符亀の「喰べたもの」 20220814~20220820

今週インプットしたものをまとめるnote、第百回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

ハイパーインフレーション」(1~4巻) 住吉九

体から超精巧な贋札を出す能力を得た奴隷の少年が、売られた姉を取り戻すため奮闘する物語。

昔スマホで4話まで読んで合わないかなと止めたのですが、何度も話題に上がっているのを見て諦めて買いました。そしたら無茶苦茶面白いでやんの。あたしこんなことばっか。ほんとバカ。

一番のオモシロポイントは、賢いキャラが自分の主義や欲に基づきながら頭脳戦をしているところでしょう。各キャラの勝利条件がわかりやすいため、どれだけ状況が絡み合ってもそれぞれの目的はわかりやすく、何の話なのかを見失いにくいです。そのうえで何重にもだましあいの駆け引きがなされ、展開の波が途切れることなく襲ってきます。しかも欲望をさらけ出す瞬間は頭の悪そうなギャグを挟みやすく、火力の高いボケを自然に組み込めています。主人公の特殊能力を生殖能の代替とすることで能力発動時にエロ文脈の演出をぶっ込めるようにするとか、何食ってたら思いつくんですかね。

欲に沿って動くキャラは感情も強くなり、物語が強力に駆動される点も見事で、プリミティブなものの強さを改めて感じさせられました。


名探偵なんかじゃない!~高校生探偵バトルロイヤル~」(1~2巻(第一部完)) 森田俊平

謎の高校生探偵 (と同姓同名のただの転校生) が、周囲の勘違いのせいで全国No.1の高校生探偵を決める大会に出場させられる物語。

「主人公が的外れな推理をして名探偵でないと示そうとするが、周りがバカすぎるし変に察しがよすぎるので事件が解決してしまう」を2巻分繰り返すだけの、良くも悪くもくだらない作品でした。ですが、「濃いキャラをエピソード毎に惜しげもなく登場させる」「主人公がツッコむべきバカポイントにちゃんとツッコんで読者の代弁をしてくれる常識人」の2点が、面白さを生みつつストレスは軽減させてくれて脱落せずに読み切れました。とはいえ正直これ以上はキャラが増えすぎて厳しいと思うので、次回作の方を読みたいですかね。 


庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド」 庄野晶

人間とそうでないものの暮らしを描いた、短編集です。

全体として、2人の間に事件が起こるものの、その後も生は続いていく、という形式の話が多かったです。この「続いていく」というのが厄介で、オチがないようで物足りなく感じてしまいました。ですが、後半で各キャラの話が交差しだすと、そこで彼らの話が収まったような気持ちになり、話のオチはなくてもそれがあるかのように満足できました。おかげで「クライマックス感」同様、ストーリーが交わる点を作ると、そこで物語が終わらなくてもオチのような印象を与えられるのではないかという仮説が得られ、個人的に意義深い一冊でした。


100回目にも関わらずクセの強い作品群に感心するだけの回でしたが、まあこの連載は所詮こんなもんな気がするので、よしとしましょう。「グッド・ナイト・フィールド」がまだ見た目のIQを上げてくれてるのが救いです。


一般書籍

帰省先に持っていった本が面白くなく、戻ってきてからも何か読もうという気が回復せずに読めませんでした。うそ、単にやる気がなかっただけです。


Web記事

【作者直撃】『マスクメン』の作者、新澤大樹さんにインタビュー。趣味はボードゲームのルールを読むこと?

ボードゲームを作った人にインタビューをして、その人がボードゲームに触れるきっかけやゲーム制作の苦労話などを聞き出す【作者直撃】企画の第4回目です (本文より引用)。なお、第1回目は1年前に紹介しています。

兼ねる」の利点を「複数意味を持たせると、2択しかなくても別のことを考えた上で2択を選ぶじゃないですか。」とおっしゃられていて、なるほどとなりました。私には鑑賞者側プレイヤー側の心理から「兼ねる」の言語化ができていなかったので、勉強になりました。


チケット転売は、もうできなくなる。ジャニーズも挑戦する“コンサートチケットNFT化”の影響

NFTを投機対象でなく長期的な価値を持つものとしてとらえたジャニーズの例など、NFTの可能性について述べられた記事です。

NFTは「誰が入手し、誰に譲渡されたのか」を記録するトークンだというのは勉強していましたが、それを投機以外の方法に利用できるというのは気づいていませんでした。考えが凝り固まっていたなと反省しています。


本連載も100回目の節目を迎えました。かなりボロボロの状態ではありますが、なんとか続けることだけはできています。今後ともよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?