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【DAY 22】あなたを怒らせた映画 「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

DAY 22
a film that made you angry.
あなたを怒らせた映画

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「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016)
ギャレス・エドワーズ監督
フェリシティ・ジョーンズ、ティエゴ・ルナ、ドニー・イェン、ベン・メンデルソーン、フォレスト・ウィテカー、マッツ・ミケルセン


惑星を滅ぼすほどの威力を持った兵器、デス・スターの開発者のゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)は、過去、帝国軍に妻を殺され無理やり仲間に引き入れられたことを根に持っていた。ある日、帝国軍パイロットのボーディ(リズ・アーメッド)に、メッセージを託して脱走させる。一方、その娘のジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)は帝国軍に逮捕されていたが、反乱軍に救出される。彼らの目的は、ボーディが拘束されている反帝国勢力のパルチザンのリーダー、ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)との仲介をさせること。彼女は両親と離れ離れになってから、ソウに育てられていた時期があった。
反乱軍のスパイのキャシアン(ティエゴ・ルナ)と元帝国軍ドロイドのK-2SOと共に、なんとかボーディを見つけ出し、父のメッセージを見ることができた。それによると、デス・スターには致命的な弱点がある、ということ。その設計図のデータがある惑星スカリフへ潜入する一行だが、帝国軍の凄まじい攻撃に遭うのであった。

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このスピンオフ、単品としての出来がずいぶん良くて、面白い活劇としてまとまっており、文句のつけようがない。では何に怒っているのかというと、「スター・ウォーズってそういうことじゃないでしょ!」と言いたい。怒っているというか・・、そろそろスター・ウォーズ愛について書きたかっただけなんだけど。

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僕は「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(1983)の公開の年に生まれ、初期3部作は小さな頃からテレビ放映で何度も観ていたので、この壮大なスペースオペラの世界は、当たり前に存在しているものとして受け入れられる「スター・ウォーズ・ネイティブ」だと言える。「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(1999)からの3部作の頃は、ちょうど青春まっただ中なので、若きアナキンの葛藤を自分ごとに照らし合わせて、すっかり感情移入した。「スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒」(2015)からの3部作では、もう十分に大人になり、映画館で悠々と鑑賞した。そんな風に、「スター・ウォーズ」とともに育ってきたと映画人生だったと言ってもいいかもしれない。でも、ノベライズや「クローン・ウォーズ」のようなアニメ版をすべてコンプリートするほどのコアなマニアではない。ジャバ・ザ・ハットのフィギュアを持ってはいるけれど、コスプレして集会に出掛けることはしない。それくらいのところに位置したファンだ。

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本作は、近年ハリウッドに広がるダイバーシティの波の例に漏れず、新たに多種多様なキャラクターが集結した。最初の戦闘が起こる「ジェダ・シティ」は、地球で言うところのアジアっぽいような街、という設定なのであろう、その地に住む盲目の棒使い、チアルートを演じたのは、香港の大スター、ドニー・イェン。これまでのアクションと言えば、主に剣術と銃撃戦だったスター・ウォーズの世界に、素早いのに重いというカンフーの要素が加わると、これまたずいぶんと格好良かった。また、彼とコンビの、いかにも傭兵然としたキャラクターを演じたチアン・ウェンは、香川照之が出演した「鬼が来た!」(2000)で監督主演をした人。ロケット・ランチャーみたいなので、ひとりAT-ATに立ち向かうのにはしびれた。マッツ・ミケルセンフォレスト・ウィテカーも、その存在感を惜しみなく発揮していた。

そんな、立場や人種の違う、個性的なキャラクターたちが、ぶつかり合いながらも、最後には一致団結して巨悪に立ち向かっていくという構成になっている。彼らの活躍のおかげでデス・スターの弱点がわかり、転送された設計図をレイア姫がR2D2に託し、そして「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」(1977)にそのまま繋がるわけだ。

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でも、スター・ウォーズって、そういう、言ってみれば道徳的な「みんなで協力し合いましょう」という映画でいいのかなあ。

僕は、このシリーズの醍醐味は「天才がくよくよと悩む話」ということろにあると、個人的に解釈している。ルーク・スカイウォーカー、ダース・ベイダー、レイ、そしてカイロ・レンという、圧倒的な力を身につける者たちが、その運命に立ち向かっていく。彼らは、血の繋がりや悪の誘惑に煩悶し続け、最後にはそれに打ち勝って/もしくは負け、最終的には天才の力で全てを掌握してしまう、という、言ってみれば非常に独善的な物語なのだ。「仲間」とか「戦争」とか、そういう社会的なものは、あくまでも副次的な「状況」にすぎない。

僕がシリーズ中で一番好きなのは「スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ」(2017)だ。この映画のルークという大天才は、カイロ・レンの育成に失敗した過去を持ち、レイもどうも危なっかしい、という状況の中で、ラストでは結局、御大自ら、とんでもない技を使う。「これこれ、こうでなくっちゃ」と思った展開であった。映画ファンたちの間では、ずいぶん評判が悪くて、「8はなかったことにしちゃおう」と言われてしまっているようだけど、なんでだろうなあ。

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