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【DAY 9】評判は良いけど自分は苦手って思う映画 「千と千尋の神隠し」

DAY 9
a film you hate that everyone else liked.
評判は良いけど自分は苦手って思う映画

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「千と千尋の神隠し」(2001)
宮崎駿監督
(声の出演)柊瑠美、入野自由、夏木マリ、神木隆之介、菅原文太

千尋(柊瑠美)は、八百万の神が住む村へ迷い込み、両親を豚にされてしまう。帰れなくなって困っているところ、ハク(入野自由)という少年に助けられ、湯婆婆(夏木マリ)の湯屋で働かせてもらえることになる。しかしその代わりに名前を奪われ、「千」と呼ばれることに。
ハクは、湯婆婆に命じられて双子の姉の銭婆から魔女の契約印を盗み出すが負傷する。銭湯では「カオナシ」と呼ばれる化け物が大暴れするが、千が団子を食わせたことにより解決する。そして負傷したハクを助けるために、千は銭婆の元へと向かう。

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日本興行収入は300億円を超え、2位の「タイタニック」(1997)を大きく引き離して堂々の歴代1位。アカデミー賞長編アニメ賞を始め、ベルリン国際映画賞金熊賞アニー賞など、世界中の映画賞を総なめ。金曜ロードショーで放映したときの視聴率は、なんと46.9%だって。
うちのmacbookですら、「ゆばあば」と打って変換すると「湯婆婆」に、「ぜにいば」で変換すると「銭婆」になった。ここにまでその力が及んでいたのか・・。

そんな大巨人に立ち向かって大丈夫なんだろうか。

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まずこの映画、映像だけで言えば、あまり先鋭的なものはない。
ルパン三世 カリオストロの城」(1979)とか、「風の谷のナウシカ」(1984)のころは確かに、ジブリのアニメ制作の映像技術は世界中でトップランナーを走っていた。
しかし、90年代、急速な技術革新により、実写とCGの垣根が取り払われ始めた。「ターミネーター2」(1991)に始まり、「ジュラシック・パーク」(1993)、「インディペンデンスデイ」(1996)、そして「マトリックス」(1999)、これらの4つの映画のヒットが契機だったと思う。コンピュータグラフィックは、ついに作り物に見えなくなり、21世紀の映画デジタル時代が幕開けをした。
本作が公開された2001年は、まさにそんなタイミングだったのだ。

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一方で、「話の意味がわからない」と言ってるわけでもない。
確かに、ストーリー展開は荒唐無稽で、前述のあらすじは、いったいこれは何を書いてるんだろうな、と自分でも思う。だって、全てのセンテンスにおいて「なぜかというと」に続く言葉が書けない。

だけど別に、それはそれで構わない。なんで千尋が「この中にはお父さんもお母さんもいない!」とわかったのかについて、小難しい解釈を垂れたいわけじゃない。

映画、演劇、小説、漫画、どんな表現方法であれども、フィクションは人が創作をしたものなのだ。しょせん他人が作ったものなんて、全ての意図を理解することなんて不可能であり、むしろ全てを説明してしまうと下世話だ。こちとらゴマンと映画を観てきてるんだ、理不尽な展開があっても、それを理不尽なまま飲み込むくらいに、フラットに映画鑑賞をする姿勢は持っているつもりではある。

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それでは、なぜ僕はこの映画にイチャモンをつけるのだろうか。それは、映画自体には何の罪もなくて、いったい何かというと、「ジブリだから」と盲信してしまう鑑賞者たちの態度が気に入らないのだ。

千と千尋の神隠し」は、まあまあ面白い映画なのだ。少なくとも、僕の2時間をきちんと、生産的な暇つぶしで埋めてくれる。でもさ、この映画が面白いんだとしたら、「パシフィック・リム」(2013)や「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010)や「いかレスラー」(2004)だって、おんなじように面白い。しかし、果たして、それらの映画は、同様の評価を得られているのだろうか?

つまり、ジブリ映画が苦手、というか、天邪鬼な僕の、歪んだ偏見による逆恨みに過ぎないわけだ。ちっともフラットに映画を観れていないじゃないか、と言われそうだ、すみません。

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また、本作の大ヒットにもうひとつ功罪があるとすれば、それ以降の日本のアニメ映画が、宮崎駿の怨霊が取り付いたような作品で溢れるようになったということだ。「コナン」とか「ワンピース」のような企画モノは置いといて、作家のオリジナルな作品は、だいたい「ファンタジー世界に足を突っ込む少年少女が宇宙を飛ぶ」というテンプレートから抜け出せなくなった。細田守の「サマーウォーズ」(2009)、「バケモノの子」(2015)とか、新海誠の「君の名は」(2016)や「天気の子」(2019)などをその例にあげておく。

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