符亀の「喰べたもの」 20210905~20210911

今週インプットしたものをまとめるnote、第五十一回です。

各書影は、「版元ドットコム」様より引用しております。

所用により、日曜日に更新しています。


漫画

ブーツレグ」(2巻) ヤスダスズヒト

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魂を持ち人を襲う100双の手袋「Hand-Red」を倒すため、それらに愛する者を奪われた者たちが「鎮魂靴」を履いて立ち向かう物語。なお10月5日までニコニコ静画で1巻分が順次公開されるようです。(たぶん14日の次回更新で最後まで揃うはず。)

その1巻も面白かったのですが、2巻でさらにアクセルを踏み込んできたなと思いました。本作は因縁や厨二病的かっこよさによる燃える展開を圧倒的画力で叩きつけてくるのが魅力なのですが、この巻では300ページを1エピソードに全て費やすという豪華なやり口によりクライマックスの盛り上がりが凄まじいことになっています。

設定面では、「枕詞」という2人の能力を掛け合わせるコラボ技の設定が上手いと思いました。本作では各キャラに因縁のある「Hand-Red」がいる分、逆にそれ以外の敵には多くのキャラが空気になりうるというリスクがありました。特に、主人公が「青天井」という「鍛えた分の力で肉体の限界を超えた超高火力攻撃が可能」、つまりアタッカー以外は何もできない能力なため、因縁を無視して主人公がぶちかますか要らない子状態になるかというどちらにせよ問題のある展開になりうる点が懸念点でした。しかし「枕詞」によって「青天井」に「因縁はあるが力が足りないキャラのバッファー」という新たな役割が加わり、この問題が一気に解決されました。能力の発動条件上そのキャラと2人で同時攻撃しなくてはならないため、両者に見せ場が作れるというのも美味しいです。

また、この「枕詞」の説明が作中でほぼなされていない(なので普通に嘘書いてたらごめんなさい)のに、説明不足によって置いていかれる感が薄かったのも面白いポイントです。「枕詞」の初登場シーンでは、「これがブーツレグのとっておき…『枕詞』だ!」と言いながら「露払」の能力者が主人公の靴を蹴り、「露払の青天井!」と出ながら周囲の敵を蹴散らしている。これ以上の説明は一切ありません。しかし、その直後に「枕詞」の例が計3回連続して現れ、これらから帰納的に「枕詞」の意味とそれにおける「青天井」の役割がなんとなく察せられる形になっています。山場での演出の力で読者をハイにさせることで一旦説明よりも次どうなるのかが気になるようにさせ、その後連続で事例を見せることで頭が冷める前になんとなく理解をさせてしまう。このテクニックは覚えておきたいですね。


怪獣8号」(4巻) 松本直也

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怪獣が定期発生する日本で、怪獣になりながらも憧れのため戦う中年男性の物語。第三十七回以来の登場です。

こちらも非常に面白く、いい巻でした。表紙の副隊長の活躍から他キャラ、そして主人公へと繋いでいく流れは、王道ながらも「クライマックス感」を生み、熱い展開をもたらしてくれています。

終盤の他部隊移籍イベントも、ある程度キャラや関係性が固まってきたところで一部を休場させ、新キャラが来ても渋滞しにくくするいい展開だと思います。「中年男性がそれまでの努力と知識で頑張る」という序盤の持ち味が薄れてきたところで主人公の目的を再確認させて「主題」を再定義するなどの細かい気配りも合わさり、没個性的でない王道漫画として脂がのっているのを感じます。


「ブーツレグ」が非常に面白かったので、それを次回作にパクれるレベルまで消化しようとした結果、1日おいての日曜日更新になってしまいました。結局〆切的に読んだ直後に分析したのと同じ内容で書かざるをえなくなり、制作の時間も食ってしまいと散々な形になってしまいましたが、時間ができ次第より深く吸収するためリベンジしたいところです。



一般書籍

1ページも読みませんでしたねそういえば。ちなみに今週はハードカバーを3冊買いました。


Web記事

ワーカープレイスメントの定義

Twitterでワーカープレイスメントの定義をめぐる話が交わされていたのを受け、それについて書かれたnoteです。なお私が当時確認したそれに関するツイートはこれぐらい(しかし面白いご指摘)で、完全に乗り損ねたと思っています。

帰納的な定義は一意に定まらず、故に個々のゲームを考える際のツールにすぎないというご指摘はもっともだと思います。その上で、より最大多数の同意が得られて分類的にも問題の無い分け方ができないかというのが今某所で取り組んでいる話でもあり、個人的にホットな話題として読めました。


オンエア後、加藤浩次から一喝。青木源太アナが語る“社会人に求められるコミュニケーション力”

青木源太アナウンサーに、「ビジネスパーソンが克服すべき“口下手”の壁」をテーマに取材した記事です。

「“場回し”に必要なのは『回収する力』。」という言葉に、はっとさせられました。司会について感じていた違和感や改善点について、とてもスッキリさせていただきました。


コスメとギターエフェクターのビジネスモデルはほぼ同一

スキンケア用品とギターのエフェクターの売り方の類似性について書かれたnoteです。

「スキンケア商品を買う際、エフェクターを揃える気持ちで買っていくと、理解がしやすい。」と言われても、まずエフェクターを揃える気持ちがわからないんだよと突っ込みたくなる切り口が面白いです。その上で、「スキンケアとは、顔にエフェクト(効果)をもたらす道具にほかならないのだから」となかば強引に読者を納得させ、どちらも知らない人にも丁寧に説明していく文の運びが、読んでいて気持ちよくなれる名文です。


サザエが新種だと私が気づくに至った経緯
サザエ後篇

筆者さんが日本のサザエが実は新種として記載命名する必要があると気づくまでの経緯をまとめられたツイート群です。

きっかけがとても運命的で、かつそうした偶然を活かすための好奇心や知識の重要性について、面白くも自らを鑑みさせられる内容だったと思います。


【Senpai 問題 続報】

「Senpai」という単語が、「自分の想いに気づいてくれない存在、相手」という意味でネットミーム的に広まっていることをまとめたツイート群です。

挙げられている海外のサイトも含め、面白い展開と指摘だと思います。そちらではアニメにおける先輩後輩の関係がギブアンドテイクでなく打倒すべき上下関係とされているという指摘などより深い考察もまとめられており、その点も興味深いです。


20世紀日本語の英語化

前回リンクだけ示した、日本語の英語化に関する文献です。

言語面だけでもこれが英語から来ているのかと驚くものが多いですが、思考面でも平等さや科学的因果関係の重視といった影響があるという指摘には舌を巻きました。とても興味深い文献です。

また[6.6]にある、インターネットによって各世界の情報を(英語臭い翻訳文も交えながら)楽しめるようになったためより英語化が進むだろうという予測がとても面白いと思います。私の観測できる範囲では(これも英語らしい言い回しですが)、日本語の情報だけでいっぱいいっぱいでわざわざ英語の情報を翻訳してまで見ようと思う人はほぼおらず、いても機械翻訳の発展で文構造から日本語らしくなった訳文を読めるため、この予測とは反した現代になっている気がするのですが、いかがでしょうか。


制作のため今週は少ない冊数でさっと終わらせるつもりでしたが、良質かつ濃い作品やWeb記事が多かったせいで結局かなりの時間を食われてしまいました。ですがなんとか作業もあと少しとなりましたので、来週は馬鹿みたいに本を読めるよう頑張りたいと思います。

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