符亀の「喰べたもの」 20230326~20230401

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 132です。

各書影は「版元ドットコム」様より引用しております。



漫画

DOCTOR PRICE」(1巻) 逆津ツカサ(原作)、有柚まさき(作画)

生涯年収が多いからと医師になり、より稼げるからと医師専門の転職仲介業を始めた男と、彼のもとに集まる商品たちの物語。

途中まで「ヤバいやつが制度の裏を突いて周りを食い物にしつつ活躍する」的なテンプレ作品かなという印象でしたが、第2話で振り回される女の子ポジっぽかったキャラが意外と食えないやつだと判明したところから面白く読めました。自分が作品の内容 (どんな制度の裏をどう突くのか) よりテンプレかどうかを気にしていると気づくのは正直気分が良くなかったですが、それほどに驚きの有無が印象を左右すると認識できたのは良かったと考えることにします。


ザ・キンクス」(1話) 榎本俊二

すごいものを見ました。


今週も製作や一般書籍に時間を割いたせいで、漫画のインプットは少なかったですね。不甲斐ない週が続きましたが、来週はジャンプコミックスの発売日なので冊数は戻ると思います。なお製作もより忙しくなる予定。


一般書籍

わたしたちはなぜ笑うのか」 中山元

笑うという動作を「おかしみの笑い」「社会的な笑い」「批判的な笑い」の3つに分類しつつ、その哲学と文学における歴史をまとめた本です。

個人的には、あまりいい本だとは思えませんでした。まず上記の3分類に理論的な裏付けがなく、「批判的な笑いをするときにおかしみを感じてはいないのか」などの問いに答えていません。このあやふやな分類を基に論を展開するので、特に序盤において本書が信頼しにくい状態で話が進み、結果疑わしい印象で読み終えてしまいました。また、あくまで歴史的に笑いがどう分析されてきたのかを並列的にまとめたに過ぎず、どういうストーリーで各議論をまとめたのかや筆者さんなりの考察があまり伝わってきませんでした。言ってしまえば、この本で笑いを学ぶ意味を感じないと思います。

辛口に書いてきましたが、第三章で語られる「道化の笑い」の話は私の知らない内容でしたし、内容も非常に良かったと思います。「道化の役割はこの他者の認識と自己の認識の落差を生き、演じることにある。(77ページ)」、つまり愚かな自分を笑わせることで反面教師的に真理を指摘するのが道化の仕事であるというまとめ方は面白く、勉強になりました。他、フロイトの「機知とは、『似ていないもののあいだに類似をみいだす、つまり隠されていた類似点をみいだす技能』」という指摘 (117ページ)など、3章は内容が濃くて面白かったですね。ていうかページ数の半分が3章ですし、変に他の章で歴史をまとめて論をぐちゃぐちゃにするよりもここを整理して膨らませて書籍化したほうが面白かった気がするんですけど、どうなんですかね。


Web記事

[GDC 2023]Blizzard Entertainment創設者アレン・アドハム氏が語る,同社30年の歴史が生み出したゲームデザイン“12の原則”

Blizzard Entertainmentのチーフ・デザインオフィサーであるアレン・アドハム氏の、12の原則 (以下に引用) に関する講演のまとめ記事です。

・プレイヤーのファンタジーを満たす
・ゲーマーは皆,ヒーローになりたがっている
・学びやすいが,マスターしにくい
・ゲームプレイが最優先
・自分でプレイしたいようにプレイできる
・カッコ良さに集中せよ
・破壊力抜群の表現
・罰ではなくボーナスに
・操作性の追求が絶対
・すべては友達とプレイしたほうが楽しい
・無限のプレイアビリティ (「ゲームプレイ」「成長」「収集」「ソーシャル性」「ユーザー制作コンテンツ」)
・ちょっとだけ遊びを入れる

個人的には、1つ目の「プレイヤーのファンタジーを満たす」(共有されている世界観を元にする) と2個目の「ゲーマーは皆,ヒーローになりたがっている」(からすぐ上手くプレイできるようにするか上手くできそうな気にさせる) が特に印象的でした。定期的に問題ないか見返す指標にしたいですね。


[GDC 2023]『MARVEL SNAP』のゲームデザインはピザ作り。クリエイターのベン・ブロード氏が語るゲームデザイン

MARVEL SNAP」のチーム統括者であるベン・ブロード氏によるトークセッションについてのまとめ記事です。

「負けた時のストレスを軽減することで,勝利したときの喜びがさらに高くなる」ため、負けた側にもダメージ軽減要素をつけて「傷を浅くした」という成功体験を与えるデザインがうまいと思いました。負けた時のメッセージを「You Lost!」から「Escaped!」にするのにどれだけの意味があるのかは分かりませんが、そこまで敗北時の気持ちに寄り添うのが大事なのでしょうね。


[インタビュー]「MARVEL SNAP」を手掛けたカードゲーム界のレジェンド,ベン・ブロード氏が考える“エレガントな”ゲームデザインとは

同じく「MARVEL SNAP」のチーム統括者ベン・ブロード氏に対する、インタビュー記事です。

ダメージコントロール要素があるからこそ、ランダム性の高いデザインが実装できているのが面白いと思いました。他のカードゲームとの差別化点にもなりますし、撤退せざるを得ない状況を作りつつそれに対する言い訳も用意できているわけで、とても面白いシステムだと思いました。


【私的検証試案】 なぜ『Yahoo!』『Google』ですら 『マスメディア』になれないのか?

愛の妖精ぷりんてぃん」の管理人さんが書かれた小論文です。当サイトの初代管理人さんへのインタビューをきっかけに拝読しました。

インターネットのメディアは学術書的な“クール”なレイアウトであり、娯楽を提供するマスメディアになるためには雑誌のような”ホット”なレイアウトになる必要があるという指摘は、非常に面白いと思います。また、スマートフォンというスクロールが気持ちいいデバイスの登場により長々とスクロールするWebページの可能性が生じたという考察も面白いです。それにより多様な情報をスクロールで取捨選択させながら一気に見せられる可能性についても、Webコンテンツがターゲティングにより欲しそうなものだけ見せる方向に進んでいる現状と比較すると示唆に富んでいると思います。その上でぷりんてぃんがお出しされるのも含めて、噛めば噛むほど味がする記事だと思います。


『シャニマス』開発スタッフインタビューアート編。シナリオを読み込み、アイドルの心情をイラスト化。黛冬優子の誕生秘話も明らかに!

アイドルマスターシャイニーカラーズ」のイラストを手掛けるアートチーム所属の雲丹さんと、制作プロデューサー高山祐介さんへのインタビュー記事です。

キャラクターデザインについて、アイドルマスターシリーズの総合プロデューサーの坂上氏が「髪の毛と鼻から下を隠して、目だけを見てほかの子と似ていないかをチェックしてい」るというのに感嘆しました。これまで私がキャラデザをするときには目元をそこまで重視していなかった (結果魅力的なキャラになっていなかった) ので、もしまた機会があれば意識したいなと思います。


SNS更新が止まった斑鳩ルカにざわつくファンたちまとめ

「アイドルマスターシャイニーカラーズ」の運営が、作中世界におけるSNSまとめサイトかのごとく制作した記事です。

この記事で初出しの新情報がない (強いて言えば、ファン以外から見たこのキャラへの印象ぐらい) のがすごいなと思います。わざわざ一個記事を作るので、拡散用のフックにもなるし新しい情報をなんか載せても良さそうなものですが、それをやらないことで作中世界のSNSまとめサイトとしての質感が損なわれていないと思います。でもそこまでして悪意ありそうなまとめサイト模すだけなのキモいよ (褒め言葉)。


新作「シリアリアン」の箱を入稿しまして、「ゲームマーケット2023春出展者向け事前試遊会」で初披露いたしました (ただしカードが間に合わなかったのでコピー機で印刷しての参加)。来週以降も試遊会の予定が詰まっており、いよいよゲムマが近づいてきた感じがいたします。休みてえ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?