符亀の「喰べたもの」 20210509~20210515

今週インプットしたものをまとめるnote、第三十四回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。

土曜日の夜に用事がありましたので、日曜日に更新しています。


漫画

女の園の星」(2巻) 和山やま

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女子校が舞台の、シュールとカオスの合間のような日常を描いたギャグ漫画です。このマンガがすごい!2021オンナ編1位おめでとうございます。

女子高という舞台設定が秀逸で、かなりカオスな言動も「日常」扱いにできる分ギャグの幅が広いです。その点では男子校っぽいところもありますが、男子校ノリのようなホモソーシャルな雰囲気がなく、しかしフェミニンな匂いもしないので、読者の性別を問わない仕上がりにしているのもいい味付けです。先生を中心に描き、女子高生の無法地帯っぷりはあくまで飛び道具として作話しているのも、本作からしつこさを抜いて読みやすくしています。

これらの工夫によって、高火力のギャグが低めのテンションで飛んでくる、本作独特の空気感が形成されています。このような落ち着いた雰囲気のギャグ漫画では間延びすることも多い気がしますが、本作ではそういった印象を受けません。この理由として、以下の3つが挙げられるかと思います。

1つ目が、単純にギャグが面白いことです。これは作者さんのセンスによるところが大きく、好みの問題でもあるのでこれ以上は触れません。2つ目は緩急で、生徒たちがしゃべりまくっておもしろの密度が跳ね上がるコマやページがあり、話のテンポが一律遅いわけではないのがダラダラ感を防いでいます。そして3つ目が、ネタ振りです。本作では状況やキャラの動きを説明するためのコマが多めなのが特徴ですが、それらが続く前には読者に疑問を抱かせるコマが挿入されています。2巻冒頭の話の「ちょっといいすか聞きたいことあって」のコマが模範例ですが、このように読者が何かを待つ状態になってから説明コマが続くようになっており、故にこれらのコマが溜めとして機能しています。このように緩の部分がただ急のとの対比のために置かれているのではなく、それが機能するように適切に配置されているからこそ、読者の熱が冷めず面白さが味わえるのでしょう。


マチ姉さんのポンコツおとぎ話アワー」 安堂友子

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チビッ子におとぎ話を聞かせるのが大好きなマチ子姉さんが、脳内妄想モリモリでおとぎ話を語るギャグ4コマです。

「マチ姉さんというキャラが妄想した結果の物語である」という設定が上手く、犯人が設定されているおかげで、突飛なネタに対する作品の耐性が高いです。おかげで時代設定を無視したネタも使え、ギャグの火力が増しています。

というか作者さんの発想力が凄まじく、どう妄想すれば思いつくのかわからないネタがガンガン飛んできます。どうなってるんですかユウ子姉さん。


銀狼ブラッドボーン」(14巻) 艮田竜和(原作)、雪山しめじ(作画)

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元伝説の吸血鬼ハンターである老年の主人公が、「骨喰い」と呼ばれる化物の出現を機に再び立ち上がる物語。第八回以来の紹介です。

そこでも紹介した通り、本作の魅力は設定だけでなく作中でも因縁が積み重なっていくところにあるわけですが、この巻はサブキャラの因縁の総決算というべき内容で、非常に満足です。エピソード的にも終盤であり、執拗なぐらいに前フリもされていましたが、予想を上回る最悪をテンポよく見せてくれたのでいい意味で裏切られた気分です。やられました。


心霊スポットに行った時のレポ漫画」 スズキダイチ

そういうやり方もあるのか。


漫画以外へのモチベーションが高まってあまり冊数が読めなかったのですが、読めたものはしっかりクオリティが高く、濃いインプットができたと思います。ごちそうさまでした。



一般書籍

伝え方は『順番』がすべて」 小沼竜太

FGOや真・女神転生シリーズなどのプロモーションに関わった筆者が、ゲーム業界のみならずプロモーション全般に使える考え方をまとめた新書です。

まず重要な点として、この本に具体的にどうすればいいのか、特に個人単位で明日から行えるようなワンステップ目については載っていません。「本書はユーザー・コミュニケーションをプランニングする上での視点を提供することを念頭に置いているので、細かい技法について述べることはしない。」と、本文中にも明言されています。また、上記のゲームタイトルについてのエピソードも出てこないため、ゲーム業界モノとして読むのはオススメしません。
(ただし、イメージエポックの「JRPG宣言」についての話は詳しく述べられています。)

これらの点から、最初は正直期待外れだったかなとも思いました。しかし、本を閉じて自分ならどうするかを考えればいくつもアイデアが浮かんできましたので、考えながら読めば有用な本であることは間違いないと思います。読みやすく時間もかからない本なので、お金的にも時間的にもコストが低いのもありがたいです。

ではなぜ読んでいる最中に有用性を感じにくかったのかについてですが、まず一つは具体的な1ステップ目の記述がなく、どう活用するのかのイメージがしにくかったのはあるかと思います。ですがそれ以上に、2章と3章で挿入されていた「JRPG宣言」についてのエピソード部分が大きい原因だと思います。というのも、読者はこうしたエピソードを読む際、批判的に思考する能動的読書から映画を見るときのような受動的読書へと態度が無意識に切り替わってしまうと思うからです。こうした物語部分が中盤に2回も挟まっており、しかもそれが結構長めなので、書かれている内容の実践例としてよりも単なる筆者のエッセイとして読んでしまった。これが「考えて読む」ことから離れてしまった原因かと思っています。これを防ぐためには、具体例をあまり長くしすぎない、または長くなり過ぎた場合は別の章に分ける、などをすべきかもしれません。また、「JRPG宣言」について当時聞いた覚えがないので他人事として見てしまった面もあるのかもしれず、ここがより「自分事」だとエピソード感がうすれて具体例としての役割を見失いにくいのか、もしくはより面白く読めてしまって逆に本題を忘れ去ってしまうのかは考察を深めたいところです。

構成についてはやや反面教師のようにしてしまいましたが、自分の場合にどう落とし込むかを考えて読めば目から鱗が落ちる本に違いありません。一度読んでおくべき本だと思います。


あの人が好きって言うから…有名人の愛読書50冊読んでみた」 ブルボン小林

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有名人の愛読書について、書評3割本人について7割で語る、「女性自身」での連載をまとめた1冊。なぜか漫画コーナーにあり、地味に高い値段(1200円+税)に迷いながら購入しました。なぜかコミックシーモアにページがあったので、本当に漫画なのかもしれません。

そんな不安まみれの本でしたが、私的には超大当たりでした。まずコミックシーモアで試し読みできる「はじめに」で語られている、女性誌なので芸能人メインで書評を書くことにしたという切り口がとてもいいです。それを最初に「はじめに」で提示して、本書の読み方を示す構成もいいですね。そこから有名人の名前が五十音順に並べられた目次が最高で、本のタイトルでも連載の日付でもなく有名人の名前順で並んでいるのが本当に有名人メインで書かれた連載なのだと伝わってきて声を出して笑いました。職場で。

本文も面白く、1冊につき4ページ分が割かれているのに本への記述が1ページ弱で、あとは1ページ分のイラストと有名人本人についてのコラムという書評とはなんなのか考えさせられる構成になっています。しかし切り口や推している有名人との絡ませ方が上手く、それだけでも読みたくなってくるので不思議です。その独特の視点はコラム部分でも炸裂しており、よくそこに注目したなあと感心させられます。

この有名人と独特の切り口という組み合わせもミソで、読者自身に有名人への見方や印象があるので、筆者さんの目の付け所の異質さに気づきやすく、かつかなり想定外のところが取り上げられてもちょっとは「自分事」感が残るのが面白いです。ブルボン小林さんは「ゲームホニャララ」や「マンガホニャララ」で面白い方だとは思っていたのですが、今回その切り口がハマる題材のおかげでより輝いている感じがしました。オススメです。



Web記事

スプリント王者は学級委員長の夢を見るか ~またはトレーナーは如何にしてバクシンオーを丸め込むようになったか~
記憶せよわが名前、とキングは言った ~あるいはウマ娘に託される物語について

今週のウマ娘枠。

元ネタ(のウマの経歴)をリスペクトしつつ、物語的カタルシスを生むための改変をどうするかについて、ウマ娘のキャラ付けが利いているのではないかという考察noteです。

こういうリスペクトを感じさせる部分が、ウマ娘の人気の一要因なのかもしれません。あとこれ読んでるだけで泣きそうになったぐらいに文と元ストーリーのウマさ(予測変換ママ)が素晴らしいです。


哲学者が考える『独学』を効果的に実践するための“メタ方法論”

学校などで教わるのではなく本やWebなどを使って自分で何かを学ぶ際に、誤った「正解」にたどり着かないようにするための方法論を解説した記事です。

非常に論理が分かりやすく、かつ即行動に移せる1ステップ目が具体的に述べられているため、とてもためになる記事です。やや長いものの全体の構成が最初に示されていて迷子になりにくいですし、そこから用語の定義などをしているので正確性を保ちながら迂遠さを感じにくいのもよくできており、文の書き方すら勉強になります。


齢三十を超えて尚『味覚』が小学生レベルなんですが、どうしたら良いですか

怪文書1(誉め言葉)


『アイドルマスター シンデレラガールズ』の楊菲菲に声を獲得させるRTAを『8万3184時間』やっていると真顔で言う男がいたので話を聞いてみた

怪文書2(誉め言葉)


今週は読書と制作のモチベーションが高く、(たぶん)初めて「一般書籍」に2冊一気に載せたり、土日をテストプレイに費やしたりと、いつもと異なる形で有意義な時間が過ごせたのではないかと思います。まあそのせいで日曜のこんな時間までキーボード叩いてるんですけどね。ははっ!!

新作はかなりいい感じになっていると思うので、しばらくオフラインのテストプレイ会を控え、自主隔離という最強の感染対策の元で制作に集中できそうです。まあ仕事は出勤するんですけどね。ははっ!!

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