林くんと女子高生との話ですし、それも恋愛なのかと言われると、そうな気もそうじゃない気もする感じです。

そんな感じで各章の受賞コメントとかも見つつ考えていたんですが、改めて考えるとこういう「恋愛かは明示せずに同性同士の関係性を描く」作品って、百合系には多くても薔薇系だと珍しい気がします。というと私が知らないだけかもしれませんが、そういう文脈で消費される作品は、「本当にそういう関係じゃないのを読者がこじつける」(語弊あり) (少年漫画でカップリングを作る系)か「ギャグ的にそういう描写が入る」か「もりもりやることやってるR18」かなのではと思います。女の子たちが日常を送っている様子を「いいよね……」「いい……」と眺める作品はあっても、その男の子版がそういう作品として受け入れられる、もっと言えば描かれる例はあまりないのではないでしょうか。
(このへんは私の専門外かつセンシティブな部分もあって表現をぼかしているので、的外れだったりわかりにくかったりしたらすみません。)
そういう部分に突っ込んだ点が、この漫画の各賞を受賞した理由なのかなと思っています。

まあ、そんなん抜きになんか面白いから面白いんですけど。あと同作者の「女の園の星」はもっとわかりやすく面白いギャグ漫画なので、気になる方はそちらからどうぞ。

チ。 ―地球の運動について―」(1~2話) 魚豊
すごい作品。ネタバレにならないよう、以下公式の紹介文を引用します。

「ひゃくえむ。」で100m走にすべてを捧げる人々を描いた超新星・魚豊が舞台を青年誌に移して新たに描くのは、「禁じられた真理」を探求する人々を描いた一大叙事詩。
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代において、主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。
しかしある日、ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは異端思想ド真ン中のある「真理」だった———!! 

どこがすごいかを解説するのもネタバレになりそうなのですが、1つ言うと最初に拷問のシーンを持ってくるのが上手いなと思います。あれで主人公を妨げるもののヤバさを描き、主人公はあんなイカレた世界に歯向かうヒーローだという印象を読者に抱かせている効果的な演出に感じます。そこがちゃんとできてないせいで主人公に共感しにくい漫画とか、面白い作品にもいくつかありますからね。

その拷問シーンのせいでやや読者を絞っている可能性はありますが、そこが大丈夫な人はぜひ読んでみてください。

異世界失格」(1~2巻) 野田宏(原作)、若松卓宏(作画)

太宰感のある作家が愛人と心中しようとしていたところにトラックが突っ込み、作家は冒険者として異世界に転生するハメに。しかしステータスは低く特殊能力も持たず、挙句HP1なうえにカルモチン(睡眠薬、自殺用)によってもうどく状態。「心中という生涯最高の幸せな時間(作中ママ)」を邪魔された作家だが、同じく転生したはずの愛人を探して再び心中するため、異世界をさまようことを決めたのであった。という話。

今週一のアタリ。というか人魚姫が弔いを名目に魚たちを共食いする狂気の漫画「人魚姫のごめんねごはん」の作者2人がもっと狂気かつパロディ臭の強い設定で連載している時点で、面白くないわけがなかったのですが。

この人たちの上手いところとして、出オチ設定ながらも読んでてワクワクするんですよね。異世界転生ものというテンプレに「死にたい転生者」という真逆の設定を加え、そのうえで設定に沿った主人公の目的や狂った世界だから許容できる風呂敷の広げ方で話を広げていく。設定で興味を持った読者を前のめりにさせて逃さない力が強くて、その手腕が非常に参考になります。

2巻の後半で話が急展開し、今後の展開が楽しみな作品です。なお今週発売だった3巻は、注文していたのに書店に届きませんでした。

注文していた漫画たちがほぼ届き、それを崩しまくったおかげで質、量ともにすばらしいインプットができました。読んだもののハズレだった作品は除いても、まだ消化できていない作品や積んでいる作品もあり、しばらくここに書くネタには困らなそうです。


一般書籍

漫画読んでて忙しかったので読めていません。以上。


Web記事

こちらもほぼ読めていません。読んだものも、記事としては面白いのですがインプットとしてここに挙げるのは違いそうなもの(光浦靖子さんのエッセイなど)が多かった印象です。ですが一つ面白いものがあったので、そのご紹介だけいたします。

トイレの操作盤だけで点字をすべて予想する」 鬼谷

トイレで水を流したりウォシュレットを起動させたりする操作盤に書かれた文字と点字だけを頼りに、日本語用の点字全てを推測しようとした試みについてのnoteです。

筆者は点字の素人であり、6つの点が1文字に対応していることしか知らない状態から、限られた資料に基づき50音表を埋める作業を行っています。どれだけ埋められたのかはそのnoteを読んでいただくとして、たった数文字からでも全体がおおよそ読み解けるような点字の高い法則性とそれを実際に読み解いてしまう筆者の苦労の両方が高い文章力でまとめられており、オススメのnoteです。


第四回にして、やっと漫画読みらしいnoteが書けた気がします。ここからゲームマーケットの準備や新作の製作で忙しくなりますが、今週買った1万円以上分の漫画がほぼ半分積まれているので、ゆっくり崩していきたいと思います。

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