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aftersun/アフターサンを観た

(7月頃の内容です)
前から気になっていたアフターサンを観てきた。
観る前に少し感想を検索してたので、話の概要は把握しており泣くつもり満々でハンカチ2枚持参で行った。

(ここからネタバレ含みます。とっちらかった長文になると思います)

冒頭のビデオのシーン。ハンディカムの映像、映像の中の服装や持ち物でうっすら90年代の映像かな?と想像する。いまこの映像を見ている女性は、映像の中の少女なのかなと想像がつく。
90年代が過ぎ去った昔である認識が私の中にあまり無く、ついこの前の感覚なので、ウッとなる。
90年から30年経ってるし10代が大人になるには十分すぎる時間が経過している…。

父娘の旅行が始まる。しょっぱなからバスで長距離移動していて、低予算旅行なんだなと想像。
到着した宿もフロントに人が常駐してないような中級宿の気配。
疲れてないよ、と言いつつ着の身着のままでベッドで爆睡する娘の寝息が心地良い。優しく靴を脱がせるお父さん。親子の優しい時間がそこにあり、いつまでも見ていたいと思う。その後お父さんはベランダに出て所在無げに身体を揺らし煙草を吸う。
このお父さん、難しいなと思わさせるシーンである。

淡々とした旅行の様子が続く。食べて寝てアクティビティやって。なんだか一緒に旅行をしている気分になる。3日分だったようだがもっと長く感じて、ずいぶん長期のバケーションなんだなと思ったほど。
基本まったりした親子旅行の様子なんだが、そんな中ちょいちょい不穏な要素が入ってくる。

子供の頃何を考えていたか娘にビデオインタビューされ、動揺する父。カメラを止めてくれだなんて、普通じゃないよね。
この娘は、父親の不安定な気持ちをわかっていて、そして自分の知っているベストな方法でお父さんに元気になってほしいと思ってるんじゃないかな。
子供がそんな想いをしている事に、悲しくなる。

お父さんが1人迷いの無い様子で夜の海に歩き出すシーンは心から心配した。迷いなく死に向かってる感じがしたので。この演技、よくできるな。
その後ちゃんと部屋に戻ってきててホッとした。裸だったが。娘は部屋を締め出されて、戻ってきたら父親が全裸で爆睡する姿に何も思わないわけないけど、そこは特に描かれることもなく。

ホテルのオールインクルーシブプラン?の客はリストバンドをしていて、この親子は対象じゃないけど、一緒に遊んでくれる青少年達はみんなリストバンドをしていて裕福そう。
主人公の親は相当頑張ってこの旅行をプランニングしたと思うが、こういうところに差が出ていて辛い。
青年達がみんな良い人達なのも、なんか辛い。

キリムの店で清水の舞台からダイブ的に高いラグの購入を決断した父親は、なにかと引き換えに決断した予感がした。

暗闇に光るフラッシュの合間に父親が踊っている姿が見える。苦しそうだ。娘が手を差し伸べようとしても、娘には来てほしくない雰囲気がある。
懊悩に没頭させてくれとでも言いたげだ。
これを見て、私は思い出した風景があった。
私の父は15年前に亡くなったが、亡くなる前数日間は意識が無く、たまにうなされても問いかけへの反応はなかった。
そんな中私は、自分は父の子供だから父からすると絶対的な存在であり、私が問いかければ反応があるはずだ!と信じていた。
実際、わたしがどんなに話しかけても反応はなかった。父の手を自分の頭に置いたりしてみたけど。
そのフェーズまでいってしまうと、もう自分しかいない世界なのだなと思うに至った。家族の存在どころではなくて今自分が辛いのだなと。

ラストは大人になった娘の様子が映される。足元にはありし日のラグ。父親に何があったか想像がつく。この娘の気持ちを考えると苦しい。

後からインタビューで、監督は早くに父親を亡くしていると知った。自分の力の及ばなさや、どうしようもなさをこの作品から感じたのですごく納得した。

観た後3日位思い出しては泣いてたな、この作品。自分でもそんなに?と思うくらい引っかかったらしい。

アンダープレッシャーのかかるシーンでは涙でスクリーンが霞んでしまってあまりよく見えなかったのでもう一回観たい。一人で観て一人鄙びた店でしんみり飲みたい。

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