符亀の「喰べたもの」 20230402~20230408

今週インプットしたものをまとめるnote、No. 133です。

各書影は「版元ドットコム」様より引用しております。


漫画

神獣の執刀医」(1巻) 水水 水水水(原作)、出口景(漫画)

住民に加護を与える神の不調を治す、「幻獣医」の物語です。

設定もキャラも魅力的で、とても面白く読めました。ですが正直、1話時点では設定は面白いねぐらいの感触で、2話で看護師の新キャラが出てからちゃんとのめり込めたという印象です。その理由は、1話が最初数ページで想像される話そのままを出力されたものだったからなのかなと思っています。巨大な神を治す医者、その医者は変人だがおそらく腕は確かで、その助手が主人公。ということは助手に手術以外の見せ場があるはずで、なんらかのトラブルを解決するような場面が来るのでは。これが設定と2人のキャラを見た時に受ける印象で、絵の迫力は見事ですが、1話の筋書きはこれそのまんまなんですよね。予想を外そうとしてスベられるよりはマシですが、まあそうなるよね感を抱き続ける読み心地だったのも事実でして。

そんな中、2話で天然ゆえに他キャラと漫才する系のメイドが現れるわけです。彼女によって、「天才医師とそれに振り回される助手が神を治す」という本作のフックにあたる部分と違う面が描かれます。こうしたフックと違う面、というかキャラの役割を遂行するためとは違う面 (要するにテンプレじゃないところ) を見たいというのが、私の好みの中核なのかなと感じました。

あと、2話のエピソードで「助手が医師を助ける」場面は、1話のときほどテンプレっぽさを感じなかったんですよね。これは、その助け方に伏線が貼られていたのが大きいのかなと思います。伏線が回収されることによる納得感は、テンプレ進行を疑う余計な考えの入り込む隙間を埋めてくれるので。まあ、オッカムの剃刀的に考えると、もう既に好感を覚えた後なので嫌らしい見方をしにくくなっていたというだけかもしれませんが。

というかオッカムの剃刀的には、メイドさんが来てから好意的に読むようになった理由も単にメイドさんが可愛かったからだけかもしれませんが。


SAKAMOTO DAYS」(11巻) 鈴木裕斗

元伝説の殺し屋、今太った商店店主。そんな坂本太郎と、周囲の殺し屋たちによるアクションコメディです。第九十八回以来の登場です。

この巻には、びっくり系の大ゴマが多数出てくるんですよね。好きなものも個人的にいまいちなものもありましたが、90話終盤のアレと96話終盤のアレは特に好みでした。この2つは両方とも、キャラが派手に登場する系のびっくり演出なんですよね。それもただ見知らぬキャラが唐突に割り込んでくるのではなく、その場にはいたものの退場したと思われていたキャラや、既に登場しているキャラとコンビを組んでいるキャラと、出てきてもおかしくないキャラが出てくるわけです。なので驚きと共に「お前か!」の納得感も生じるので、想定している筋書きがぶった斬られた不快感が少なく受け入れやすくなっているのかなと感じました。最初から全員出すよりも、この方が、話がスッキリするわ見せ場も増やせるわで二度美味しいですね。


逃げ上手の若君」(10巻) 松井優征

鎌倉時代から室町時代への狭間、死を栄誉とする武士の時代に、生き延びることで英雄となった一人の少年の物語。No. 120以来の登場です。

キャラクターの死にっぷりが豪華で、ここまで贅沢にキャラを退場させていいのかと思いました。もちろん作者さんがまだまだ魅力的なキャラをかけるからできることという面もありますが、それと同時に、歴史ものである点がこのキャラの使い捨てを可能にしているのだと思います。というのも、もしキャラがあっさり死んでも (本当かはさておき) 史実ではそうなっていたのかなと納得しやすいですし、それでもまだ後釜が控えていることについても、「まだおんのかよ」感による展開の遅延を意識しにくいを思います。本作を分析するたび、歴史ものの強みを再認識できてありがたいです。


寿司ガキ」(1~3話) ichika

生意気少女と隣のお兄さんが寿司を食うギャグ漫画です。短期集中連載最終回ということで一気読みしました。

「そこを突かれると弱い♡」「座して待て♡」のような急ブレーキ系のギャグに弱いですね私。「いわゆるメスガキ系語録でずっとしゃべると思ってたらいきなり壮年男性みたいな物言いになる」ことで、無意識に抱いていた使用語彙への一貫性への期待が誤りだと判明するからでしょうか。というかこういう風に雑にまとめると、「テンプレの権化みたいなキャラがそのテンプレから外れたことをする」というのは、 本当に単なる権化ではなくそのキャラなのだから時に逸脱してもおかしくないというのも込みで、汎用的で使いやすいユーモアな気すらしてきました。


卒業アルバム【 セピア色の孤独 より】

「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の二次創作漫画です。

1本目の3コマ目と4コマ目の間の展開の早さがエモいなと思いました。4コマ漫画でこういう唐突な展開は「転」、つまり3コマ目でやるのが一般的かと思いますが、(1本の4コマで完結していない漫画ですが) そこ以外で展開を早めると時間的な速さが強調されるように感じます。特に今回の漫画だと、それがアルバムが白紙なことに対し言葉に詰まっているのを気にしておらず、ただ衝動的に行動しただけ (だからこそ救いになる) とわかる演出になっているのが上手いなと思いました。


試遊会やらなんやらで忙しい週でしたが、ジャンプの週はそれでも漫画を読む気になるのでありがたいです。まだ老いてない。大丈夫大丈夫。


一般書籍

先週読み切ったから今週は…ネ。


Web記事

TikTokでバズるショートフィルムのつくり方 #1 【脚本の書き方】『視聴者の人さし指をとめろ!』
TikTokでバズるショートフィルムのつくり方 #2 【撮り方】『カメラが置ける場所を探せ!』
TikTokでバズるショートフィルムのつくり方 #3 【編集】『心の動きを映せ』

カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督とTikTokフィルムクリエイターの土井康平さんが、全3回にわたってショートフィルムの作り方についてお話しされた生配信の書き起こしです。

各回どれも学びがあり、素人ながら楽しませてもらいました。第一回は、TikTok上でおすすめに載るために視聴時間や視聴完了率を高められるよう、エンドクレジットを短くしながらコメントを書かれやすくする (書いている間も動画は再生される) くだりが中の人らしい視点で面白かったです。第二回は、TikTokの縦型画面は最初からトリミングされたような画面であるためその中だけ仕上げればセットがなくても場面を作れるというのになるほどと思いました。第三回では、心が動いている方が映るように編集するというのがわかりやすい指針でいいなと思いました。


画像生成AIの学習について絵描きにアンケートを取った結果と今後の考察

画像生成AIに対する絵師さんの反応をアンケートで調べつつ、結果を踏まえながら今後について考察されたnoteです。

中盤の、「絵というのはごく一部以外は『人力で安い』」(のでコストダウンのためにAI絵が重宝される可能性は低い) という話と、(初音ミクと比較して) 「声は明確な形のないもので、しかも『歌』という様々な作曲者の個性を伝えるための媒体だから飽きられることがない」(が絵柄は飽きられる) という話が面白いと思いました。前者は、イラストレーターである筆者さんだからこそ説得力のある発言で、少なくとも企業ベースの予算感であればうなづけます。後者の方は多分、使用に耐える成果物が一発で出てくるのかどうかが差で提示されている論点は主ではない気がしているのですが、逆に言えばAI絵を「使用者の個性を伝えるための媒体」として使えば飽きられにくいのかもしれないというのが考察できたのがよかったです。もちろん、この仮説は全AI絵利用者がそうした利用法で扱うという前提の下でしか成り立たないので、飽和による飽き防止という点では無理な理論なのですが。


PassCode - Freely

twitterで流れてきて好きになった曲です。

最初聞いたときは完全にFear, and Loathing in Las Vegasやんけと思いましたが、調べてみるとこういうジャンルが「ピコリーモ」として確立していたようです。好きな系統の曲がジャンル化して増えるの、ボク、うれしい。


Wave Leads You...

1週間でゲームを作るイベント「Unity1週間ゲームジャム」で制作された、波状に動くブロックを渡ってゴールに向かうゲームです。

表面クリア後のEX3で挫折しましたが、非常に面白いゲームでした。「波」という1つのルールで世界が動いているため、波さえ起こせば世界全てに干渉できそうな感覚がいいなと思いました。反面、アクションの判定がシビアでパズルの答えがわかってからの試行錯誤が必要な点、その分クリアした面でももう一度クリアするのに時間がかかるにも関わらず4ステージごとでしかリトライできない点、あろうことかステージを戻されるギミックすらある点など、すぐリトライできないことによるストレスを感じる部分がいくつかあったのは残念ポイントです。はい、完全にEX3をクリアできなかったことへの私怨です。


1日の有限浪漫さんの事前試遊会、および4日の有明亭さんのゲムマ直前試遊&交流会で、「シリアリアン」を初披露いたしました。特に4日の方は非常に熱い感想をみなさんからいただき、早くも注目いただいているようでありがたい限りです。我々符亀は、皆様のご支援によって生きながらえさせていただいております。

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